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食品パッケージが社会を変える

サンフランシスコの環境

商品パッケージはその都市の文化やファッション、食のトレンドを象徴するアイコンでもありますね。サンフランシスコは、全米をリードするオーガニック、エコ文化が息づいており、それを背景に近年、進化するエコな食品パッケージが食品市場に出回っています。すでにサンフランシスコでは、ビニール袋を製造しない規則があり、持っている人を見かける事はほとんどありません。派手な広告より環境に良いイメージやリサイクル可能で、商品そのものの本質が覗けるパッケージがトレンドとなっています。

私が住む街ツインピークスの近くに位置するノエバレーは、若者に人気の街、「ミッション」とゲイ地区で知られるカストロの 二極のユニークな文化に囲まれた閑静な住宅街です。家族やIT関係者が多く、決して高級な場所ではないのですが、同じ地区にFBのCEO、マークザッカーバークも住んでいます。食料品の買い物は、近くにあるホールフーズや週末に開催されるファーマーズマーケットでします。住人に共通するのは、エコでサステイナブル(持続可能)なライフスタイルです。

消費者参加型(ライフスタイル)

パッケージが食育に!?ーー親と子の絆を深める家庭菜園
レディトゥイート(すぐ食べれる)からレディトゥグロウ(すぐ育てられる)へ
毎日のように通うオーガニック系食料品店、「ホールフーズ」で前から気になっていた商品がありました。私はマッシュルームが大好きでよくその棚を見ているのですが、他はグラム売りなのに対して「オーガニックマッシュルーム」と書いてある大きな箱(パッケージ)が同じ場所に陳列されているのです。箱には十分育ったキノコの写真が掲載してあるので、最初はマッシュルームセット(きのこの詰め合わせ)だと思っていました。しかし手に取るとずっしり重たく、裏を見ると1、水につける。2、毎日水をスプーン3杯注ぐ、など「育て方」が書いてあります。

そう、これは「家庭菜園パッケージ」なのです。食品売り場にかつて「種」から育てる食品パッケージがあったでしょうか。今日の料理にと急ぐ主婦がいれば、きっと家に帰ってがっかりするでしょう。なぜならこのきのこは10日ほど育てなければ食べられないのですから。「一体どんなキノコが育つのでしょう?」 私の好奇心は高まり、購入し家に持ち帰りました。

写真:オーガニックキノコミニ農園$12.99

子供の食育と親子のコミュニケーションを図るパッケージ

このパッケージを開発したのは、サンフランシスコの対岸のオークランド市に所在する「Back to the roots」( 基礎に戻る)という会社です。若き起業家、アレハンドロとニキルは大学時代からの友達。彼らはアーバンファーミング(都市型農業)の経験から、自然が放つ科学の魅力にとりつかれます。その後脱サラをしてキノコ栽培に没頭しました。そして食べ物が工業化され、核家族が増える現代で一番大切なのは、「正しい食事と家族の絆」だと悟ったのです。彼らが習得したキノコ栽培を気軽に家庭でも取り込めないかと商品開発を研究し、ついに「オーガニックマッシュルームファーム」を完成させました。このパッケージされた“ミニファーム“は、子供達に食育を促し親子のコミュニケーションを図るのが目的です。しかしこの稀に見る食材なのか畑なのか分からない商品の宣伝や流通には骨を折ったようです。ウェブ上のだけでは中々一般家庭まで届きません。そこで子供達の親が毎日行くスーパーの食品売り場に陳列し、チャンスを伺いました。ターゲットは健康志向が強い「ホールフーズ」や地元のオーガニックストアです。その結果、私の目に触れ、この紙面になっているわけですから、まずはこの戦略は成功といえるでしょう。

写真:Back to the roots社のオーガニックマッシュルームファーム

写真:家庭菜園に仕立てた革命的パッケージ!

子供が食材の生産者になる

子供は抵抗なくこのパッケージを受け入れます。そして最初は「栽培」をゲーム感覚で捉えるようです。そのうち、自分の栽培したキノコが食卓に並ぶと”生産者”として誇りが生まれます。やがては自分の収穫を調理しようとキッチンに立ちます。子供が作った料理を家族が一緒に食べれば会話も弾み、「家族の幸せは食卓にあり」という開発者が願う理想の構図になります。パッケージやウェブ上には子供の顔と育てたキノコが映った写真がたくさん掲載され、キノコの成長の違いを見るのも「参加型」で楽しみの一つです。

写真:パッケージやWEBに子供たちも掲載される「参加型」

写真:栽培をゲーム感覚で!

写真:子供が食材の生産者

「本物の食べ物とルーツを子供に伝える」ーー生産者の信条

「Back to the roots」では、その他の菜園シリーズに、缶詰を開けて缶のままハーブを育てる「オーガニックハーブの缶詰」、金魚など水槽で生活する生き物と植物を同時に育てる「ウォーターガーデン」、石臼で加工したコーンフレーク「オーガニックストーングラウンドフレークス」などがあります。アメリカでは未だに子供の朝食にコーンフレークを与える家庭が多く、コーンの成分など気にせず大量生産のフレークを無意識に急いでミルクと食べる習慣が一般的です。「Back to the Roots」のフレークの原材料は、100%オーガニックコーン、きび砂糖、シーソルトだけ!加工品でありながら添加物も使用しない リアルフード(本当の食べ物)です。パッケージの裏にはコーン栽培の仕方から種類や色、フレークにするまでの工程が一連のストーリになり、絵付きで子供もわかりやすく説明してあります。また、応募から選ばれた子供達の写真には名前と居住地が記載され、小さな子供のネットワーク広場となり「また買いたい」要因の一つにもなっています。

写真:パッケージ裏面に描かれた生産工程のストーリー

写真:フレークの原材料

サステイナブル(持続可能)と再生利用をライフに取り込む

一見何の変哲も無いこのシリアルのパッケージ、実は環境に配慮する工夫を凝らしています。一般に売られてるシリアルは箱の中に必ずプラスチックの袋が入っています。しかし「Back to the Roots 」はこれを排除。「ゼロウェイスト」(ゴミを発生させない)を目指し、100%リサイクルペーパーで製造しています。箱のプリントも植物性のインクを用いり、物流効率を上げるため大きさや重さも中身以外は最低限に抑えています。さらに原料も産地名だけでなく、有機生産者の名前まで掲載し、畑からテーブルまでのルートを子供に「食育」しています。食品の信頼はきっとこういうところから得られるのでしょう。

写真:シリアル売場

写真:環境配慮のパッケージ。

大人も楽しめる家庭菜園

私も「マッシュルーム ファーム」で家庭菜園を実践してみました。パッケージの窓の部分を開き水を加えるだけで、6〜7日後にはキノコが飛び出してくるはずなのですが、一週間経ってもなかなか生えてきませんでした。しかし小さなビニールハウスに移してみたところ、突然ニョキニョキキノコが育ち、その成長を見守るのが楽しく、栽培している実感が湧いてきました。結局発芽して3日目には巨大な傘が付き収穫をしました。決して難しくは無いのですが、栽培を自分で手がけてみて、どんな味がするのか調理して確かめたいと思いました。もし同じ気持ちを子供達が持ったとしたら、このパッケージの素晴らしい成果です。

写真:子供も楽しい食育

写真:食育工程

食品パッケージが社会を変える!

日本のスーパーで同じ色と形の野菜が綺麗に陳列してある光景を見かけます。その食材がどこから来てどのように育った(あるいは加工された)かは誰もあまり気にしないようです。しかしこの現状は子供にとって(健康上)危険です。大人が子供達と一緒に食物の“ルート”(種)から食卓まで知り学ぶ事で生活は豊かになるとこのパッケージは伝えています。子供にとって教室では学べないエコロジー(生態系)から再生利用の食育になります。それを家庭で実践でき、家族の絆を深める画期的なパッケージ(プロジェクト)が社会に影響を与えています。

写真:食品パッケージが社会を変える

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