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おいしさは二の次?売り場&パッケージから見るオランダのヘルシー食材アプローチ(前編)

写真:オランダの大型チェーンのスーパーマーケット「Albert Heijn」。

食への関心は近年益々高まりを見せています。日本においては、生産地や原材料、有機栽培などにこだわりながらも商品のシズル感をどのように表現するかなど、パッケージに「おいしい」メッセージを込める工夫がなされていると思います。

ここオランダにおいては、その方程式は必ずしも成り立ちません。というのも、生活のなかで「おいしい」が必ずしもトッププライオリティではないからです。勘違いしないでもらいたいのは、オランダ人が「おいしさ」に無関心ではないことです。「Lekker」(おいしいのオランダ語)は頻繁に使われる単語ですし、テレビでもクッキング番組が毎晩のように放映されていますし、旅行先で人気の東南アジア系のレストラン(タイやベトナム料理)も随分増えています。とはいえ、「今晩何にする?」や、友人と会う約束した時の「何食べたい?」というような会話は圧倒的に少なく、レストランでもお互いの料理をシェアするようなことは滅多にありません。そんな淡白さに砂をかむような思いをすることも多く、翻って日本がいかに“おいしい”に貪欲で、しかも、口福を一人のものとせず、共有したいと思っているかを思い知らされます。

そんなオランダで、おいしさ以上に吟味されるのは、「健康にとってよいか」「環境にとってよいか」「原材料は何か」です。日本とは異なるアプローチをとる、オランダのGezondheid(健康によい)な売り場、食品パッケージを探ってみることにしました。今回は前編として、「売り場」にフォーカスしてお届けします。(後編のパッケージ編はこちら

隣り合わせのオーガニック

写真:Albert Heijn XL(大型店)の外観

写真:Albert Heijn XL(大型店)の店内

オランダにはAlbert Heijnという大型チェーンのスーパーマーケットがあります。大型、中型、コンビニ型の3種の業態で全国に展開しており、その数は950店舗以上。どの街にも必ず一軒はあるといっても過言ではありません。

置いている商品群は日本とほぼ同じですが、一点、大きく違うところがあります。それは、Biologisch表示です。Biologischとはオーガニックのこと。オーガニックの特設コーナーがあるわけではなく、プライスタグに緑の表示を付けたり、パッケージ(容器)の色を変えたりして、普通のプロダクトと隣り合わせで陳列されています。生鮮、加工品など、その種類は1000品にものぼります。

写真:Biologischの食品には黄緑のタグが付けられている(ジャガイモ)

写真:Biologischの食品には黄緑のタグが付けられている(油)

写真:Biologischの食品には黄緑のタグが付けられている(オリーブ)

普通の食品より価格は高めですが、あらゆる食品群でBiologischが網羅されているので、価格差が小さいジャガイモはオーガニックを、油は日常に使うからより健康なものを、オリーブのようにし好品だからこそ良質なものをと、消費者はさまざまな理由でオーガニックを選択することができます。

写真:最近、急激に増えているのがグルテンフリー(Glutenvrij)の食品群。

写真:グルテンフリーの食品はタグではなく、特設コーナーに陳列されている。

オーガニック、グルテンフリーと並んで最近関心が寄せられているのが「砂糖」です。Albert Heijnでは、ヨーグルト、シリアルなど朝食にとる食品群の一部に砂糖含有量「少な目」「中ぐらい」「多め」のタグをつけて、消費者の意識を促しています。

写真:砂糖含有量のタグ。人工甘味料か自然由来の甘味かの記載もある。

写真:laag=少なめ(砂糖5%以下)

写真:midden=中(5~10%)

写真:hoog=多め(10%以上)

写真:シリアルコーナーも砂糖含有量表示が。

砂糖含有量の表示は、昨年の夏頃から始まりました。いつも買っていたお気に入りヨーグルトが「hoog」(砂糖量多め)にカテゴライズされていて、少、中ぐらいの商品があるなかで高めと表示されているものにあえて手をのばすのは、なかなかハードルが高い行為だということに気づきました。正直なところ、食べたい物にストップをかけられるようでストレスを感じました。私のように思う人もいるはずで、他人事ながら、消費者の購入動向への影響が心配になります。

何でも手に入るオーガニック系のスーパー

普通のスーパーでも豊富にオーガニック食品が揃っていますが、もっとこだわりたい人はオーガニック専門のスーパーマーケット「EKOPLAZA」や、オーガニックを中心にこだわりの食材を揃える「marqt」に行きます。

写真:オーガニック専門のスーパーマーケット「EKOPLAZA」。

「EKOPLAZA」は、全国に50店舗以上を展開する大型のオーガニックスーパーです。普通のスーパーと変わらない品揃えなので、オーガニックはしごをすることなく、全てここで揃えることができます。

写真:普通のスーパーと変わらない品揃え。

写真:店頭の様子。プラスチック削減にも力を入れており、現在のプラスチックフリーの商品の数を表示している。

「marqt」は、エコやフェアトレード、環境問題などに関心が高い若い層をターゲットにしています。

写真:オーガニックを中心にこだわりの食材を揃える「marqt」は、アムステルダムを中心に21店舗展開。

写真:marqtの店内。

オランダでは銀行口座に紐づけされたデビットカードでの決済が広く普及しており(2018年現在、キャッシュレス決済は全体の62%。Dutch Payment Association調べ)、スーパーのレジでも価格に関わらずキャッシュレス決済が可能です。marqtにいたっては、カード決済オンリーで現金は受け付けていません。

写真:各レジにはデビットカードの端末が置いてある。ピンコード(暗証番号)を入力して決済。コンタクトレスカードの場合は、€25以下なら端末の横面にカードかざすだけでOK(最大決済金額はデビットカード発行の銀行による)

このように、オーガニックを意識していようがいまいが、スーパーに行けば自然に目に飛び込んでくるので、無理なく生活に取り入れることができます。本格的に取り込みたければ、EKOPLAZAなどのスーパーや、広場で定期的に開かれるマーケットが受け皿になってくれます。

写真:街の広場で週1回は開かれるマーケット。八百屋、肉屋、チーズ屋などがにぎやかに並ぶ。

写真:イベントとしてオーガニックにこだわったマーケットが通りで開催されることも。

今回は「売り場編」をお届け致しました。後編は「パッケージ」についてです!

更に深掘り!プレミアムレポート(2019年4月10日追記)


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