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ロンドンで躍進する“Crosstown doughnuts”の選ばれるビジネス戦略

ロンドンの人気ドーナツショップ“Crosstown doughnuts”

写真:ロンドンの人気ドーナツショップ“Crosstown doughnuts”

いまロンドンにある “Crosstown Doughnut” というドーナッツ屋さんが急成長しています。イギリスでドーナッツを売っているといえば、スーパーかベーカリーのどちらかで、ドーナッツショップ自体見かけることがほとんどありませんでした。そんな中、“Crosstown Doughnut” は2018年だけでロンドン市内に3店舗オープン。

外観は黒で統一されており、店内も白、黒のシンプルな内装。そのシンプルさが逆に木のぬくもりを強調し、店内は落ち着いた雰囲気の中に柔らかさがあります。Piccadilly Circusにある店内はいつも人で溢れており、たった数席が横並びであるだけで、基本はテイクアウトです。

写真:レジの横のカラフルなドーナッツのディスプレイは、白黒の店内でグッと目を引き、誰でも一目で簡単にオーダーができるようになっています。

Crosstown doughnutsの設立者の1人であるJT Thenは、スコットランド出身、オーストラリアで学生時代を過ごしました。コーヒーにあう最高のパートナーとしてドーナッツに目を付けたのをきっかけに、2014年にCrosstown Doughnutsをオープン。またその始まりは、お客さんの反応を直接見る事ができるという理由で、店舗ではなく野外のマーケットからスタートさせました。

独特の酸味と風味があるサワードウドーナッツにこだわり、一口食べるとなんとも懐かしい気持ちになる優しい味が特徴。厳選されたこだわりの素材から、生地はもちろんジャムやクリーム、トッピングも毎日工場で手作りされ、24時間体制で各店舗にデリバリーするというあくまでフレッシュ、出来たてドーナッツにこだわったスタイルを貫き通しています。

また2018年5月にはSelfridgeというロンドン随一のデパートのある地区Maryleboneに、Vegan専門のCrosstown Doughnuts Veganをオープンしました。もちろん取扱いのドーナッツは全てVegan。この店舗でしか買えない種類がほとんどです。こちらの店舗もひっきりなしにお客さんが出入りします。

写真:今までの店舗は黒がメインであったのに対し、こちらは白が基調。

写真:取扱いのドーナッツは全てVegan。

写真:1番人気のバナナクリームはまさに今潰してペースト状にしたようなバナナ本来の素材の甘みが口の中に広がり、人気である理由が頷けます。

2014年に始まった彼らが、ゆっくりと着実に店舗数を伸ばしているには、いちドーナツショップを超えたビジネス戦略が大きく影響しているといえます。

今やキャッシュレス決済システムは必須?

写真:NO CASH / CARD ONLY(現金不可、カードのみ可)と書かれたドア。

まず彼らがしたのが下限額を決めずにフード屋台としてカード決済を初めて可能にしたこと。イギリスでのキャッシュレス決済は約6割にのぼっており、現地の人は現金を持ち歩かない人が多く、実際、私自身も現金を持ち歩かないので、ドーナツやコーヒー1つに現金を下ろしてまで買うことはまずないでしょう。

現地の人に気軽に買ってもらえるようにする、そんな当たり前のことを忘れずに起こした小さな変化は、今ではフード屋台でカード決済は当たり前と言われるまでのものになりました。Veganの店舗においてはクレジット決済しか行っておらず、また全店レシートは紙ではなくすべてe-mailで発行するようになっており、無駄な経費はもちろん、環境にも考えられたシステムになっています。

積極的なB to B展開

彼らが競合他社と大きく違う点は、オープン当初から、BtoB企業としても積極的に展開してきたことが挙げられます。

オープンした2014年から、ニュージーランド航空とのビジネス提携が行われ、ロンドン路線のプレミアムエコノミーとビジネスクラスでCrosstown Doughnutsが提供されることになりました。これはブランド成長の大きな後押しになりました。

写真:ニュージーランド航空ともビジネス連携。ドーナツにデコレーションされたX印で"Crosstown doughnut"のものだと一目で分かる。

その後も各企業とのコラボレーションが行われ、アイルランドの黒ビールGuinnessとのコラボレーションを行ったり、時にはホテルのオープン一周年記念に1000以上のドーナッツでつくった大きなケーキが話題になったり、またショップ近くのホテルと提携し、宿泊者に割引を積極的に行ったりと、ビジネスの幅を大きく広げていきました。

写真:ドーナツで作られた巨大ケーキはインパクト大。

また彼らは実店舗を成長させつつも、野外マーケットに出店し続けており、決まった曜日に決まったマーケットで販売をしています。また駅前に屋台として常設されていたりと、目にする機会が店舗だけではありません。またその実店舗でもテイクアウトがメインという事を見てみれば、テイクアウトバッグは、それだけ持ち歩かれる機会も多く、ロゴとCrosstown Doughnutsというシンプルかつ分かり易いデザインはそれだけで広告塔の役割を担っています。

写真:シンプルでおしゃれながら、ロゴが目立つのでブランドの広告にしっかりとなり得る。

写真:ブランドを象徴するXマークが散りばめられたデザイン。

写真:側面にはこだわりポイントが。ここにもしっかりとXマークが書かれている。

その中でも、彼らのケータリング事業について少しご紹介したいと思います。

ユニークでおしゃれなケータリングサービス

企業の会議やパーティー、また結婚式等のイベントをメインに現在まで、Nike、Facebook、Google、Tommy Hilfiger、Universal、Metroなど数多くの有名企業相手に展開をしてきました。なぜここまで注目を集めるかというと、彼らなりのユニークで細やかなサービスが挙げられます。

オーダーはオンラインから簡単に行えます。

写真:希望日時等の記入を行い、その後ドーナッツの種類のクラシックフレーバーや季節の限定、ヴィーガンドーナッツなどから選択。

写真:次にトッピングのカスタムをするかどうか、そこでは企業のロゴを入たり、結婚式などに使う場合はイニシャルやデザインを選択することができます。

写真:どのサイズのBoxに入れるかの選択。例えば企業のパーティでお土産ギフトとして渡す場合には1人1つBoxの提供をすることが可能になります。

写真:自社のサンプルも合わせてBoxに詰めることができたり、企業のロゴステッカー作成し、それをBoxに貼って提供したり、またリボン掛けしてメッセージも記入できたりと、オプションの種類が多く、とても充実しています。

選べるオプションが豊富であり、これを利用する宣伝効果が見込めることは、企業にとっても大いに価値があります。またBtoCとしてもこのケータリング事業が利用されており、個人から企業レベルまで需要がある事業展開は更なる飛躍を遂げることでしょう。

また今年ヴィーガンショップの展開を始めてすぐ、多くのメディアや媒体で取り上げられる機会が多くありました。人口の7%がヴィーガンと言われているイギリスで、注目を一気に浴びました。ただの新装開店以上の宣伝効果が生まれたことはいうまでもありません。

競争の激しいロンドンで着実に店舗数を伸ばしながら、オープンからBtoBビジネスにも力を注ぎ、いちドーナッツショップの域を超えて躍進するCrosstown doughnuts。彼らの大きな可能性を秘めたビジネス戦略にこれからもぜひ注目していきたいと思います。

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