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お土産商品にブランディング、パッケージマーケティングの潮流。

シンプル&スタイリッシュなメイド・イン・ベルリンのおみやげ専門店

こちらの記事を「プロの目線」で深掘りしたプレミアムレポートです!

はじめに

日本のお土産で菓子と言えば、個人的に思いつくのは「白い恋人」「萩の月」「東京ばな奈」「うなぎパイ」「赤福」「餡入り生八ッ橋」「博多通りもん」などか、また大阪で新しいところで成功している「たこパティエ」であろうか。そして今やどこにでも見かけられるナショナルブランド菓子のご当地版も多々記憶にあります。

写真:近年人気の出ている大阪のお土産菓子「たこパティエ」

今や各地の自治体も創生を標榜し後押ししてきたことやインバウンド増加があり、お土産市場は拡大基調にあります。そうした機運のなか、ベルリンからお土産ビジネスの全く新しいスタイルが久保田由希レポートで届いています。

紹介されているのは「EAT BERLIN」というお土産専門店で、「ご当地のお土産セレクトショップ」と言えるコンセプトで展開しているということです。そうした形を明確にしたものは日本ではまだ見られないように思います。お土産セレクトショップのブランド化というそのビジネス戦略に、日本のお土産商品事業のひとつのあり方をみることができるのではと思います。

写真:ナショナルブランド菓子のご当地限定版も目立つ

お土産を選ぶ視点の変化

「EAT BERLIN」のポイントを考える前に国内のお土産商品市場の動きを見ておきたいと思います。

日本観光土産市場は2016年で5兆100億円(観光物産総合研究所「2016年度土産業界白書」)となり、東京2020に向けて、さらなる拡大が予想されています。お土産売場も整備され日本のお土産商品にもある種の変化が見られるのは皆さんも感じられていることでしょう。冒頭に挙げたロングセラー土産商品も着実に売れていますが、ここでは新たな登場で売れてきている商品をいくつか取り上げ、土産商品に対する消費者の変化を考えてみましょう。

写真:サービスエリアのお土産商品コーナー

お土産は家族へはもちろんとして、自分の属するサークル、勤め先の皆さん、世話になっている方へ買って帰る、皆に分けやすい品で選ぶのが主であったと思いますが、近ごろでは自分へのお土産(自分へのご褒美ならぬ?!)、親しい友人、話題共有する仲間へ渡すことが重要になってきて、商品選択する視点が少し変化してきたように思われます。

写真:「自分用おみやげ」の打ち出しも見られる

例えば、WEB投票で集計された「JR 東日本おみやげグランプリ 2018」で総合グランプリになった「元祖くず餅 カップくず餅」(東京)と準グランプリの「桔梗信玄生プリン」(山梨)などは、共にカップ入りで日持ちも短いと思われますし、トッピングやソース付きでパーソナル仕様の商品包装。まさしく自分が食べたい、すぐ渡して一緒に味わいたいというところで選ばれたのでしょう。今や大阪土産として大人気の「551蓬莱 豚まん」はそうしたお土産の走りではないでしょうか。

富山県には越中富山お土産プロジェクトが誕生させた「越中富山 幸のこわけ」というお土産ブランドがあります。地場の名産食品をその名の通り少量にして500円程度に包装した20品種ほどの商品群です。人気が出て年間3,000万円を売り上げているということです。

パッケージはパウチ、カップ、ビンなどですが、「幸のこわけ」デザインマークを大きく中央に据えた統一ラベルが集合効果で売場でも存在をアピールしていると思われます。これもサイズ感、ワンコイン価格から消費者の使用目的が伺われますね。ラインナップ商品の選定開発に厳しい品質基準を設けていることなど、ベルリンのご当地のお土産セレクトショップの考え方に通じるものがあります。

お菓子ではないところで面白いお土産ヒット商品があります。京都の「平等院ミュージアムショップ」にある「消しゴム」は350円で年間15,000個売れているといいます。紙ケースに平等院鳳凰堂(ほうおうどう)や鳳凰像などが金色エンボス加工(立体箔押し)されており、デザインとしての価値が高い。修学旅行生や家族連れの人気土産になっているようですが、これも自分へのお土産や渡す相手の顔を想像してのものではないでしょうか。企画デザインはGRAPH(グラフ)の北川一成氏によるもの。

お土産のセレクトショップとしてブランド化

写真:久保田さんのレポートより

お土産のブランド作りとデザインで一歩先を行っていると思われるのが、レポートで紹介されているベルリンのお土産セレクトショップ「EAT BERLIN」。お土産店舗としてのブランドを作り、オリジナルの土産商品を作り販売するという戦略が面白いです。雑貨のセレクトショップがブランディングしブランドオリジナルグッズを販売しているのと同じでしょうか。その観光地のシンボル、キャラクターをブランドヴィジュアルに起用し、旅行客のお土産に求める必要条件を満たします。

ブランドネーミングの巧さもあります。周知性のある馴染みのある名称(BERLIN)にコンセプトを示す言葉(EAT)をつけて識別する技術です。こうした表現作法はお土産ブランドづくりのヒントになるでしょう。

外国人観光客の地元土産へのニーズを捉えた商品と、自分用のお土産として旅気分を演出できる雑貨品(Tシャツ、バッグ類など)をそろえて提案しています。それらのデザインはよく見られる素材感を生かしたベースにマークとロゴを配置するシンプルな構成でいっそうデザイン性を感じさせています。前段で述べたように、国内のお土産においてもパッケージデザインは重要な要素になってきているわけですが、この「EAT BERLIN」のデザインアプローチにあるようなシンボリックなイラストやキャラクターを軸にしたパッケージについて少し考えてみたいと思います。

写真:久保田さんのレポートより

ひとつの商品デザインを超えてブランディングへ

日本でもお土産に名勝や歴史人物、地場動物などをデザインに使っている商品は山ほどありますが、このようにブランディング発想で活用している例はあまり見かけられません。あくまで商品パッケージのデザインとしての位置づけを超えるものではないと言えます。「くまモン」や「ひこにゃん」はキャラクタービジネス的には大成功していると思いますが、この点ではどうでしょう・・・

写真:「ひこにゃん」デザインの商品コーナー

ひとつのメーカーで見れば、日本で早くからキャラクターイラストを顔にして岡山県の同種お土産菓子のトップの座にあるものに廣榮堂本店「元祖きびだんご」があります。ご当地昔話から五味太郎氏の手になる桃太郎キャラクターを軸にしたパッケージで、品が良くかわいいと長く人気のあるお土産商品です。

一方、近年に新たな桃太郎商品の参入がありました。山方永寿堂「岡山名物きびだんご」です。子供たちにも馴染み易いわかり易いキャラクタータッチにシフトし、パッケージ紙器構造では桃を割るように箱のフタを開けていくと、中から顔そのものの個包装で桃太郎の仲間たちが賑やかに迎えてくれるといった趣向です。消費の行為を経験価値とする良い例だと思います。こちらはデザイン会社「COCHAE(コチャエ)」の手になります。共にひとつの商品デザインから広くお土産にまつわるシーンを提案するブランドへと向かっていきそうです。

観光土産ではないですが、百貨店等で手土産としてこれも安定した業績を上げている「小倉山荘」ブランド(大阪浜美屋)は京都の百人一首をブランドキャラクターとして展開しており、主婦層に人気のギフト商品です。ここにも歴史的文化資産を巧みにコンセプトに組み込み高付加価値ブランドとする発想があります。非常に優れたものと思います。

登場したお土産の商品デザインはぜひ各ホームページ等で見てみてください。インバウンド顧客の増加、お土産購入の消費者の求める価値の変化に伴いお土産商品のブランド作り、パッケージデザインの重要性が高まってきている現在です。一商品のデザインに留まらずブランディングへの展開が求められます。ベルリンのおみやげ専門店「EAT BERLIN」のあり方は私たちの一歩先を行くものとして参考にしたい話ではないでしょうか。

(こちらの記事の文章・画像等の無断転載はご遠慮ください。)

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