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アメリカで大注目!3ドルショップ「ブランドレス」のビジネス戦略

写真:ブランドレスの展開商品(一例)

アメリカでは、日用品や食料品など身の回りの商品を今風のテイストに再構築し、デジタルネイティブ層をターゲットにオンラインで販売する新小売ブランドが続々と登場しています。全ての商品を3ドル均一で販売する一般消費財eコマースとして昨年登場したのが、「ブランドレス」です。

ブランドレスは、急成長を目指すサンフランシスコ発のスタートアップ企業で、今夏にはソフトバンクがリードインベスターとなり、シリーズCで、240ミリオンドル(約260億円)を調達し、ますます注目を集めるeコマース企業となっています。

良質の商品を3ドルで販売するオンライン限定ショップ

写真:3ドル均一のオンライン限定展開のブランドレス

3ドル均一ショップということで、日本の100円均一ショップ、または300円均一ショップなどを思い浮かべる人もいるかもしれません。確かに販売価格を統一している点では共通しているのですが、お店としてのコンセプトは大きく異なります。ブランドレスはどちらかというと、その名前からも影響が感じられますが、無印良品に近い存在です。

こだわりを持って製造された良質のものを、ブランドによるマークアップなしで安価に提供する、そんなコンセプトを持ったサービスです。ブランドレスが無印良品と異なる点は、実店舗を持たずオンラインのみの販売で、価格が統一されている所です。

ブランドレスの強みは、3ドル均一という安い価格ではありません。本当の強みは、環境保護、健康志向などいくつかの価値観をもとに製造された質の高い商品にあります。

シンプルなデザインパッケージで統一され、こだわりを持って開発された商品を、中間業者や店舗などをなくし、ブランディングなどにかけるコストを削減することにより、一律価格という分かりやすい形で低価格で販売。質と価格のバランスが良い点が魅力となっています。

ブランドレスの商品は、ミレニアル世代をはじめ、今アメリカの消費者たちが商品を選択する際にチェックする項目をクリアするように開発されています。ブランドレスの商品ひとつひとつにも表示されていますが、例えばこんな6つのこだわりが取り入れられており、このブランドの商品なら大丈夫という安心感を提供しています。

・オーガニック

・グルテンフリー

・フェアトレード

・環境に優しい

・社会貢献できる

・動物実験をしていない

ブランドレスの商品パッケージと商品へのこだわり

ブランドレスでは、各商品の大きさや量を調整することにより、全ての商品が3ドルとなっています。価格が変動することがないため、大多数のスーパーやオンライン小売サイトとは異なり、購入のタイミングを見計らう必要がありません。かなり厳選された品揃えとなっているため、選びやすく、短時間で効率よくショッピングをすることができます。

オンラインで購入するので、画面上で選んでいる時点では商品の実物のサイズの実感があまりわきませんが、商品が到着してみると、改めてそのコストパフォーマンスの高さにびっくりすることになります。

USDAのオーガニックの認証を正式に受けている商品でも、市販の非認定のブランド商品よりもコストパフォーマンスが良い商品もあり、全般的に他社の市販品と比べてサイズ的にも質的にも期待以上の商品が多くあります。

写真:ブランドレスのパッケージはシンプルかつオシャレなデザインで統一されている

ブランドレスでは、調味料、スナック、グラノーラ、コーヒーなど消費期限の長い食品のみが販売されています。野菜や果物、肉、魚などの生鮮食品は扱われていません。パッケージはシンプルですが、キッチンに置いてもオシャレに感じる統一感のある色使いのデザインになっています。

ほとんどの商品がオーガニックのもので、商品によりそれぞれ変わってきますが、ナッツや乳製品が使用されていないこと、フェアトレードであること、グルテンフリーであることなど、今流行りのヘルシー志向の人々のチェック項目がしっかりと表示されています。

写真:ブランドレスは環境配慮型商品も展開

トイレットペーパーは、環境保護に配慮した商品となっています。再生紙ではなく、森林保護のため木を使用しない非木材資源のトイレットペーパーです。では何でできているのかというと、さとうきびや竹を資源にしています。これらは、木と比べると圧倒的に成長速度が速く利用用途が他にあまりないため、サステナブルに有効活用することができます。

クリーニング洗剤などの家庭用品や、包丁などのキッチン用品も全て3ドルで販売されています。ブランドレスは基本的にそれぞれのアイテムが一種類だけで、迷わなくていいような品揃えになっているのも特徴ですが、中にはハンドソープの香りのように、それぞれ好みがある場合には、いくつか選択肢が用意されています。

クリーニング洗剤が3ドルというのは、特に安い感じを受けないかもしれませんが、量が調整され、通常の2倍くらいのサイズの商品になっており、他で購入するよりもお得感が感じられる商品です。

ブランドレスでは、様々なカテゴリーの日用品を取り揃えていますが、女性に人気なパーソナルケア、ビューティーケアの商品も品揃えが豊富です。サプリからフェイシャルソープ、化粧水、ナイトクリームなど、統一されたカラフルなパッケージで商品展開されています。オーガニックのココナッツオイルは、食カテゴリーの商品でもあるのですが、自然派志向の美容ケアアイテムとしても人気があり、消費者のニーズを捉えた品揃えです。

写真:ブランドレスの女性に人気なパーソナルケア、ビューティーケア商品

この他、ノートやペンなどのステーショナリーも取り揃えられており、日常、必要になりそうな商品が一通り何でも揃っています。ノートやメモ帳などは、森林の生態系に影響を与えないように配慮されて製造された紙が使用されており、デザインもシンプルで上質な雰囲気です。

写真:ブランドレスのシンプルなステーショナリーグッズ

ブランドレスのビジネスモデル

ブランドレスは、無印良品同様、パートナーメーカーで製造された自社ブランド商品をオンラインで販売する、SPA(製造小売)のビジネスモデルです。商品展開は主に、P&Gなどが手掛けるような日用品で、良質のものを安価に効率よく買いたいという、都市部に住む忙しい人々のニーズを叶えるものとなっており、特にデジタルネイティブ層をターゲットにしています。

一定量以上購入すると送料無料になりますが、リピーター用には郵送料が常に無料になるプランも用意されています。ブランドレスの基本コンセプトは、日々の生活で必要な良質の商品をシンプルに適正価格で提供すること。統一感のあるパッケージデザインからも、そんなコンセプトが伝わってくる良質な雰囲気を感じさせます。

北欧の雑貨ブランドのような、インテリア小物などデザイン製の高い商品は扱わず、あくまでも日用品に特化した品揃えで、膨大な数の商品を並べることで、衝動買いを誘うような販売戦略ではなく、厳選されたシンプルでわかりやすいサイトです。

写真:ブランドレスの展開(写真引用:https://brandless.com/)

現在アメリカでは、以前のような大手ブランドの商品がより良いものだという感覚はなくなってきています。ブランドレスは、まさにそんな今の時代にぴったり合った、ブランドイメージではなく消費者の求める価値観と利便性を大切にしたブランド。質が良く安心して利用できるコストパフォーマンスの高い商品を、短時間で効率良く購入できるサービスで提供しています。

商品のバラエティに関しては若干制約が感じられる部分もまだありますが、今後、さらに商品を拡充し、必要な日用品が全て揃い、多くの人が定期的に購入できるようなワンストップショップとなることを目指していると思われます。

デジタルネイティブ層をターゲットとするブランドレスは、オンラインメディアの Brandless Life を運営したり、オンライン以外でのプレゼンスを高めるためにロサンゼルスで期間限定のポップアップストアを展開したりと、オンラインブランドらしいマーケティング戦略を展開しており、今後の動向が気になるスタートアップ企業です。

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