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オランダのリサイクル文化「回る消費」の原点はクリングロープにあった

Photo:オランダのリサイクルショップ

家具や食器を新調したい時、イケアのような大型店、こぢんまりしたショップ、ヴィンテージショップ巡りをするのは日本と同様ですが、ここオランダでは、もうひとつ候補が加わります。それはクリングロープ(Kringloop)。クリングロープは英語ではcycle、つまりリサイクル/セカンドハンドショップのことです。

市場規模について明確な数字は発表されていませんが、100%Klingloop!という業界団体のウェブサイトで私が住む場所から5キロ範囲内探してみると、店舗が7軒ありました。デン・ハーグ市内まで広げると約40軒。登録している店舗だけでこの数なので、実際はもっとあると思います。

年間行事のなかで、オランダの人たちにとっていちばん大切なイベント「国王の日」(国王の誕生日を祝う日:4月26日)では、全国民がフリーマーケットをすることができるなど、人々の暮らしと中古品の距離はかなり近いです。実際、クリングロープ市場は2017年比で7%増加したそうです(オンライン新聞『nu.nl』より)。

Photo:オランダのリサイクルショップ

オランダの人は、何かを購入する際、新品に重きをおいていないように思います。商品が古いからといって価値が下がるわけでもなし、使えればそれでいいと合理的に考えること、贅沢を好まない質実剛健な気質なども関係しているかもしれません。

実際、私の家の食卓テーブルは道で拾った(!)ものです。友人の中には、捨ててある家具、木材やドア(!!)を拾い集め、ヤスリをかけ、ペンキを塗りなおし、ステキなインテリアに改造したツワモノもいます。「買ったほうが早いじゃないか」とは考えないようで、時間をかけることはまったく厭わないようです(むしろ喜々として改造に取り組んでいるよう)。インテリアに関しては、家の圧倒的個数が中古であること(古いインテリアでも家の雰囲気と馴染むこと)なども関係しているかもしれません。

今回は、オランダにおけるリサイクルショップ事情をご紹介したいと思います。

オランダのメルカリ?「Marktplaats.nl」

欲しい物を探すとなったらまずこのサイトというほど、オランダで知れ渡っているのが中古品のオンラインの「Marktplaats.nl」です。日本の「メルカリ」に似ています。

1999年にクラシファイド広告サイトとして誕生、英語サイトはなくオランダ語のみにも関わらず、毎日平均35万点の新しい広告を含め全体で常時900万以上の掲載があり、一日に210万人が訪問するサイトに成長しています。

Photo:Marktplaats.nlのウェブサイト。スマートフォンのアプリもあります。

取り扱うアイテムは、日用品、家具、ホビー、白物家電、スポーツ用品、DIY、アンティーク、子ども用品、自動車、バイク、自転車などありとあらゆるもので、なんと家、オフィス、ユニークなところでは休暇、ボートハウスの売買まであります。

38種類に及ぶカテゴリーからまずは検索。左カラムのグループ分け、コンディション、受け取り方法、掲載期間などから絞り込んでいきます。郵便番号を入れると指定の距離(3キロ、5キロ、10キロ以内など)から投稿先を知ることができます。ちなみに、オランダの人は見知らぬ人に電話をかけて引き取りにいくことに対する心理的ハードルがかなり低いようなので、気軽に引き取り、受け渡しをしています。

試しに、オランダでよくみる自転車、Bakfiets(前輪に子どもや荷物が乗せる大きなかごがついた自転車)で検索してみました。左カラムの自転車のコンディション(新品、ほとんど新品など)、ブランド、子どもの人数(かごの大きさ)、引き取り方法、広告掲載日などから絞り込みます。

売りたい場合は、Marktplaatsに登録してから、無料テンプレートで投稿作業をします。投稿は基本無料で(配置などのオプションは有料)、表示期間は4週間。郵送するか、引き取りにきてもらうかを選ぶことができます。ユーザーフレンドリーなインターフェースなので、オランダ語がわからなくても、辞書を引き操作することができます。

タイトルを入力したら、売りたい商品の種類、グループを選びます。例として「アンティーク・芸術」を選ぶと、「家具」「ブロカント」「絵画」「写真」などのグループが表示されます。「絵画」を選ぶと、さらに「抽象画」「クラシック」「モダン」などの種類を聞かれます。投稿画像枚数、表示のされかた(有料オプションあり)、テキスト、商売をしている人なら自分のウェブサイト(有料オプション)、値段、受け渡し方法、連絡先などを入れて完成です。

寄付で成り立つリサイクルショップ「クリングロープ」

では、実店舗を見てみましょう。クリングロープは買い取りではなく、寄付によって成り立っています。使わなくなった日用品を近所の店に持ち込んだり、引っ越しになったお店や主人をなくした家のものを引き取ったりして商品を集め、店が値段を決めていきます。

自分の好みに合ったものをセレクトしたり、ヴィンテージとリサイクルグッズを一緒に売っている個人ショップもありますが、ここでは売られている商品が寄付によって成り立っているクリングロープショップを取り上げたいと思います。

Schroeder」というチェーン店は、デン・ハーグに根を下ろして90年以上の歴史があります。精神に障害をもつ人たちが、仕事を通じて社会参加できる枠組みをつくることを目的として設立された慈善団体が母体で、ボランティアで成り立っています。パートナーの中にはハーグ市もおり、ハーグ市が発行しているパスでディスカウントが受けられたり、働く人は映画館や美術館、レストランなどで割引になるパスを申請することができます。

Photo:Schroederの入り口。

Photo:店内。ソファやタンスなどの大型家具もあります。

Photo:テーブルウエア、家電なども。グラスウエアはひとつ20セント、6つで1ユーロ。

デパート並みの広さを誇るクリングロープ

郊外に行くと巨大クリングロープ店を見つけるのは難しくありません。デン・ハーグから10キロ先のYpenburgという街には、3階建てで約5,000㎡の広さをもつクリングロープがあります。その規模はショップといううよりデパートで、見やすい区分け、すっきりしたディスプレイによって、必要に迫られて買いにいくというよりも、普通にウィンドウショッピングが楽しめます。

こちらはオランダ国内に23店舗をもつ「RataPlan」という団体が運営しています。設立は1982年、日々捨てられる大量の廃棄物への自覚を促すこと、そして障がい者や失業者が社会復帰するための雇用創出などに取り組んでいます。また鉄道会社と協力して、自転車の修理や売り買いのできる駐輪所を運営しています。ショップは、不用品を取りにいくピックアップサービス(無料)、デリバリーサービス(有料)も行っています。

Photo:RataPlanの店内。3階建てで、自転車や本、おもちゃ、洋服、白物家電、ベッド、テーブルなどの大物家具のコーナー、さらにはカフェもあります。

Photo:Kleingoed(小物コーナー)。

Photo:家具コーナーでは、モデルルームがしつらえてありました。

日本にいた頃は、購入・消費は直線だと思っていました。その線は自分からはじまって自分で完結するもので、リサイクルショップを利用したとしても、その線が他人と交差すると思ったことはありませんでした。

ところがオランダに住み始め、家具を探すにもまずはクリングロープからというように、リサイクル品が自分の生活のなかに自然と組み込まれると、「サイクル」という言葉が示すように、消費は「線の端と端がつながれた丸」だと考えるようになりました。

自分の買ったソファが他人の手に渡り、そして、また他の場所で使われる。あるいは誰かのものだったカップが自分のカップボードに収まる。くるくると回しながら消費していく円のスタイル。それは最近、よく聞くようになった循環型経済(サーキュラーエコノミー)そのもので、クリングロープはその原点といえるのではないかと思います。

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