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都会に住む人々に「アーバン・ガーデニング」と「スローフード」を——ブダペストの廃墟で毎月開催されるマーケット

築100年を超える石造りの建物が立ち並ぶブダペストの街、そのほとんどは実際に人が住んでいる集合住宅ですが、中には改修工事が止まったまま廃墟になってしまっている建物もあります。

そんな古い建物の中庭を利用した「廃墟バー」が出没しはじめたのは今から15年以上前のこと。外壁が剥がれ落ちレンガがむき出しになった壁や、粗大ゴミから拾ってきたようなテーブルとイス、そのアンダーグラウンドな雰囲気は地元の人だけでなく旅行者からも注目され、今ではブダペストのナイトシーンを語るには欠かせないスポットとなっています。

Photo:アンケルトの入り口、ファサードを抜けると中庭に出る

「Anker't(アンケルト)」は1830年代に建てられた重厚な建物を利用して営業している廃墟バーで、建物内には二つの中庭がありトークショーや服飾雑貨の展示会などが開催されるイベントスペースとしても活用されています。ここで月に一度のペースで開かれているのが「Kiskertpiac(キシュケルトピアツ)」 というマーケットです。

Photo:鉢植えの花が並ぶ棚

キシュケルトピアツとはハンガリー語で「小さな庭マーケット」という意味。その名の通り、植物をメインテーマとしたマーケットで都会に住む人にアーバン・ガーデニングを推奨し、さらにスローフード、ナチュラル・デザインをコンセプトにもつ食品や雑貨が並びます。

Photo:中庭に植木鉢が並ぶ、セルフサービスのバーも通常営業中

入口を入ってすぐの中庭では、花やハーブの鉢植え、野菜、果物の苗木などの販売があります。集合住宅に住む人が多い地区なので、手頃なサイズの鉢植えや観葉植物が多めです。日本のビワの苗木やミニサイズのバオバブの木など、こちらではめずらしい種類の植物を販売する店もあります。

また世界中から取り揃えた花や野菜の種の種類の多さも圧巻で、夏から秋にかけては実際に収穫した色とりどりで形も様々なトマトやパプリカが、見本に展示されています。都市部に住んでいても郊外に家庭菜園を持っている人や、最近ではコミュニティー・ガーデンに参加する人も増えているので、目新しい苗木や種は人気です。

Photo:多種多様なハーブ、育て方のコツも聞ける

Photo:種を販売する店、収穫の秋を感じるディスプレイ

Photo:多肉植物やエアープランツはアパートでも気軽に飾れる

このマーケットでは毎回テーマを設けていて、10月は「スロー・ガストロ(ガストロノミー)」主役はチリでした。ハンガリーはパプリカの産地、赤いパプリカを乾燥させ粉にしたパプリカパウダーはハンガリー料理に欠かせないスパイスでスープや煮込み料理に多用されます。

他にも黄緑、緑、丸いもの、細いもの、尖ったものなどパプリカの種類と使い道は様々で、甘いパプリカもあれば、辛いパプリカもあります。時に激辛のパプリカに当たることも、ハンガリーには辛いものを好きな人が意外に多いのです。

Photo:チリを束ねたブーケ、ハンガリーらしい包装紙も可愛らしい

「激辛」という刺激は、どこに行ってもカルト的なファンを生み出します。パプリカとチリは同じファミリー、パプリカ大好きハンガリー人の激辛志向は世界各国で作られているチリに向けられ、南米やアフリカ産のより辛いチリの栽培が始まりました。さらに収穫したチリで自家製のチリソースを開発し、その種類を増やしてブランドを作り販売する農家もあり、中には本場アメリカのコンテストで賞を取るチリソースも出てくるほど。

Photo:色あざやかなチリソース

Photo:試食をすすめながら商品の説明

試食用に味のついていないパフスナックやプレッツェルが用意されていて、それらにソースを少量つけて味見をします。気になったものだけ味見してもいいし、おすすめの順番で全種類試すことも。

Photo:話を聞いただけでは予想できない味も多く味見は必須

それぞれのスタンドには生産者が自ら立ち、足を止める買い物客に味の特徴や使用している材料について、ひとつひとつ丁寧に説明をしています。生産者にとってこのようなマーケットに出店する目的は知ってもらうこと。各メーカーはフェイスブックなどソーシャルメディアを通じての販売も展開しているので、ビジネスカードやチラシを持って帰ってもらうことも販促につながります。

Photo:チーズは作り手によって味が違うので、味見をして購入できるのがうれしい

Photo:ホームメイドのジャム、低糖、砂糖不使用のジャムも各種あり

他にもハチミツやハーブティー、自家製のジャムやチーズ、ピクルスなどが生産者から直接購入できます。買い物客とののんびりとおしゃべりする光景も見られました。生産者から直接話が聞けるというのはとても興味深く、食品を購入する際の安心感も得られます。

また、観葉植物を使ったアート作品、ハンドメイドの鉢、植物や花などをデザインしたアクセサリー、エコバッグなどのデザイン雑貨を製作する作家も集まり、展示販売をしています。

Photo:エコバッグなど環境にやさしい製品を求める人は多い

11月のテーマは「植物を愛する人たちの日曜日」、12月はまだ発表されていませんがクリスマスシーズンなので、例年は植物や花などをあしらったデコレーションやギフトが揃います。

冬のはじまり、日に日に寒さが厳しくなり色彩の乏しい季節を迎えますが、室内で育てることのできる植物やインテリア雑貨など、部屋を緑や花で飾るヒントを得られそうです。

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