こんにちは。ニューヨークから最新のパッケージやマーケティング情報を紹介していきます mikissh です。
ニューヨークで暮らし、10年以上経ちますが、街やビジネス、トレンドの移り変わりのスピード感や新しいものが生みだしていくパワーにはいつも感心させられます。そんなニューヨークらしさを創り出しているのは、世界中、全米中から集まって来る多種多様な人々です。クリエイティブなアイディアが世界中からも入ってきて、お互い刺激しあいながら、次々と新しいものが生まれていきます。そんなニューヨークでの日々の気づきから、ニューヨークでのトレンドや面白いデザイン、マーケティング手法など日本でも参考になるような情報を楽しくお伝えしていけたらと思います。
第一回目はニューヨークの大人気ヘルシーフードブランドのマーケティング戦略についての紹介です。
今、ニューヨークで注目の食のトレンドは?
ニューヨークの食で、最近人気となっているのが、フレッシュな野菜やフルーツを中心としたヘルシー志向の食事です。
それは女性だけのトレンドでしょう、というのは大間違い。最近ニューヨークでは男性たちでも、好んでフレッシュサラダ店やフレッシュジュース店へ足繁く通う姿をよく見かけるようになっています。
ニューヨークには、様々な食のトレンドが見られますが、今回は、その中から、最近、注目される食に関する3つの大きなトレンドを紹介します。
まず、一つ目は、冒頭で紹介した「ヘルシーフード」。世界の大都市でヘルシー志向の傾向が高まっていますが、ニューヨークでも、健康に気を使うヘルスコンシャスな人が非常に多くなっています。
二つ目は、ファーストフードの便利さと、レストランならではの快適で落ち着ける空間を兼ね備えた、ちょうどその二つの中間に位置する「ファーストカジュアル」という形態のレストランの台頭です。毎日忙しい生活を送り、食事にゆっくりと時間をかけることができないけれど、体に優しいヘルシーな食事をしたい、手軽に栄養補給をしたいニューヨーカーのニーズに応え、ファーストフードのような手軽さを保ちながらも、こだわりのある食と快適な空間へとアップスケールした個性的なファーストカジュアルのお店が急成長しています。
「ヘルシーフード」「ファーストカジュアル」の次に大切なトレンドは何でしょう?トレンドの3つ目は、ビジュアルも含めたそのお店、その場所ならではの特別な体験「エクスペリエンス」の提供です。
実は、インスタグラムをはじめとした、SNSの隆盛により、今、より重要になってきているのが「写真も含めた口コミの力」です。お店を訪れた人々が、思わず写真を撮りたくなり、みんなに伝えたくなってしまうような、そのブランドならではの「店舗作り」が重要になっています。主役である商品と共に、ブランドの顔となる「ロゴ」や「パッケージ」などの視覚的な工夫も非常に重要で、そのブランドならではのこだわりを認識、シェアしてもらうことがブランディングに置いて非常に大切になっているのです。
本記事では、最近のニューヨークの食のトレンドとなっている「ヘルシーファーストカジュアルレストラン」をテーマに、質の高い美味しいヘルシーフードを提供し、店舗作り、パッケージングなどトータルで個性的なエクスペリエンスを提供することで成功をおさめているニューヨークで勢いのある3つのヘルシーフードブランドについて紹介します。
デザインが映えるビーガンファーストカジュアルレストラン
一つ目のお店は、ヘルシーで美味しいビーガンのファーストフードという新しい食のトレンドを作ったといっても過言ではない、By Chloe です。By Chloe は、ニューヨーク大学がある学生の多いエリア、グリニッジビレッジに2015年にお店をオープンして以来、大行列のできる大人気店です。現在では、ニューヨーク周辺に5店舗、ボストンやロサンゼルスにも拡大しており、ロンドンへの進出も予定されています。
このお店のすごいところは、肉を一切使用しない、ビーガンであるにもかかわらず、しっかりとコクのある美味しいメニューが提供されていることです。そして、そんな様々なメニューと一緒に、ひと手間かけてデザインされたキュートなパッケージもお客さんの心を捉えるポイントとなっています。
テーブルサービスはなく、ファーストフード形式で、自分でカウンターで注文し、その場で受け取る形のお店ですが、店内は、気の利いたレストランのような雰囲気で、快適で居心地の良い空間です。まさに今ニューヨークで成長著しい「ファーストカジュアルレストラン」です。
通常、赤いケチャップと黄色いマスタードですが、by Chloe では、紫のビーツのケチャップとオレンジ色のチポトレアイオリソースを用意しています。フレンチフライ一つとっても、普通のポテトとスイートポテトの選択肢を作り、目を引くパッケージと、彩鮮やかな他にはないソースを添えるなど、一つ一つの工夫が個性的でとても生きています。
続いてこちらのカップケーキ。スイーツを食べる時間はプレシャスな時間。ちょっとした自分へのご褒美タイムです。可愛いカップケーキの絵が描かれた、まるで大切なものが入っているような立派な箱に入ったスイーツを目の前に、食べる瞬間のワクワク感を、このパッケージがより高めてくれています。箱を開けた瞬間も思わず感嘆の声を漏らしそうになる心くすぐるデザインです。
チョコレートチップクッキーはアメリカ人が大好きな典型的なスイーツのひとつです。クッキーを一口食べたら、一旦パッケージから出して、思わず写真撮影したくなる、遊び心のあるパッケージデザインです。
By Chloe のブランドのすばらしいところは、パッケージへの徹底的なこだわりがあることです。お店の内装作りに力を入れたら満足してしまうブランドが多い中、By Chloe は、必ず商品のパッケージ一つ一つに遊び心を加えてきます。
こちらの新商品のアイスクリームも、ただのアイスクリームにしませんでした。やはりこのブランドならではの面白みのあるパッケージで新商品のアイスを投入してきたのです。これはなんだろう?と興味を引くようなパッケージ。試しに買ってみたくなりますね。
道を歩きながら食べられるようにしたいけど、上質なアイスクリームは溶けやすい。そこで少しづつ出しながら食べられるプッシュ式のアイスクリームになっています。機能性のあるパッケージを活用し、消費者のニーズにしっかりと応えてくれています。さらに、中を開けたらアイスの上にケーキのピースが乗っていてちょっとしたうれしいサプライズも用意されています。
大人気新鮮サラダボウルの人気店
ヘルシーフードのブームの台頭で、現在、ニューヨークで急成長しているお店の形態のもう一つは、新鮮な野菜をたっぷりと食べられるサラダ屋さんです。数あるサラダ屋さんの中でも、人気が高いのが、2007年創業の Sweetgreen です。10年間で、大きく成長を遂げ、現在、全米に70店舗ほど出来ています。新鮮な野菜も魅力ですが、その場で食べたい食材を選び、ドレッシングなども選びながら自分なりの一品を作ることができるのも魅力となっています。
実は、この Sweetgreen にはもう一つ特筆すべき点があります。サラダ屋さんにもかかわらず、専用アプリまであり、アプリで注文・支払いを済ませお店に取りに来るだけという、スマートフォンが身近なミレニアル世代の生活に密着したマーケティング手法を取り入れています。
フレッシュジュースで次のスタバを狙う
フレッシュジュース店もニューヨークで激増中です。その中でも、最も個性的なのが、デンマーク発のフレッシュジュースブランド、Joe & The Juices です。創業は、2002年、現在、世界14か国に進出、200店舗近い店舗を持つとても勢いのある企業です。最近、アメリカでも、ニューヨークをはじめ、急拡大していますが、まさにアメリカ人のヘルシー志向が広まっているブームの波に乗って大成功しているブランドです。
このフレッシュジュースブランド、Joe & The Juices の一番の特徴は「ラグジュアリー感のある空間」です。店舗の内装を、まるでブティックホテルのラウンジのような雰囲気で作り、お洒落な音楽を流し、今まで存在したフレッシュジュース屋とは一線を画す店内ディスプレイです。
Joe & The Juices は、提供するものはフレッシュジュースがメインですが、来店する客層は実はスタバと似ています。ラップトップ片手に WiFi があるカフェにやってきてお仕事をしている人も多く、スタバよりもアップスケールにした感じで居心地がいい。仕事の合間の一息に飲みたいのは必ずしもコーヒーではなかった。そして多少お値段が高くても、より健康にいいもの、より居心地がいい場所を求めていた人が沢山いたことをこのお店が教えてくれました。
Joe & The Juices は、目の前で、果物や野菜をミキサーに入れてジュースを作ってくれます。冷凍などは言語道断、もちろんすべてが生の野菜と果物です。そしてここのフレッシュジュースのネーミングもまた面白いのです。こちらは、色鮮やかな Heartbeet。ビーツ、アボガド、バナナ、パイナップル、リンゴのミックスジュースで、味にも自信のあるお店です。コンセプトと店舗作りと同様に大切なのが、インパクトのあるロゴです。プラスチックカップに印象的なロゴを付けるだけで、アクセントが生まれます。
現在、どのブランドも、日本へは進出していませんが、そのうち登場してくる可能性も高いと思います。日本では、意外と「ベジタリアン」や「ビーガン」のお店を探すのが大変な国です。ニューヨークをはじめ海外では、ヘルシー志向の意識以上に、様々な食材へのアレルギー、宗教上の理由により、食材に気を遣う人が多くいます。
2020年の東京オリンピックなども控え、そんな世界の人々が来日した時に利用しやすいような、質の高い健康食材へのこだわりを持った、食材への透明性の高いファーストカジュアルレストランの需要もあると思います。そして、その際、忘れてはいけない大切なことは、思わずその感動を写真に撮って伝えたくなるような、特別なエクスペリエンスの提供です。