アメリカでは、パンデミック以降モノ消費が増え、コスメ市場の売れ行きも上昇傾向にあります。そんな中、脱コロナで日常に戻りつつあるアメリカでは春のコスメ商戦がさらなる盛り上がりを見せています。最近ではSNSの影響などもあり、特に今までコスメにさほど関心がなかった若い世代をはじめ、コスメに興味を持つ人々がとても増えています。そんな背景から、各コスメブランドもターゲットを10代からのコスメ初心者にもアプローチするようになってきており、楽しみながら使える可愛いコスメから、初心者向けのお得なコスメキットなど多種多様な商品が登場しています。
最近のアメリカで顕著なトレンドとなっているのが、クリーンビューティです。
ビーガンやクルーエルティフリー、またリサイクル可能なパッケージを利用しているかなど、肌につけるものの成分に対してはもちろん、地球環境に対しても意識の高い消費者が増えており、そんなアメリカの最近のコスメトレンドを紹介していきます。
美しいパッケージのコスメ
ニューヨーク生まれのコスメブランド「Winky Lux」は、独特なフェミニンな世界観を築き上げ成功しているオンラインコスメブランドです。もともとオンラインのみでの販売でしたが、現在では一般のスーパーなど小売店のコスメコーナーにも登場するようになっています。
実はこのブランド、一番の成功の秘訣は見た目の美しさにあり商品とパッケージを上手く調和させた美しいパッケージデザインが強みとなっています。
このブランドの人気商品であるお花が中に入ったフラワーリップバームは、バームの中にピンクの花が入れ込まれていてとてもインパクトがありこのブランドの看板商品になっています。
リップバームのケースは、薬のカプセルをイメージしたような丸っこい手なじみのいい形とサイズをしており、色もピンクとゴールドという華やかさの象徴的カラーを使っています。
フラワーリップバームのみならず、他にも花そのものを商品の中に取り込んだ面白い商品があります。
クレンジングジェルの中に本物の花びらが入っているのです。花びらが入ったジェルのボトルは、ピンクのお花のデザイン箱に入れて販売されていますが、商品の見せどころである花びらの入ったジェルのボトルはくりぬかれた箱から見えるようになっています。
そして、今までなかった斬新なデザインのバラのチーク。
バラの花の美しさをそこに閉じ込めるような美しいケースに入ったとても素敵な商品です。そんな商品の美しさは店頭に並んだ時にも外箱からも見えるようになっており、また外箱のデザインも商品そのもののカラーとマッチしたものとなっています。
また、これらの商品のパッケージとなっている外箱のデザインは、金の箔押し加工が使われており実際の価格以上の高級感を演出しています。このブランドの商品デザインひとつひとつ、そして、パッケージデザインひとつひとつへのこだわりがとても強く感じられます。
ビーガンとクリーンビューティ
最近ニューヨークをはじめアメリカではビーガンコスメ、クリーンビューティコスメが大流行しています。
アメリカ人は通常の食生活においてもビーガンを選ぶ人が最近非常に増えていますが、食生活だけにとどまらず、ビューティコスメにおいてもビーガンは隆盛です。
そんなビーガンコスメの人気ブランドのひとつ「Pacifica」のパッケージに記されている4つのマークは、そんな消費者のチェックポイントをしっかりとカバーしていることを伝えるメッセージとなっています。
葉っぱのマークはビーガン(Vegan)の印です。動物性のものを使わず、全て植物由来の成分が使われていることを示しています。
ウサギのマークはクルーエルティフリー(Cruelty Free)。動物実験をしていない化粧品であることを示しています。
矢印のハートはリサイクル可のマーク(Better Packaging)です。
こちらの商品においては、ガラス素材でできているので家でも簡単にごみの種分けができリサイクルが可能です。通常このようなマスカラ商品は、軽量のプラスチック製のものが多いのですが、この商品はガラス製のため重さを感じます。許容範囲の重さとなっていますが、今までの常識を覆してガラス素材の商品を作り出したことは革命的だと思います。
そして最後の雲のマークはクリーンビューティ(Clean Beauty)の印です。有害物質を含んでいない、人にも環境にも優しいコスメのことで、いわゆるビーガン、クルーエルティフリー、リサイクル可能であるパッケージを利用しているなど総合的にみて体にも環境にも優しい商品であることを示しています。
このビーガン、クルーエルティフリー、リサイクル可、クリーンビューティなどのマークはブランドによるオリジナルデザインが使われています。多くのコスメブランドがこのようなマークやメッセージなどで消費者の注目ポイントが一目で分かる工夫をしています。
初心者用キットの人気
パンデミックの影響でマスクの着用が日常的になったため、マスクで隠れてしまう口元のメイクよりも、顔の印象を決める目元のメイクに力を入れるようになった人が増えています。メイク初心者にアプローチするメイクセットもよく見かけるようになりました。
アイシャドーパレットなどはたくさんのカラーが入った大きなパレット商品がよく販売されているのですが、色の数が多い分上級者向けでお値段もそれなりに高くなってしまいます。特に最近はコスメブランドがアーティストとコラボして制作した、独特の色合いとアートなパッケージデザインの商品もたくさん出ており、それぞれのブランドが個性的で面白い商品が多くなっています。
そんな中、10代20代にも人気のブランド「Tarte」では、ベーシックカラーだけが選ばれた初心者でも使いやすいカラーパレットと通常の半分サイズのミニマスカラ、同じく半分サイズのアイライナーなど、初心者用キットとして手が届きやすい値段で購入できるセットも登場しています。
通常サイズを1点買うのと同じくらいの値段で3点セットのベストセラーアイメイクセットが買える、そんな初心者用キットのセット商品はメイク初心者にとって導入しやすく人気になっています。
美容ケアトレンド
以前は肌の手入れにはあまり関心がない人が多かったアメリカですが近年すっかりスキンケアを気にする人が増えています。パンデミックを経てさらに人気を増しており、スキンケアはコスメの中でも特に成長率が高い分野となっています。
アメリカの大手スーパー「Whole Foods Market」の春のコスメセールBeauty Weekでは、そんなスキンケア商品をセットにしたBeauty Bagが数量限定で販売されました。
120ドル以上相当の中身の商品をお得な25ドルで販売する、日本でいう福袋のような商品です。ただし日本の福袋と違い、購入前から中身が公開されていてすべての人が同じものを手にすることができる当たりはずれのない福袋になっています。
Whole Foods Market も、クリーンビューティに取り組んでいる企業で、有害とされる180種以上もの成分を含んだコスメの販売を禁止しています。このBeauty Bagもクリーンビューティのブランド商品のみのセットになっています。
アメリカのコスメ市場の変化
アメリカでコスメと言えば、以前はある程度以上の年齢層がターゲットとなっていましたが、近年のSNSの隆盛に加えさらにパンデミックにより自分の時間とモノ消費の機会が増えたことにより、10代からの若い世代を含む多くの人々がコスメに強い関心を持つようになっています。
以前、高級感のある大手コスメブランドが中心のコスメ業界においてSNSの活用により急成長を遂げた「Glossier」というブランドを紹介しましたが、現在はさらに様々なコスメブランドが登場、成長しており多種多様な商品を見かけるようになっています。
ビジュアルを意識した話題性のある商品とパッケージデザイン、そして人と環境に優しいクリーンビューティを追求するサステナブルなブランドであることをアピールすることが今大きなトレンドとなっています。
▼関連性のある記事
ニューヨーク発、大ヒットオンラインコスメ「Glossier」の戦略
サステイナブル化が加速する、フランスのコスメ事情