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アメリカの最新事情:環境にやさしいパッケージ

今年初めてポートランドで開催された「Good Food Mercantile」

「パケトラ」読者のみなさま、こんにちは。ポートランド在住の東リカです。

今回は、「Good Food Mercantile Portland 2022」イベントで見つけた、環境に優しいパッケージを採用する3社を紹介します。

 

「Good Food Mercantile Portland 2022」とは

活気にあふれた「Good Food Mercantile Portland 2022」会場内の様子

「Good Food Mercantile」は、クラフトフード生産者とその食材を提供する農家を対象としたコンペ「Good Food Awards」でも知られるサンフランシスコの非営利団体「Good Food Foundation」が手がけるサステナブルな食「グッドフード」の見本市。サンフランシスコとニューヨークで毎年開催されていたのですが、今年初めてオレゴン州ポートランドでも開催されることが決定しました。

4月29日にPortland Night Marketで開催されたポートランド版では、シアトルのあるワシントン州、オレゴン州をはじめとするパシフィックノースウェスト(太平洋岸北西部)のクラフトフード職人を中心に、全米から120のブランドが集合しました。

多くの来場者が、所狭しと並ぶブースで試食や質問を行い、会場は活気に満ちていました。

参加ブランドは全て「Good Food Awards」のサステナビリティ・社会的責任の基準を満たしているのですが、今回は特に「パッケージ」に注目して紹介します。

繰り返し使える生分解性紙製チューブ入りスナック

オースティンから参加したshārのブース

まずご紹介するのは、テキサス州オースティンのスナックメーカー「shār」です。

shārのスナックは、ナッツ、ドライフルーツ、ダークチョコなど9つのオーガニック食材を使ったトレイルミックス(アウトドアで食べる栄養食)。食材は全て地元を中心とした、環境に優しいエシカルな小規模農家から取り寄せられ、美味しさはもちろん、グルテンフリー、保存料・添加物不使用、非遺伝子組み換え、ビーガン、パレオフレンドリーを実現しています。

リフィルして繰り返し使える生分解性紙製のshār-tube

ユニークなのは、このスナックが、業界初のリサイクルできる生分解性紙製チューブ「shār-tube」入りであること。チューブに巻かれたラベル、インク、のりも堆肥へ再生可能なもので、半年から9ヶ月で土に還るそうです。

軽く小さなチューブは、携帯にもぴったり。バックパックのサイドポケットや車のカップホルダーに収まるようデザインされたそうです。口が大きいため、使いやすさも抜群です。また、通常トレイルミックスを持ち運ぶ時に使いがちなジッパーバッグ袋と違い、見た目の良さはもちろん、しっかりとした筒状なので中のココナッツフレークなどが割れたりしないのも魅力です。

プラスチック不使用のリフィルバッグ

shār-tubeは、1年間、リフィルに繰り返し使える(リユースできる)ため、ゴミ削減に貢献します。20食分に当たる1パウンド、40食分に当たる2.5パウンドのリフィルバッグも、ジッパー付きにも関わらずプラスチック不使用。堆肥へ再生可能な袋で提供しています。

さらに、この企業がいかに環境への貢献について真摯に考えているかは、売上げの1%を地球に還元する企業や個人のグローバルネットワーク「1% for the Planet」への加盟や気候ニュートラル(climate neutral)認証を受けていることからも分かります。しかも、利益の20%をThe Conservation Allianceに寄付しており、商品購入を通して、消費者も共に環境に貢献できるのです。

シングルユースのクラフトソース

ポートランド郊外ビーバートンのブランド「Howl at the Spoon」のブース。左が創業者のメラニーさん。

続いて紹介するのは、オレゴン州ポートランド郊外の調味料ブランド「Howl at the Spoon」です。アウトドア好きでキャンプなどでの食事情報を提供するウェブサイト「Trail Forked」運営やレシピ本「The Great Outdoors Cookbook」の著作も手がけるメラニー・ジェンキンソン(Melanie Jenkinson)氏が2019年に創業しました。

メラニーさんは、自分がアウトドアで美味しい食事をするために、本格的なクラフトソースを必要な分だけ持ち運べるようにしたいという思いから、商品を開発。メキシコの「アル・パストール」、アルゼンチン発祥の「チミチュリ」、「レモンディル」、「マリオンベリー」という4種類のシングルユースのソースを販売しています。高品質のオーガニック素材を使ってスモールバッチで作るソースは、グルテンフリー、ビーガン、パレオ、ケトフレンドリーと大勢にアピールするものです。

4種類のシングルユースパウチ入りクラフトソース

シングルユースサイズのパウチなので、通常のガラス瓶入りのクラフトソースに比べると軽くて場所を取らないことが魅力です。また、未開封時の常温保存が可能で、使い切りタイプなので、使わなかった分の保存や無駄にする心配もありません。

さらに、「TerraCycle」とのパートナーシップを通して、パッケージのリサイクルも可能となりました。消費者は、軽く洗って乾かしたパッケージをHowl at the Spoonのイベントに持参するか、パッケージの裏側の住所に郵送する形でリサイクルできるそうです。

メラニーさんは、アウトドアはもちろん、オフィスでのランチや自宅の孤食など、忙しい時に活用してほしいと話していました。

なお、Howl at the Spoonもshār同様「1% for the Planet」に加盟し、売上の1%を自然保護のために寄付しています。

「Light is Right(軽いことは正しい)」パッケージ

「Super Belly Ferments」ブースの創業者ご夫妻

最後は、オレゴン州ベンドのプロバイオティック入りサラダドレッシングブランド「Super Belly Ferments」を紹介します。

Super Belly Fermentsのドレッシングは、「ガーデン・ゴッデス」「ライブリー・ランチ」「チャイブ・ライム」「ゴールデン・シーザー」「ビーツ・バルサミック」の5種類。どれも砂糖、グルテン、大豆、乳製品、卵不使用で、非遺伝子組み換えのオーガニックの植物性食材のみを使用し、ビーガン、パレオ、ケトダイエットフレンドリーです。試食したドレッシングは、どれもクリーミーな美味しさで、物足りなさは全く感じませんでした。

また、ザワークラウトの漬け汁のような、キャベツやビーツを発酵させたジュースを使うことで生きた乳酸菌がたっぷり入っています。パンデミックにより免疫力強化への需要が高まる中、アメリカでも腸活が盛んになってきています。そのためのプロバイオティクス入り商品として、ヨーグルトやコンブチャが認知されていますが、ドレッシングはまだ珍しく、注目の商品だといえるでしょう。

新しいパウチ型パッケージ(写真提供:Super Belly Ferments)

Super Belly Fermentsのパッケージは、これまでガラス瓶でしたが、今年の4月のアースデイにプラスチックのパウチ型のパッケージを採用することを発表しました。

ガラス瓶はリサイクル可能ですが、重たいこと、海外から輸入していること、またリサイクル作業が必要なことからカーボンフットプリントがかなり高くなってしまい、思ったよりサステナブルではないという結論に達したからです。実際、軽いパウチの採用によりカーボンフットプリントは70%まで削減できるそうです。

将来的には採算が取れる数のパウチを発注できるようになれば、プラスチックではなくアメリカの通常のリサイクルの仕組みに乗ることができるフィルムもしくは生分解性といった新たな素材のパウチを採用する意向だそうです。

 

3つのパッケージから見えるもの

今回は3つのパッケージを取り上げましたが、イベント全体を通してパッケージは見た目の良さ、利便性、価格、さらに環境への優しさを考えて選択されていくという潮流が見て取れました。今後は消費者もパッケージから企業のサステナビリティへの姿勢を判断するようになっていくのかもしれませんね。

 

参考URL:

shār:https://sharsnacks.com/

Howl at the Spoon:https://howlatthespoon.com/

Super Belly Ferments:https://www.sbferments.com/

 

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