日本で人気のカフェチェーン、スターバックスコーヒー。アメリカ・シアトル発祥のスターバックスはお隣の国カナダにも、たくさんの店舗があります。カナダのスターバックス1号店は、バンクーバーにあるスカイトレインの駅に1987年にオープンしました。この店舗はアメリカ以外の国で初めてオープンした店舗です。
今回は、本場アメリカと距離が近く、歴史も長いカナダのスターバックスについて、商品やプロモーションの違いを中心に紹介します。
豊富なドリンクメニュー
まず、カナダのスターバックスを訪れて驚くのが、メニューの豊富さです。エスプレッソをベースとしたドリンクとして、ラテやカプチーノ以外にも多くのグランドメニューが存在します。
例えば、ミルクの量がラテよりも少ないコルタード(Cortado)やアメリカーノにスチームミルクを注いだアメリカーノミスト、ラテよりも上に乗るフォームミルクの少ないフラットホワイトなどがメニューとして並んでいます。
フラペチーノに関しても同様で、コーヒーが入っている通常のフラペチーノとコーヒーの入っていないクリームフラペチーノの大きく2種類に分けることができ、日本ではそれぞれグランドメニューとして3~4種類ずつしかないのに対し、カナダのスターバックスでは各7~8種類ほどあります。
さらに、ホリデーシーズンには、限定のシロップが数種類追加され、限定のシロップを組み合わせたラテやフラペチーノなどがメニューに並びます。そのため、多い時期にはコーヒー入りのフラペチーノだけでも15種類ほどになります。
下の画像はホリデー限定のキャラメルブリュレラテで、香ばしい風味のキャラメルブリュレシロップがラテに加わることで、ホリデーらしい贅沢な味わいを生み出しています。
気分を変えたい時にぴったりな「リフレッシャー」
カナダのスターバックスには、リフレッシャーと呼ばれる、フルーツをレモネードやココナッツ、氷と一緒にシェイクしたドリンクがあります。いちごやパインなどの果肉も入っていて、見た目も爽やかで夏にぴったりのドリンクです。また、コーヒー以外の選択肢が増えるのも嬉しいポイントです。
このリフレッシャーは冬場にもグランドメニューとして販売されています。ミルクやシロップを使った暖かく甘いドリンクを飲む機会が増える時期に、気分を変えてリフレッシャーを飲むこともできます。
日本と違う新作リリースの傾向
日本では、スターバックスの新作ドリンクが毎月発表され、その季節に合ったドリンクがSNSなどで度々話題に上がります。一方、カナダの新商品の開発ペースは日本と比べると遅く、2カ月に1度ほどのペースでしか発売されません。それ以外は、前年と同じ季節限定メニューを再販する場合が多く、日本ほどの目新しさはありません。
また、新作ドリンクは基本的にラテ系のメニューが多く、逆に日本では新作のほとんどがフラペチーノです。これは、日本とカナダのカフェでのフラペチーノの位置付けの違いによると考えられます。カナダでは、フラペチーノのような氷と一緒にブレンドされた冷たいドリンクは他のカフェでも一般的で、スターバックスに限らずカナダのカフェチェーンでは常に数種類販売されています。そのため、日本ほどフラペチーノへの特別感がなく、新作の開発が進まないと考えられます。
スイーツなどのフードに関しても、日本は季節の新作とともに、新しいフードが発売されますが、カナダのスターバックスではフードの新作が頻繁に発売されることはほとんどありません。
新作ドリンクの多様性と文化への配慮
移民の多いカナダでは、スターバックスの新作にも多様性への配慮を垣間見ることができます。ベジタリアンの人でも飲むことができるよう、新作はナッツやスパイスを使用したラテや、フルーツを使用したレモネード系のドリンクがほとんどです。
また、ラテに関しても初めからオーツミルクを使用した「〇〇オーツラテ」のようなドリンクが多く、乳製品を摂らない人たちも含め、全ての人が飲むことのできる設計のドリンクを、新作ドリンクとして発売しています。
カナダの冬の定番ドリンクに「エッグノッグ」という卵を使用したホットドリンクがありますが、2024年の冬、スターバックスではその卵をオーツミルクに置き換えた「オーツノッグ」を発売しました。ここでも、卵を食べない人への配慮を感じます。
商品よりもシチュエーションに重点を置いたSNS運用
カナダと日本のスターバックスの公式インスタグラムを覗いてみると、プロモーションの方向性に大きな違いが見られます。日本の公式インスタグラムでは、基本的に投稿は新商品の紹介や、おすすめのカスタマイズなどが中心です。一方、カナダはコーヒーを楽しむシチュエーションにフォーカスした投稿が多く見られます。
例えば、春には「Picnic Mode : ON」という文章とともに、ピクニックのお供に新作ドリンクを楽しむ様子が投稿されています。
また、クリスマスシーズンであれば、「Ready for a gift wrapping marathon!」(ギフトラッピングマラソンの準備は万端!)という文章とともに、ホリデーシーズン限定のラテを飲みながら、長時間にわたるラッピング作業に挑む様子を投稿しています。
これは、購入したたくさんのクリスマスプレゼントを自分たちで包装することが一般的なカナダの習慣に合わせた投稿と考えられます。
このように、商品自体にフォーカスするよりも、そのドリンクを飲む時のシチュエーションを提案する投稿が多く見られます。上記の他にも、コーヒーを飲みながらできるデートアイデアの提案や、十二星座の性格に合わせたドリンクの提案をしています。また、7月はロードトリップ、10月はコスチュームパーティーなど、各月のイベントやアクティビティに合わせたドリンクの提案もしています。
音楽カルチャーとの組み合わせ
2024年の12月、テイラー・スウィフトが「The Eras Tour」というワールドツアーでカナダを訪れました。コンサートが行われる前から、バンクーバーでは観光地やレストランなど、様々な場所でテイラー・スウィフトに関するプロモーションが行われ、街中にはテイラー・スウィフトの代表的な衣装でもあるスパンコールやピンク色のドレスを着たファンで溢れていました。
コンサートは、彼女がリリースしたアルバムをテーマにしたセットリストが特徴的なツアーでした。そのため、カナダのスターバックスも「1989 – Iced Caramel Macchiato」や「Folklore – Chai Tea Latte」など各アルバムのイメージに合ったドリンクをまとめた画像を投稿し、スウィフティーズ(テイラー・スウィフトのファンの総称)の注目を集めていました。
日本とカナダ スターバックスの消費スタイルの違い
日本のスターバックスは、グランドメニューがカナダに比べて少ないですが、毎月発売される新商品を求めて店舗に訪れる人も多く、飽きが来ないよう工夫されています。また、店舗限定の商品を数多く発売することで、色々なお店を巡り、そこでしか味わうことのできない商品を楽しむことができます。
一方、カナダのスターバックスは新作の発売数は日本と比べると少ないですが、グランドメニューの数が多く、毎日通っても飽きが来ない品揃えです。
さらに、店舗数は日本が1,986店舗なのに対し、1,600店舗ほどあり(2024年現在)、日本の約1/3の人口でありながら、人口に対する店舗の数が多く、バンクーバーに住んでいるとどこに行ってもスターバックスを見かけます。
まとめ
SNSでの投稿や店舗の数からもわかる通り、カナダのスターバックスは、生活に溶け込むような普段使いのできるカフェであることがわかります。
逆に日本のスターバックスは、訪れることにより普段は味わうことのできない特別な体験ができるという違いがあります。どちらも、その地域や暮らす人々の特性を理解した商品開発やプロモーションが行われていました。
▼編集部おすすめ記事
ハノイ発祥の「コンカフェ」にみられるベトナム人の愛国心と卓逸したセンス