パケトラ読者のみなさま、こんにちは。ポルトガル在住の東リカです。
ワイン、ビール、リキュールとみてきたポルトガルのお酒のパッケージ。今回はポルトガルを代表するお酒、ポートワインのような酒精強化ワインを中心にそのパッケージをご紹介します!
ポルトガルの酒精強化ワインとユニークなお酒

スーパーマーケットのポートワイン売り場
酒精強化ワインとは、ワインの醸造工程中にアルコールを添加してアルコール分を高め、コクと保存性を高めたお酒のことです。スペインのシェリーに加え、ポルトガルのポートワインとマデイラワインが世界の三大酒精強化ワインとして挙げられますので、実はポルトガルは酒精強化ワイン産出大国なのです。
実際、この2つ以外にも、モスカテル・デ・セトゥーバル、モスカテル・ド・ドウロ、ジェロピガといった伝統的な酒精強化ワインがあります。
中でも、本土で生産されるポートワインは地元ポルトガルでもよく親しまれている飲料で、スーパーなどでも専用売り場が設けられていることが少なくありません。また、他にもハチミツのワイン「イドロメル」、ストロベリーツリーの実を発酵・蒸留して作る「メドローニョ」といったユニークなお酒もあります。
女性をフィーチャーしたポートワインのパッケージ

アントニアさんが描かれたポートワイン
ポートワイン売り場で目につく女性のイラストがあります。
彼女の名は、アントニア・アデライデ・フェレイラさん(Dona Antónia Adelaide Ferreira)。1751年創業の伝統的なブランド「フェレイラ(Ferreira)」の4代目で、33歳の若さで未亡人となった後、男性社会の中で奮闘し、このブランドの近代化を行い、また19世紀のポートワイン産業の発展に大きく貢献したそうです。

威厳のあるアントニアさんの肖像が採用されている
黒い服に身を包んだ若い頃ではなく、年齢を経てからの威厳ある彼女のイラストは、ワインのラベルはもちろん、円柱のケース、グラスとのキットなど多くの長期熟成させたワインのパッケージでフィーチャーされています。
(参照:https://portoferreira.com/)

ポルトガルの衣装シリーズ
また、同ブランドには女性のイラストを用いた短期熟成ポートワインのパッケージもあります。これは、ミーニョ地方、ドウロ・リトラル地方、ナザレ地方の3つの地域で女性たちが文化的な祭典で着用する伝統衣装のイラストを採用した「Trajes de Portugal(ポルトガルの衣装)」というシリーズです。
例えば、ナザレ地方であれば、女性が海の波を数えるために着ていた7枚のスカートが描かれています。ポルトガルの文化的伝統の重要な一部である民族衣装を称え、若い世代にその歴史を伝えることを目的としているのだとか。
このポップなパッケージは、比較的ダークなパッケージが多いポートワインの陳列棚で目を惹きます。
3人の紳士が熟成を象徴

3人の老紳士が描かれた「ヴェロテス」ライン
一方、1859年創業のポートブランド「カレム(Cálem)」は、3人の老紳士をパッケージに用いた「ヴェリョテス(Velhotes)」という長期熟成ポートワインのラインを1934年から展開しています。このネーミング自体もポルトガル語で「年配の人々」を意味し、熟成されたワインを象徴しているそうです。ちなみにポートワインを手にした3人は、それぞれ弁護士、判事、薬剤師だそうです。
先述のアントニアさんもそうですが、熟成のシンボルとして年配の方を採用する傾向があるのかもしれません。
(参照:https://velhotes.calem.pt/en)
キリストが描かれた「涙」ポート

3つの箱を並べて現れる大きなキリストの顔やアート(上段左)が目を惹く
ポートワイン売り場でもう1つ目立っていたパッケージが、イエス・キリストの顔が描かれた「ラモス・ピント」ブランドの「ラグリマ(涙)」ワイン。ラグリマは、ポートワインとしては比較的珍しい白いぶどうから作る非常に甘いワインがオリジナルのようです。
1880年創業のこの老舗ブランドは、創業者がワインのパッケージデザインとプロモーションに特別なこだわりを持ち、国内外のアーティストを採用した広告戦略で1900年代初頭にはブラジルを中心にブランドの認知度を高めたことでも知られています。近年、その美しいアートワークを集めた本や復刻版パッケージも登場しています。
(参照:https://www.ramospinto.pt/en/)

人気上昇中の白いポートワイン
なお、ラグリマというポートは他のブランドからも出ていて、象徴的にキリストを使うものが多いようです。
ギフトやお土産にもぴったりなポートワインのパッケージ

木箱入りのポートワイン
ポートワインは、熟成年数の長さやぶどうの当たり年などでその価格も変わってきますが、同じブランドでも特別感のあるパッケージがたくさんあります。

布の袋に入ったポートワインもおしゃれな印象
例えば、木箱入りや紙の筒、また布袋入りなどのパッケージはギフトにもぴったりです。また、ワイン瓶というよりもウイスキーのような瓶やずんぐりと丸いフラスコ型など、瓶の形が違うものもあります。

ミニボトルがセットになったサンプラー

チョコレートとのペアリングが可能なミニボトルのセット
さらに、例えば、短期熟成、10年熟成、20年熟成、ホワイトポートなど複数の種類のポートワインを比較して楽しめる小瓶を集めたものも比較的よく見かけます。こちらはお土産にも喜ばれそうです。

ドライな白ポートをベースにした缶入りカクテル
また、カジュアルに飲めるポートとして、ポートワインをトニックウォーターで割ったカクテル、ポート・トニックが缶入りでも発売されています。
焼き栗のお供に飲まれる伝統酒

秋の風物詩、ジェロピガ(右)
ポルトガルでは、11月11日「サン・マルティーニョの日」に焼き栗を食べ、新酒を飲んでお祝いする「Magusto(栗祭り)」が開催されます。その焼き栗のお供となるのが、ジェロピガ(Jeropiga)と呼ばれる長期熟成させない酒精強化ワインです。

栗や栗の葉が描かれたジェロピガのラベル
ジェロピガはぶどうから作るのですが、秋の風物詩として栗とセットで考えられているためか、栗の描かれた秋らしいラベルが多いところが面白いと思います。
ハチミツのお酒とストロベリー・ツリーのお酒
最後に、世界最古の醸造酒の一つと言われるハチミツ酒(ミード)「イドロメル(Hidromel)」とストロベリーツリーの赤い果実を発酵・蒸留して作られる伝統酒「メドローニョ(Medronho)」のパッケージを紹介します。

「神々の酒」というシールが貼られたイドロメルのパッケージ
イドロメルは、中世以降、バイキングや騎士、吟遊詩人の物語の中で「不老不死をもたらす酒」や「神聖な飲み物」などとして登場し、欧州では神秘的なイメージが定着しています。近年、中世フェスティバルやバイキングイベント、『ゲーム・オブ・スローンズ』のようなファンタジー文化の人気もあり、イドロメルが再注目されたこともあって、そのイメージを踏襲したパッケージが増えているようです。

ストロベリーツリーの実が描かれたメドローニョ
一方、メドローニョは原料自体が珍しいこともあり、ストロベリーツリーの実をデザインに取り入れたラベルが多いようです。
共にかつては自宅で作られていたような少量生産の伝統酒であるためか、瓶の形などパッケージも共通しておらず、さまざまなものがあるようです。
お土産にも喜ばれそうなので、機会があれば、ぜひ手に取ってみてくださいね。
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