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ペットの人間化、家族化

ペットは古くから家族の一員でしたが、米国ではその役割がますます進化しています。ペットが孫と同じくらい愛されていることを示す「grand dog(孫犬)」という言葉も誕生しています。日本でも同様の傾向が見られますが、ペットに服を着せたり、SNSにペットの視点で意見や写真を投稿したりするなど、「ペットの人間化」が進んでいます。

ペットを取り巻く文化は変化しており、ペットオーナーは、自分の食料品を買うのと同じようにリサーチを行い、ラベルを確認するなど、高い意識を持つようになっています。小規模なスタートアップから米国大手のペット小売店まで、さまざまな企業が「Pet Humanization」というトレンドに乗り、事業展開を進めています。人間でも食べられる品質の生鮮食品を使ったフードから、ウェアラブルツール(フィットネストラッカー)、医療診断ツールに至るまで、新しい製品やサービスが誕生しています。

米国最大の小売業「Walmart」はペットに特化した大手メディアの「The Dodo」と提携し、「Pet Lovers' Box」(月額約20ドルでおもちゃや犬用具が届くサブスクBOX)を提供したり、「Walmart Total Petcare」として、ペットに関わる医療、薬の配送、保険、ペットケアのC2Cマッチングの事業開発を進めています。

米国では1億1,400万以上の世帯が犬や猫を飼っています。ミレニアル世代の32%、Z世代の14%がペットを飼育しており、ペットへの支出は今後も成長が予想されています。犬や猫を家族の一員と考えるアメリカ人が増加しているため、ペットを我が子のように考えるビジネスが増加しています。パンデミック時に米国では新たに2,300万世帯がペットを飼い始めたため、ペットに関する消費はますます増加しています。American Pet Products Associationによれば、ペット関連の支出は2018年の900億ドルから2024年には1,519億ドル(6年で1.7倍)に跳ね上がっています。

「Pet Humanization」がもたらすビジネストレンドとして、以下のようなものが進行しています。
1)食べ物:Human-Gradeなフードが当たり前に。
2)サプリメント:ペットのウェルネス消費を促進。
3)ペット保険:次世代の購買習慣に沿った販売戦略。
4)獣医療:人間医療のトレンド反映。
5)ペットテック:コネクテッド・カラー、犬のDNA検査ほか。

パッケージの観点からは、食品やサプリメントが主要アイテムになり、人間向け製品と同様の配慮が必要になっています。

多くのペットオーナーが自分たちを「Pet Parents=ペットの親」と考える傾向が強まっており、ペットの食事や日用品、そして医療などへの支出が増加しています。ペットはすでに所有物ではなく、家庭の一部、家族の一員へと変化しているのです。

2011年に創業し、2019年に上場したオンラインペットリテールの「Chewy」は、ペットの飼い主を常に「Pet Parents」と呼ぶことに気をつけながら、「Pet Humanization」のトレンドに寄り添っています。定期購入を行う顧客にはペットの肖像画を送ったり、さらにペットが亡くなったときには、花やお悔やみ状を送ったりするなど、ペットオーナーの愛情に応える形で事業を展開しています。

ペットの人間化

ペットフードの包装分野は、個包装、環境の持続可能性、そして地域生産への需要の高まりに牽引され、着実な成長を遂げています。一方、「ペットの人間化」というトレンドの広がりも消費者の選択に影響を与え、栄養成分に関する包括的な情報を提供する魅力的な包装への需要が高まっています。

「Innova Market Insights」によると、ペット市場の包装分野では軟包装とプラスチック包装が主流となっていますが、欧州では消費者の嗜好により、紙ベースおよびモノマテリアルのソリューションへの移行が加速しています。2020年から2024年にかけて世界のペットフードの発売数は21%増加する見込みです。消費者はペットフードの包装に紙を好むものの、新製品は依然としてプラスチックが主要な素材となっています。

ペットフードのリーダー企業である「Clevertech社」は、ペットフードの包装としてパウチを最も多く採用しています。パウチは、通常ウェットタイプのペットフードを入れる柔軟性のある使い捨ての多層包装で、瓶や缶、カートンに比べてパッケージの量が最も少なくなっています。

「Sonoco社」は、ドイツのペット用スナックスタートアップ企業「DoggyLove社」と提携し、植物由来の「GreenCan®」を開発しました。「Sonoco社」の「GreenCan®」は、92~98%の紙含有率を特徴とし、リサイクル性の向上、高い持続可能性への配慮、そして全面印刷機能を備えています。

「DoggyLove」は当初、アジアからさまざまな包材を調達する予定でしたが、このアプローチでは配送時間が長くなり、世界的な政治的不確実性の影響を受けやすくなることを認識したため、持続可能性ともマッチする「Sonoco社」の紙缶「GreenCan®」を採用しました。EUの包装および包装廃棄物規制(PPWR)では全てのプラスチック包装にリサイクルプラスチック(PCR)素材を含まなければならないと規定しており、ペットフードの包装も同様です。

Amcoreの調査では、ペットオーナーの69%は、包装がサステナブルであればペットフードを購入する可能性が高くなると回答しています。ペットフードやペットケア製品の包装会社は、サステナビリティを重視する消費者の需要に応える必要があります。

海洋プラスチック排出削減に貢献するため、使用済みPETをリサイクルしたボトルを製造している英国の「Spectra Packaging社」は、「The Pawfume Shop」と提携して、ペットシャンプー用の持続可能なボトルを供給しています。
「Mondi」はビーガンドライドッグフード10kgパックに、PCR含有量35%の素材を配合し、将来の規制要件を満たしています。

ペットオーナーは増加しているだけでなく、これまで以上にこだわりが強くなっています。その結果、自然で栄養価が高く、持続可能な方法で包装された食品の購入にますます重点を置いています。「Tetra Pak」の「テトラ・リカルト®」は、風味と栄養を閉じ込め、気候への影響を軽減する、スマートで便利な包装です。

「Tetra Pak」によれば、重要なのは、パッケージが保管しやすく、開けやすく、製品をしっかりと保護することです。そして、ペットの飼い主が求める新たな特性は持続可能性だとしています。「テトラ・リカルト®」のパッケージの70%は、再生可能な資源である森林由来の紙から作られています。ペットフードは一般に缶詰で包装されることが多く、「テトラ・リカルト®」の導入によって入荷時の物流効率は9分の1にまで向上します。小売業者は、缶に比べてコンパクトな「テトラ・リカルト®容器」によって棚スペースの削減が可能になります。

ペットフード業界で初めて「持続可能な管理基準」の認証を取得した「メラ社」は、プラスチック容器の代替を目指し、持続可能な包装オプションを求め、物流プロセスを合理化するために紙容器を採用しました。以前のプラスチックパッケージでは犬の写真が使われていましたが、新しい紙製容器には犬の写真は使われていません。

MRFRの分析によると、ナチュラルペットフード市場は、2024年の43.7億米ドルから2035年には100億米ドルに成長すると予想され、ナチュラルペットフード市場のCAGR(年平均成長率)は、予測期間(2025~2035年)中に約7.82%になると予想されています。ペットオーナーが天然素材の健康効果に関する知識を深めていることが、世界的なナチュラルペットフード市場の需要増加を牽引する要因となっています。
消費者は、人工添加物、保存料、増量剤を含まない商品を選ぶ傾向が強く、愛犬の健康全般を改善する成分を選ぶようになっています。多くの人が愛犬を家族の一員とみなし、より良いフードにより多くのお金を使う用意があることが、この変化を後押ししています。

業界を牽引するもう一つの大きな要因は、世界中でペットを引き取る人が増えていることです。これは、責任あるペット飼育を促進する政府のプログラムや動物福祉団体の支援によるものです。

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