大阪万博にも出展!Omdesignのサステナブル&ラグジュアリーパッケージ
パケトラ読者のみなさま、こんにちは。ポルトガル在住の東リカです。
大阪・関西万博のポルトガルパビリオンに足を運ばれた方はいらっしゃいますか?
今回ご紹介する「オーエムデザイン(Omdesign)」は、この会場で「持続可能性という贅沢(The Luxury of Sustainability)」と題した展示を行ったポルトガルのパッケージデザイン会社です!
27年以上にわたって培ってきた、サステナブルなデザイン
オーエムデザインは、ポルトガル第二の都市ポルト近郊の港町、マトジーニョを拠点にした100%ポルトガル資本のデザイン&広告エージェンシーです。
1998年の創業以来、常にサステナビリティを軸に素材選定、製造プロセス、リサイクル・再使用可能設計などに配慮したプロジェクトを展開してきました。特にパッケージデザインにおいて国際的な評価が高く、「ペントアワード」、「レッドドット・デザイン賞」、「iFデザインアワード」など、世界各国のプラットフォームで350を超える賞を受賞しています。では、さっそく具体例を見ていきましょう。
海と生きる人々へ捧げる蒸留酒

ポルトガル産ジン「F.C. Nº5」(写真提供: Omdesign)
まずは、ポルトガル館で正式なお披露目が行われたポルトガル産ジン「F.C. Nº5」。オーエムデザインは、このブランドのアイデンティティとビジュアルを手がけました。
「F.C. Nº5」は、ポルトガル代表としても活躍した元プロサッカー選手、ファビオ・コエントランが参画する商品です。コエントラン氏は引退後、故郷の漁村カシナスに戻り、漁師に転身し、人生を再出発しました。オーエムデザインはこのストーリーを「F.C. Nº5」のインスピレーションとして採用しました。
トップアスリートとしてのキャリアを終えた男性が、自分のルーツである小さな漁村に帰郷し、かつての華やかな生活とは無縁のタフな漁業に謙虚に取り組むことで、「人生の本質と忍耐」を見出しました。そんな世界観のもと、オーエムデザインは「F.C. Nº5」のデザイン全体に力強い個性、伝統、ライフスタイルを表現しました。

海や漁師に着想を得たパッケージ(写真提供: Omdesign)
例えば、ボトルネックに結ばれたノット(結び目)や、ガラスの底に刻まれた波の模様などは、海と共に生きる人々の勇気と勝者の魂へのオマージュです。また、波を思わせるボトルの形状も、海が育む神秘的な生命のリズムを象徴しています。
さらに、透明感とスクリーン印刷の要素が絶妙に組み合わされ、360度どの角度から見ても美しく、棚の上でも際立つ存在感を放つように工夫されたそうです。
消費者の再利用を促すポートワイン箱

ポートワイン「RP10」(写真提供: Omdesign)
続いても、ポルトガル館で展示されたパッケージです。
「RP10」は、老舗ポートメイカー「Ramos Pinto」の代表的な商品である10年間熟成させたポートワインです。オーエムデザインは、オリジナリティ、シンプルさ、環境責任をテーマに2つのコルクブロックと圧縮段ボールのスリーブのパッケージを設計しました。

再利用できる美しいコルクのスリーブ(写真提供: Omdesign)
コルクブロックは、単なる箱ではなく、ワインクーラー、ペン立て、花瓶など、ユーザーの発想次第でさまざまな用途に再利用できるシンプルで美しいデザインになっています。
ワインと関係の深いサステナブル素材であるコルクを採用することで、ポートワインの伝統を想起させるのはもちろん、再利用の幅を広げる軽量、緩衝、断熱、再生可能といったコルクの自然特性も融合しました。
オーエムデザインは消費者に再利用を促すことで、「RP10」のパッケージを「持続的で機能的なオブジェ」へと昇華させ、「Ramos Pinto」のサステナビリティと革新への姿勢を体現したと自負しています。
サステナビリティへの姿勢を示す「どんぐり」パッケージ

どんぐりを彷彿させるパッケージ(写真提供: Omdesign)
次に紹介するオーエムデザインのセルフプロモーションパッケージ「どんぐり」も「ポルトガルの2つの象徴」であるポートワインとコルクを採用したものです。
オーエムデザインは、2016年から自社のセルフプロモーションパッケージを発表しています。同社が発表する作品は、クライアントやパートナー、そして地域社会に向けた意識的で責任ある姿勢の表明であり、万博会場での展示テーマと同様の「持続可能性という贅沢(Luxury of Sustainability)」を体現するメッセージとなっています。
その第一弾が「未来への種」を象徴するこの「どんぐり」です。
2016年は、オーエムデザインが89もの受賞を果たした年です。そこで、創業年が1998年であることをかけて、初のセルフプロモーションパッケージを制作しました。

どんぐりパッケージの設計図(写真提供: Omdesign)
コルクと木材で作られたどんぐりパッケージには、ヴィンテージ・ポートワインと本物のコルク樫の実、つまり「どんぐり」が土とともに収められました。
パッケージの底部は、コルク製モノブロックになっていて、その中で実際にコルク樫を育てることができます。また、木が育ち始めたら、消費者はそれを地面に植え替え、パッケージ中央の木製リングで植えた場所を記念としてマークできます。

どんぐりが発芽した苗は土に植えるよう推奨(写真提供: Omdesign)
このデザインは、オーエムデザインが1998年の創設以来、企業の中核的価値として掲げてきたサステナビリティ、「自然から受け取るものを再び自然に還す」という理念を象徴しています。また、消費者に「自然保護への参加」を促す挑戦でもあります。
コンセプト映像(https://www.youtube.com/watch?v=50P8iTlKzoc&t=1s)
「蜂のホテル」パッケージ

ハチミツのパッケージ(写真提供: Omdesign)
続いては2023年に発表されたセルフプロモーションパッケージ「O Mel(ハチミツ)」です。自社の数々の挑戦と創造の歩みを、小さな存在ながら地球に大きな影響を与える、忍耐や勤勉の象徴でもある「孤独なミツバチ(solitary bees)」に準え、発想の核としたものです。

パッケージはハチミツをくれたハチへの恩返しに使うことを推奨(写真提供: Omdesign)
ハチミツのパッケージ素材の選定は、3つのR(Reused/Reusable/Reduced)に基づいて行われました。
例えば木箱は、通常は破棄や焼却されるワイン木箱の廃材や余剰生産品を再利用して作られています(Reused)。また、ハチミツのスプーンは、実は「未来の物語を書き続けるための『始まりの一筆』」というメッセージを込め、鉛筆になっています。また、ガラス瓶も再利用できます(Reusable)。さらに、バージン原料(新素材)を使用せず、最小限の生産工程で制作しました(Reduced)。
また、このプロジェクトでは、単にサステナブルなパッケージに入ったハチミツを届けるだけでなく、150の「Bee Om Hotel(ハチのホテル)」ネットワークを発足させ、「持続可能で目的意識を持った連帯の精神を広めること」を目指したそうです。

みんなの行動によりハチのホテルのネットワークが生まれる(写真提供: Omdesign)
具体的には、ハチミツの瓶と鉛筆スプーンを取り外した「O Mel」を、受け取った人が、地上1メートルの高さに設置することで、ミツバチが安全に冬眠・繁殖できる環境を提供する「ホテル」になるのです!
自然の無限の循環を讃える「ぶどう畑」パッケージ

ミノムシのような美しくインパクトのあるパッケージ(写真提供: Omdesign)
最後に2025年、最新のセルフプロモーションパッケージ「OMd’vine」を取り上げます。
「OMd’vine」は、気候変動に取り組むポルトのワイン生産者ネットワーク「The Porto Protocol Foundation」 と提携して制作された10clの小型ボトル入りオーガニック・ポートワインとローストアーモンドのパッケージです。
創立27周年を迎えた今年は、「自分たちの創造の旅」を支え、オーエムデザインを形作ってくれた巡る自然への深い敬意をブドウ畑のライフサイクルをコンセプトにして表現したそうです。

スリーブはトレイとして再利用できる(写真提供: Omdesign)
例えば、「OMd’vine」の外装スリーブの素材には、通常は廃棄または焼却される「ブドウの剪定枝」を再利用しています。
このスリーブは、ボトルの輸送・保護という本来の目的を果たした後、平らにするとトレイとして再利用できる構造で、余剰を「廃棄物」ではなく「新たな可能性」と捉えるオーエムデザインの哲学を体現しています。また、「見過ごされがちなものの中にある美しさ」の想起や限られた資源に代わる新たな素材の価値を提示します。
さらに、スリーブの基材にはESKA®製のFSC®/PEFC認証を受けた100%再生紙ボードを採用しており、箔押しやプラスチックを一切使わず、エンボス加工と活版印刷のみで仕上げることで、環境配慮を徹底したそうです。

瓶の底にはおつまみのアーモンド(写真提供: Omdesign)
ボトルの底に詰められたオーガニック・ローストアーモンドから、再利用可能なスリーブや紙製トレイ、活性炭を用いたコルク栓、そして同素材のタグに至るまで、すべてが「サステナビリティという贅沢」を伝える設計です。オーエムデザインは、このパッケージを「再利用・リサイクル・削減、そして何より“再考する”という新しい思考を促す象徴」としています。
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