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アメリカで人気再燃のヴィンテージブーム

アメリカでは、近年、若い世代を中心にヴィンテージが大人気となっています。
ヴィンテージといえば、フリーマーケットやヴィンテージショップなどファッションやアクセサリーが思い浮かびますが、人気の高まりを受け、ヴィンテージデザインは、ファッションにとどまらず、キッチン用品、雑貨、文房具、パーソナルケア、食品パッケージなど幅広い分野の商品やパッケージ、店舗デザインで取り入れられ、広がりを見せています。
今回は、ニューヨークで見かけたおしゃれなヴィンテージデザインをご紹介します。

フリーマーケット

ヴィンテージの定番といえば、フリーマーケットです。ニューヨークでは主に週末にさまざまな場所でフリーマーケットが開催されています。中でもプレミアム感があるフリーマーケットが、ブルックリンのDumboで週末に開催されている「ブルックリンフリー」です。
マンハッタンブリッジの下という絶好のロケーションで、DJによる音楽をBGMに、古着やアクセサリーを中心に中古品に手を加えたクリエイティブな商品なども販売されています。

ブルックリンフリーの様子
古い雑誌や本をはじめ、アート系のカードやポスター、ポストカード、レコード、さらには玩具まで、多彩な商品が所狭しと並んでいます。

所狭しと並んだアート系のカードやポスター
アクセサリーや工芸品、時計、サングラスなどを扱うお店も多く見られ、指輪やブレスレットなどのヴィンテージジュエリーの人気が高いです。さらに、古いアイテムをリメイクして新たな価値を加える、アップサイクルの商品も販売されています。

指輪やブレスレットなどのヴィンテージジュエリー
最近、フリーマーケットで特に存在感を増しているのが中古カメラです。
会場内には中古カメラを扱うブースが複数設けられ、どのブースにも若者たちが集まり、熱心にカメラを手に取る姿が見られます。スマートフォンで手軽に写真が撮影できる現在、あえて中古カメラを選ぶ人も多く、ヴィンテージ写真の流行の広がりを感じさせます。

街中では、レトロな風合いの写真が撮れる撮影機が人気を集めています。まるで昔のプリクラのように写真を撮って楽しむ若者が増えていて、懐かしさを感じさせるノスタルジックな写真が新鮮に映り、人気を集めています。

中古カメラを扱うブースに集まる若者たち

ヴィンテージショップ

ニューヨークには、ハイエンドのヴィンテージショップから手頃な価格帯で幅広い商品が手に入るスリフトショップまで、古着をはじめとするさまざまな中古品を購入できるお店があります。近年のヴィンテージブームにより、さらにお店が増え、商品の質やバラエティも向上し、こだわりを持った品揃えで商品の見せ方や空間づくりに工夫を凝らしたセンスのいいお店も多く見られるようになりました。お客さんも目が肥えてきており、単なる安価な古着ではなく、洗練されたものを求める人も増えています。

個性的な店舗が多く、ヴィンテージ商品も中古とは思えないほど綺麗な状態で販売されているお店もあります。まるでブティック店のような個性的な空間で新品のプレミアム商品を購入するような感覚で買い物を楽しめるお店も少なくありません。

ニューヨークのヴィンテージショップ
ニューヨークのヴィンテージショップは、ファッションを中心に扱うお店が圧倒的に多く、家具やキッチン用品を扱うお店は限られています。都市部では、郊外のように広い店舗を確保することが難しいため、家具のような大きくて持ち運びが難しい回転率が悪い商品は扱いにくいことが原因として挙げられます。それでも、数少ない家具を扱う店舗では、個性的でセンスの光る一点物の家具に出会えることもあり、掘り出し物を探しに定期的に足を運ぶ常連客も多くいます。

個性的でセンスの光る一点物の家具

ヴィンテージデザインのキッチン用品

ヴィンテージ人気から、ヴィンテージデザインを積極的に取り入れるファッションブランドが多く見られますが、こうした流れはファッションにとどまらず、キッチン用品や雑貨、インテリアの分野でも多く見られます。ニューヨークには、1980-90年代から続くヴィンテージデザインを主役にした食器や雑貨の人気店がいろいろあります。

お土産としても人気になっているニューヨークの人気キッチン用品店「Fishs Eddy」では、フリーマーケットで見かけるようなレトロなヴィンテージデザインや、ニューヨークをモチーフにしたデザインの食器が豊富に揃っています。

ニューヨークをモチーフにしたデザインの食器
また、雑貨ブランド「John Derian」も、ヴィンテージデザインの食器をはじめとする幅広い雑貨が販売されています。まるでアンティークショップのような雰囲気のお店ですが、どれも新品の雑貨で、ヴィンテージ好きに魅力的なデザインの商品が多いのが特徴です。

「John Derian」の雑貨

ヴィンテージデザインの店舗

ニューヨークでは、近年、ヴィンテージデザインにこだわったお店もよく見かけるようになっています。
こちらは、昔懐かしいレトロな雑貨がずらりと並ぶ、ユニークなヴィンテージデザインのキャンディショップです。店内には、ガラスや陶器、缶など、レトロなデザインアイテムがセンス良くミュージアムのように飾られ、暖色系の黄色いランプや格子模様のフロアがノスタルジックな空間を演出しています。細部までデザインにこだわったそのお店の雰囲気に、訪れる人々はどこか懐かしい気分にさせられます。

遊び心のあるヴィンテージデザインの活用は小売店にとどまらず、ホテルやレストラン、オフィスビルなどでもよく見られます。

レトロな雑貨が並ぶヴィンテージデザインのキャンディショップ

ヴィンテージデザインのミュージアム

また、ニューヨークには、たくさんのミュージアムがありますが、ポスターや看板、映画を専門とするものなど、ヴィンテージデザインを楽しむことができるミュージアムが増えてきています。
ポスターに特化したミュージアム、ポスターハウスではアールヌーヴォーやアールデコ、旅行や映画などをテーマにしたものなど、さまざまなテーマのポスター展が開催されています。デザインや配色、メッセージやフォントなどさまざまな時代やスタイルのポスターを通じ、ヴィンテージデザインの魅力が紹介されています。

ポスターハウスのミュージアムショップには、展示に関連したポスターの商品が数多く揃い、ヴィンテージデザイン好きに人気があります。アメリカ旅行のヴィンテージポスターが描かれたトランプ、映画のポスターのポストカード、国立公園のポスター展からグランドキャニオンのポストカード、アールヌーヴォーのデザインマグネットなどさまざまなスタイルのヴィンテージデザインの商品があります。

アメリカ旅行のヴィンテージポスターが描かれたトランプやポストカード

クラフト感のあるパーソナルケア商品

ニューヨークには、さまざまな分野で老舗のお店があります。1838年創業の薬局「C.O. Bigelow」もそんな老舗の1つで、オリジナル商品をはじめ、プレミアム感のあるパーソナルケア商品が多数販売され、人気を集めています。

1838年創業の薬局「C.O. Bigelow」
「C.O. Bigelow」の定番商品のひとつである唇や肌の乾燥などに使用するバームの入れ物のように、「C.O. Bigelow」のオリジナル商品は、創業の年「Est. 1838」が刻まれ、歴史を感じさせる文字や数字、デザイン、色が使用されています。歴史ある薬局であることを醸し出すヴィンテージ感のあるデザインのパッケージです。

「Marvis」の歯磨き粉
また、同じく「C.O. Bigelow」で人気がある商品のひとつ、イタリアのデンタルケアブランド「Marvis」の歯磨き粉も、ヴィンテージデザインが特徴的で一度見たら記憶に残る印象的なパッケージです。高級感のあるクラシックなフォントとシルバーのチューブが使用され、箱やチューブのキャップには繊細な装飾が施され、一般の歯磨き粉とは異なる、伝統とクラフト感を上手く演出した商品です。

アメリカのスーパーマーケット、「Trader Joe's」の固形石鹸も、目を引くおしゃれなヴィンテージデザインのパッケージが使用されています。フランス産の石鹸ということもあり、プレミアム感があるデザインのパッケージです。
パーソナルケアの基本的なアイテムでも高品質なプレミアム商品であることを表現したいときに、ヴィンテージデザインがよく使用されています。

ヴィンテージデザインの食品パッケージ

ヴィンテージデザインは、食品の分野でも活躍しています。食品の中でも、クラフト系や昔ながらの定番食品、ヨーロッパからの輸入品などを中心に、パッケージでよく使用されています。
プライベートブランド商品を強みとするアメリカの人気スーパー「Trader Joe's」においても、ヴィンテージをデザインの柱の1つにしています。

コーヒー、ポップコーン、エコバッグなど、さまざまな商品分野でヴィンテージ風のイラストが用いられています。エコバッグは、州ごとに異なるものなどさまざまなデザインがあり、こちらは、レトロなイメージがある歴史ある街シカゴのエコバッグです。そして、クラフトなイメージがある昔ながらの定番であるコーヒーとポップコーンは、ヴィンテージな絵柄のおしゃれなパッケージを使用してイメージを引き立てています。

コーヒー、ポップコーン、エコバッグなどでもヴィンテージ風のイラストが使用されている
乳製品では、アーモンドミルク、バター、クレームフレーシュなどで、ヴィンテージ風のデザインが使用されています。
パイ生地も、冷凍食品としては珍しく特別感のあるデザインで目を引く商品です。共通して、ヴィンテージ風のフォントと縁取り装飾を使用することでクラフト感を持たせ、高品質な印象を与えています。

アーモンドミルク、バターなどでもヴィンテージ風のデザインが使用されている
アメリカ国外産のプレミアム調味料にも、ヴィンテージ感があるパッケージがよく使用されています。
中央にあるのがモーリシャス産のバニラエクストラクト、そして、その両側にあるのが、モデナ産のグレーズ(バルサミコを煮詰めブドウ果汁で香りづけしたもの)とバルサミコです。容器の形状、ラベルの文字やデザインなどからクラフト感が漂うパッケージとなっています。特に、レトロな形状のガラス瓶を使用することで本物感が際立ちます。また、グレーズのように、文字とイラストをレトロなデザインで描くことでもクラフト感が引き立ちます。

ヴィンテージ感のあるプレミアム調味料
アメリカではこれまでも周期的にヴィンテージスタイルが注目されてきましたが、近年、特に若い世代を中心にヴィンテージブームがかつてないほど盛り上がりを見せています。ファッションだけにとどまらず、ヴィンテージデザインはさまざまな分野において店舗、商品、商品パッケージ、さらにミュージアムにも及び、人気を集めています。

こうしたヴィンテージデザインの流行の背景には、さまざまな要因があります。まずは、自分らしさの個性を表現する手段としてヴィンテージアイテムを持つ人が増えていること、そして、リユースやアップサイクルといったサステナブルなライフスタイルに関心を持つ人々が増えていること、またハンドクラフトを楽しむクラフトブームなどです。加えて、映画やNetflixなどの映像作品をはじめノスタルジーを誘うビジュアルコンテンツの増加が、特に若い世代の感性に影響を与えています。魅力的なヴィンテージスタイルは、SNSなどでも拡散されやすく話題になりやすいという特徴もあります。

ビジネスの観点から見ても中古品の販売は利益率が高く、リメイクや仕入れの工夫、ブランディングなど、クリエイティブな要素が活かせることもあり増加しています。また、さまざまな分野のブランドや商品においても個性的なヴィンテージデザインを用いることでターゲット層の注目を集め価値を高めることができるため、ヴィンテージ好きをターゲットとした面白いアイデアやデザインの活用は、今後もさらに広がっていくと思われます。

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