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個性派ロースタリーの宝庫。アメリカの多様なコーヒー事情。

アメリカは世界で最もコーヒーを消費する国の一つであり、実際に暮らしてみると、さまざまな場面でそれを実感します。カフェのカップの大きさもさることながら、スーパーマーケットのコーヒー売り場は日本とは比較にならないほど量も種類も豊富です。

アメリカ人はとにかくコーヒーが大好きです。大衆ブランドからローカルロースターまでさまざまなフレーバーや焙煎の豆が所狭しと並び、感覚としては、日本のスーパーでよく見る量の5倍はあると感じます。それぞれパッケージやストーリー性までしっかり作り込まれており、どれも個性派揃いです。今回はその中でも、特に個性的なロースタリーブランドをご紹介します。

アメリカのスーパーのコーヒー売り場

不機嫌な人もハッピーに「Cafe Grumpy」

Grumpyは「不機嫌な」という意味で、「Cafe Grumpy」はそのネーミングもパッケージも遊び心が満載です。ブルックリンの自社ロースタリーの他に、ニューヨーク市内にもカフェがいくつかあり、遠目からでもこの無骨で可愛らしい顔のロゴマークが目立ちます。名前の由来は、不機嫌な気分でもカフェでコーヒーを飲んで、ハッピーな気持ちで帰ってほしい!という意味を込めているのだそうです。また、ロゴのキャラクターはコーヒー豆の見た目から着想を得たそうです。

Cafe Grumpyのパッケージ

ニューヨークの日常に寄り添う老舗「Irving Farm New York Coffee」

「Irving Farm New York Coffee」は1996年にマンハッタンにカフェをオープンし、その後ロースタリーをニューヨークの北部のアップステートに設立しました。New York Magazineでベストコーヒーに選ばれるなど、バランスのよいブレンドで飲みやすいと評判です。今ではニューヨーク市内の多くのカフェに豆を卸している大人気の老舗です。パッケージはまさにニューヨークらしいポップでボールドなデザインです。

Irving Farm New York Coffeeのパッケージ

ベトナムコーヒーの魅力をアメリカに「Nguyen Coffee Supply」

アメリカ初のベトナム産スペシャルティコーヒーである「Nguyen Coffee Supply」は、ベトナム系アメリカ人のサラ・グエンが創業したブランドです。ベトナムの農家から直接豆を仕入れ、ブルックリンで焙煎しています。ベトナムコーヒーの特徴である力強くカフェイン含有量が多いロブスタ豆を使用しており、しっかりとしたコクや苦味が特徴的なコーヒーです。英語のパッケージが並ぶ棚の中で、ベトナムコーヒーの自信を感じさせるようなNGUYENというフォントが一際目を惹きます。

Nguyen Coffee Supplyのパッケージ

高品質な豆と洗練されたパッケージが光る「Counter Culture Coffee」

ノースカロライナ州発の大人気ブランドで、品質とサステナビリティにこだわったスペシャルティコーヒーを提供しています。パッケージはポップでありながらも落ち着いた品のあるデザインで、色味がとても綺麗です。商品名も、3次元的で立体的な味覚のHologram、確保するのがとても困難な豆であるという意味のBig Trouble、強い刺激ではなくゆったりと楽しめるカフェインレスのSlow Motionなど、ネーミングセンスも抜群です。

Counter Culture Coffeeのパッケージ

カリフォルニアの風を感じる「Groundwork Coffee」

ロサンゼルス発の老舗で、オーガニックやフェアトレードを強く意識したブランドです。環境意識の高さとクラフトマンシップが伝わる、まさにウェルネス系のロースタリーです。パッケージデザインは、土から花が芽生えるイメージとともに、人間と環境の関わりや、生産者としての責任を感じさせるものにしたそうです。カラーパレットもアースカラーで、カリフォルニアの風景を彷彿とさせます。

Groundwork Coffeeのパッケージ

動物のイラストとパステルカラーが可愛い「Chamberlain Coffee」

YouTuber・エマ・チェンバレンのブランドで、スーパーでは最近取り扱いが始まったようです。かっこいいイメージばかりが先行するアメリカのコーヒーパッケージ界で、動物のイラストが描かれたフェミニンなパッケージの可愛さは圧倒的です。各ブレンドにはそれぞれ違った動物のキャラクターがあしらわれ、ネーミングも「Social Dogブレンド」などキャッチーでSNSを意識したブランディングです。

Chamberlain Coffeeのパッケージ

サードウェーブのパイオニア「Stumptown Coffee Roasters」

ポートランド発の有名ロースタリーで、浅煎りコーヒーの魅力を広めた立役者です。今ではニューヨーク市内の多くのカフェで使用されています。特に看板ブレンド「ヘアベンダー」は、フルーティーさと深みが絶妙で大人気のブレンドです。パッケージはレトロ感が漂うビンテージ風のデザインで、ポートランドの自由でボヘミアンな雰囲気を反映したそうです。

Stumptown Coffee Roastersのパッケージ

高カフェインで眠気に真っ向勝負する「Death Wish Coffee」

"世界で一番強いコーヒー"をキャッチコピーに展開する超高カフェインのブランドです。カフェイン含有量は通常のコーヒーの約2倍もあるそうです。黒いパッケージにドクロのロゴという強烈な見た目ですが、オーガニックとフェアトレードにこだわるという一面も。深煎りのビターさとカフェイン量の多さ、また多くのコーヒーパッケージがシンプルさやナチュラルさを売りにしてる中で、あえてアグレッシブなイメージで打ち出している異端児的な存在です。

Death Wish Coffeeのパッケージ

甘い"デザートコーヒー"として人気の「Copper Cow Coffee」

こちらもベトナムコーヒーのブランドですが、シナモンをブレンドしたものやデザート的な甘めのコーヒーが人気です。ベトナムコーヒーを家庭で気軽に再現できるように、甘い練乳を加えたラテも販売しています。パッケージデザインはブランド名Copper Cowにちなみ、牛の模様をあしらい、ポップな色味とさまざまな書体を使用することで、遊び心があり明るいデザインになっています。

Copper Cow Coffeeのパッケージ

北欧風だけどブルックリン発のロースター「OSLO Coffee Roasters」

一見ノルウェーの名前でパッケージデザインも北欧っぽいのですが、実際はニューヨーク発のロースタリーです。創業者の家族がノルウェー出身であったことから、北欧風の名前をつけたとのことです。小規模で丁寧に焙煎されたスペシャルティコーヒーを提供していることから、デザインもそういったクラフトマンシップや手作り感を感じさせる紙素材を使用したパッケージです。

OSLO Coffee Roastersのパッケージ

おわりに

ニューヨークには日本のコンビニのように至る所にカフェがあります。おしゃれなカフェもたくさんありますが、その多くは店内のBGMが大きすぎたり、話し声がうるさすぎたり、あるいはパソコンを持ち込んだたくさんの顧客で完全にシェアオフィス化しているカフェであったりと(日本のスタバの比ではない量です)、ほっこりとした日本の喫茶店が好きな私としては、なかなかこれといったカフェに巡り合えずにいます。

基本的にニューヨークのカフェはチェーン店が主流で、職人気質のあるマスターがこだわりを持って個人で経営しているカフェがとても少ないのです。家賃や物価の高さも影響しているのでしょう。一方で、こういったロースタリーのユニークな個性や、コーヒーにも移民文化や環境意識など、多様な価値観を感じられるのもアメリカならではです。こういったこだわりに触れると、またアメリカのコーヒー文化の良さも感じるのです。

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