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商用化に進む成型繊維ボトル

紙は持続可能性の観点から人気の素材ですが、米国の小売店「ターゲット」やコンビニエンスストアの「セブンイレブン」でプライベートブランドのワインやスピリッツにおいて紙ボトルが商用化されています。飲料はガラス瓶やペットボトルが主要な素材として定着しており、牛乳や日本酒の容器としては紙パックが定着していますが、ワインやスピリッツにおいて紙ボトルが消費者に受け入れられるか、正念場を迎えています。今回は試験段階から小売段階へ移行した紙ボトルについてご紹介します。

ハーフシェル・ウォッカやディアジオ、アブソルート、ペプシコなど、米国の洋酒業界をはじめ、成形繊維包装の導入が世界中で増加しています。
北米では、多くのクラフト蒸留所が需要拡大に苦戦する中、フロリダ州の「ハーフシェル・ウォッカ」は、カリフォルニア州やコロラド州など全米各地への紙ボトルのウォッカの流通拡大に成功しています。飲料業界の多くの企業にとって、紙ボトルは長年の課題でした。従来の容器に比べて、紙ボトルは持続可能性において大きな利点があります。ガラスボトルははるかに重いため、輸送時の二酸化炭素排出量が増加します。一方、プラスチックボトルによる環境汚染は、多くの消費者にとって懸念事項となっていました。

ここ数年、さまざまな大手飲料ブランドが紙ボトルの導入を宣言してきましたが、ほとんどの商品は試作・試験段階にとどまっており、店頭に並ぶことはありませんでした。
ハーフシェルの成功は画期的です。全国のターゲットやセブンイレブンの棚にも、紙製のワインボトルが並び始めました。

成形繊維から作られたさまざまな種類の紙ボトルが加わり、形状、サイズ、デザインに関して多様性が広がっています。

世界初の市場対応型紙ボトルとキャップ

「ブルー・オーシャン・クロージャーズ」と「パボコ社」の共同開発による持続可能な紙ボトルと繊維ベースのキャップの総重量は16グラム未満で、キャップのHDPEバリアの重量は2グラム未満です。パッケージは紙包装としてリサイクル可能です。生産は2025年からスタートしました。

持続可能なピルボトルがブランドアイデンティティを強化

医薬品容器メーカーの「Parcel Health」は、錠剤、タブレット、カプセル用の従来のプラスチック製薬瓶に代わる、環境に優しい代替品を生み出しました。
従来のポリプロピレン製のプラスチック製ピルボトルは、2025年に約50億個生産されていますが、そのほとんどはカーブサイドリサイクルプログラムで、受け入れられていません。

P&G、液体洗濯用品に紙ボトルをテスト

家庭用品大手「P&G」は「パボコ社」と提携し、レノア液体柔軟剤用の紙ボトルを開発し、欧州で試験販売する予定です。P&Gのファブリック&ホームケア事業部門は、レノア液体柔軟剤に紙ボトルを採用することで、持続可能なパッケージ計画を推進しています。

この製品は、P&Gの洗濯用品「レノア」シリーズの1つで、ヨーロッパとイギリスで販売されています。P&Gはパボコ社と共同で、この柔軟剤用の紙ボトルの製造を目指すパイロットプロジェクトに取り組んでいます。紙ボトルの最初の小売試験は、オランダのスーパーマーケット「アルバート・ハイン」で実施される予定で、P&Gは小売業者およびオランダの消費者と協力し、ボトルに関する市場フィードバックを収集します。

日本でもコンバーター各社が紙ボトルに挑戦しています。

紙製ボトルēfbottle™

「DNP」は「富士特殊紙業株式会社」、「有限会社クレエ」の3社共同で、分別廃棄可能でリサイクル性の高い紙製ボトル「ēfbottle™」(富士特殊紙業株式会社と有限会社クレエが商標出願中)の開発を発表しました。

同ボトルは、耐水紙の「外装」と、長期保存可能な「口栓付きパウチ」で構成されており、紙素材とプラスチック素材を分別廃棄できるため、リサイクルしやすい構造になっています。口栓付きパウチはモノマテリアルで、プラスチック素材のリサイクル性向上にも繋がります。PETボトルと比較して、約30%のプラスチック使用量を削減でき、製造時のエネルギー消費量と温室効果ガス排出量も削減できます。ガラス瓶と比べて大幅に軽量化できるため、製品輸送時の温室効果ガス排出量削減にも繋がります。

紙製でありながらガラス瓶特有の曲線的形状を実現し、ボトル全面に印刷できるため店頭でのアピール性も高く、デジタル技術を活かした印刷によってさまざまな用途に活用でき、日本酒や洋酒などへの展開を予定しています。

キューブパック

カートカンで小容量紙缶を普及させた「TOPPAN」の「キューブパック」は水回りに強く、ポンプが使える紙製ボトルです。一般的な同容量のプラスチックボトルと比較して、プラスチック使用量を55%削減しています。これまで水回りの容器といえばプラスチックが主流でしたが、キューブパックを利用することでプラスチックの代替素材として紙を利用できます。
シャンプーや化粧品など、さまざまな用途で利用でき、ポンプを取り外して利用する「付け替えボトル」としても利用できます。印刷にも対応しているため、パッケージのデザイン性を活かすこともできます。

NSATOM容器

「NSATOM」は、固形物、長繊維、高粘度な内容物の充填に対応できる、新しいコンセプトの無菌充填紙容器です。ペットボトルと比べて約70%のプラスチックを削減できます。スムージー、ジュース、ドレッシングなど粘度の高い飲料や固形物入り飲料にも対応し、人間工学に基づいた使いやすい紙容器です。課題としては製造時の水の使用量・エネルギー消費が多いことと高コストであることが挙げられます。

まとめ

環境意識の高まりとともに、紙製ボトルは「選ばれる容器」へと進化中です。既に日本で定着している小容量紙製飲料容器カートカン同様、成型紙製ボトルが商品化・定着するのも近いでしょう。

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