ニューヨークは、世界各国B級グルメから高級レストランまで、幅広い選択肢のグルメが楽しめる街です。近年、そんなニューヨークで、様々なストリートフードイベントや便利なフードデリバリーアプリの浸透などを背景に、人気になっているのが、時間をかけずにささっと食べられる、安くて美味しいテイクアウトフードです。激戦のカジュアルグルメの世界で少しでも抜き出ようと、クリエイティブで遊び心のあるプレゼンテーションを重視したインスタ映えフードが増えており、最近では、メインの食べ物そのものに絶妙にコーディネートするようにデザインされた個性的なパッケージを多く見かけます。今回は、ニューヨークで見つけた面白い工夫がこらされている印象的なオシャレで機能的なテイクアウト用グルメパッケージを紹介します。
熱々フードが入る卵ケースのような紙製パッケージ
世界中のグルメが楽しめるニューヨークでは、一年中、大小様々なストリートフードイベントが開催されています。そんなイベントの一つで見かけたのが、アランチーニのお店です。ライスコロッケとも呼ばれるアランチーニは、イタリアのシチリア島発祥で、リゾット風のライスボールをフライにした食べ物です。通常のアランチーニは、もう少し大きなサイズで、種類は1、2種類、ナプキンで包んで紙袋にポンと入れて渡される感じですが、こちらのお店では、小さめのサイズで、典型的な味からひねりをきかせた味を取り揃え、スパイシーなものから甘いチョコレートの入ったものまで全部で6種類の味が販売されています。
セットで購入する場合は、こちらの目を引くオシャレなパッケージに入れてもらえるということもあり、6個買いで色々な種類を試してみる人も多くいました。ストリートフェスティバルの会場で食べていると何人もの人から、それは何?どこで売っているの?と声をかけられましたが、思わず何が入っているのか気になってしまう好奇心が掻き立てられるパッケージとなっています。
スイーツを際立たせるお洒落パッケージ
次も丸い形のストリートフードですが、今度はスイーツ系です。DŌxBig Mozz というこちらの揚げドーナツは、ニューヨークの有名なフードイベント、ブルックリン発のスモーガスバーグから生まれました。柔らかなクッキードウの専門店 DŌ とモッツァレラスティックフライの専門店 Big Mozz がコラボし、誕生した特別メニューです。スモーガスバーグは、様々なインスタ映えのオシャレフードが登場するニューヨークのグルメの流行を生み出す最新スポットでもあるのですが、そんなフードイベントならではの考え抜かれた目を引く、オシャレなパッケージとなっています。
コラボされた2社の名前とロゴの入ったピンクのパッケージは目を引くデザインなだけでなく機能的でもあります。均一のサイズに揚げられた、丸い揚げドーナツを穴に置くことによって、型崩れを防ぎ、均一に粉砂糖をかけることができ、さらに白とピンクと茶色というカラーコーディネートができるため、洗練された見た目になります。この時の揚げドーナツはチョコレート色でしたが、これをカラフルな他の色のドーナツに変えたりなどして、色遊びができるようなパッケージでもあります。ピンクのパッケージはインパクトが強く、まさにインスタ映えにぴったりで、美味しいスイーツを際立たせてくれるパッケージとなっています。
珍しいテイクアウトパスタのパッケージ
パスタの食べ歩きというのは、かなり珍しいと思いますが、それを形にした面白いテイクアウトパスタを提供するお店がニューヨークにあります。実はこのテイクアウトパスタのお店のすぐお隣では普通にレストランも営業しているのですが、仕掛け人はSpaghetti Incidentというパスタ専門店です。テイクアウトのお店では、この円錐型のパッケージに入れてパスタが提供されますが、あえてこの面白いパッケージで食べたくて入ってくるお客さんもいます。テイクアウトしていく人が多いですが、イートインもできるようになっており、店内には窓側に簡単なカウンター席があり、その席のテーブルにはパスタを置けるように穴が開いていたり、パスタを置ける台が置かれていたりします。パスタを購入しに来て、お店の前で写真を撮っている女性客もおり、いわゆるインスタ映えフードの一種として受け入れられています。
麺類のテイクアウトというと、気密性の高いプラスチックのパッケージが定番ですが、プラスチックを使用せずに紙素材のパッケージで、片手に持って歩きながらでもお洒落に食べられるパスタが実現されています。円錐形の紙のパッケージにカルボナーラパスタが入っています。この時はソースをたっぷりとサービスしてくれたようで、まるでスープのような見た目になっていますが、通常は綺麗にパスタに絡んでいます。こんなにたっぷりとソースが入った状態でも紙のパッケージには決してしみてきませんし、形も崩れてきません。
円錐形のパッケージは持ちにくいような印象がありますが、一工夫されていて、厚紙のスリーブがついています。このスリーブのおかげで、想像以上にしっかりと安定した持ち心地を実現できていて、さらに食べ物の熱が直接伝わってこないので、熱い出来立てのパスタを入れても大丈夫なようになっています。非常にシンプルに見えるパッケージですが、計算された安定感のある機能的なパッケージです。
テイクアウトのグルメフードというと「安くて美味しい」が求められるため、食べ物のクオリティにのみコストをかけ、パッケージは二の次でコストが安い既成のものを使ってしまいがちですが、このパッケージにクリエイティブな一手間を加えることで、楽しみも増し、特別感のあるフードとして受け入れられるようになります。今回紹介した3店のフードは、10ドル~12ドルという価格帯のもので、テイクアウトとしては少し高めの値段設定となっていますが、ニューヨークでは、リーズナブルな値段よりも他とは違う特別な体験を提供してくれるクリエイティビティがより評価されます。