ニューヨークではパンデミックを経て、食品分野のトレンドにも大きな変化が見られます。コロナ禍では外食できない日々が続き、自宅で食事をしたり外でピクニックしたりする機会が増えましたが、そんな変化に伴い身近なスーパーでも色々な変化が見られるようになっています。スーパーでは以前にも増して様々なローカルブランドの商品が並ぶようになり、ニューヨークの人気グルメ店の商品が冷凍食品として登場し、お店の味を手軽に自宅でも楽しむことができるようになっています。
また健康志向の高まりにより、ノンアルコールドリンクを楽しむスタイルも流行しています。パーティやピクニック用ドリンクとしてモクテルや発酵飲料など、コンセプトとパッケージに工夫を凝らしたプレミアム感のある多種多様なノンアルコールドリンクが色々なブランドから発売されています。ニューヨークのスーパーで見られる最近の飲食商品のトレンドについて紹介します。
人気ローカルブランドによるプレミアム冷凍食品
アメリカのスーパーの冷凍食品コーナーはとても広く、数えきれないほどの商品に囲まれています。今まではアメリカの冷凍食品といえばお決まりのものばかりで、代わり映えしない売り場だったのですが、最近では変化が見られるようになって来ました。
アメリカのスーパーの冷凍食品コーナーにも面白い工夫が見られるようになったのです。ニューヨークに最近オープンしたばかりのお店、アメリカの大型スーパーマーケットWholefoodsの新しいコンセプトのお店NoMad店では冷凍食品コーナーの冷凍庫の扉の前にローカルブランドの紹介が貼られるようになりました。
お買い物中思わず引き付けられる魅力的なPRです。ニューヨーカーなら誰もが一度は聞いたことがあるニューヨークのスモールビジネスのお店と商品の紹介です。ブランド、創業者、拠点などがコンパクトに紹介されています。
実店舗での販売が大幅に減少したパンデミック中に、ニューヨークの様々なグルメ店が冷凍食品の分野に進出しました。ニューヨークにはローカルビジネスを応援したいという人々も多く、大企業による大量生産の商品よりも値段が高くても材料と味にこだわりのあるローカルブランドの商品を購入したいという需要があります。
サプライチェーンの問題が起こったとしても、スーパーの近くで仕入れることができるローカル産の商品は強いです。こちらのお店ではそんなローカルブランドを積極的に応援しています。
ニューヨークのローカルブランドの中でも老舗のお店で全米に展開するほど有名な商品となっているブランドがこちらです。
RAO'S はニューヨークの老舗のイタリアレストランですが、コロナ禍のかなり前から食品分野に進出し、お店の人気のペンネアラウォッカをはじめパスタの冷凍食品やパスタソースをスーパーに展開しています。イタリア系プレミアム食品ブランドとして全米で知られており、パンデミック中に冷凍食品に新規参入したお店にとっては先輩格のブランドです。
パンデミック中にはそんな RAO'S に続けとニューヨークの多くのグルメ店が冷凍食品に参入するようになり、利便性に加え自宅などで手軽に贅沢感のある美味しい食事を楽しむことができるようになっています。
アメリカで最もお馴染みの手軽な食べ物の一つが、ピザです。街のあちらこちらにピザ屋さんがある他、冷凍食品にも様々なブランドがあります。ニューヨークで人気のある生地がとても薄いニューヨーク風ピザは、以前は冷凍食品の商品としてはあまり見かけませんでしたが、今ではローカルの専門店の商品が並び自宅でも外食気分のピザを楽しむことができるようになっています。
冷凍ピザと言えば通常は箱に入った、丸い形のホールピザが販売されていますがこちらのブルックリンのピザ屋さんは、店頭で購入するようなスライスのピザを冷凍で販売しています。薄焼きのピザそのものがよく見える透明のパッケージ、そして手書き風のメッセージと、まるで絵にかいたようなニューヨークピザを前面に押し出したパッケージで魅力が伝わってきます。
ヘルシー志向のニューヨークで人気のお店であるbrodo は、自然素材の原材料にこだわって作る人気のスープ専門店です。コーヒーの代わりに栄養価の高いスープをというコンセプトで、濃厚スープではなく牛や鳥の骨を野菜と共に長時間煮込んださらりと飲めるスープで食材本来の出汁の味を楽しむことができます。そんなスープ専門店の商品も冷凍食品コーナーに並ぶようになりました。パッケージはまるで高級アイスクリームのようなプレミアム感のあるパッケージとなっています。
アイスクリームのパッケージと違うところは蓋の部分が厳重に開かない仕組みがされているところです。蓋の"Break"部分を折らない限り液体が漏れてこないようになっています。
ピザと並ぶニューヨークの代表的な食べ物と言えばベーグルです。ベーグルもニューヨークで人気のベーグル屋さんの商品が冷凍食品になって登場しています。
パンデミック中にお店に買いにいけないときでも、自宅で気軽にお気に入りのお店の味を楽しめる、こういったローカルの冷凍食品が色々でてきたおかげで冷凍食品コーナーが面白い場所になりました。
アメリカの定番ディッシュの1つマック&チーズも冷凍食品で人気があります。こちらはスーパーから徒歩数分の同エリアにニューヨーク店を構える、シアトル発のチーズショップBeecher's の商品です。お店の看板商品のマカロニチーズがプレミアム冷凍食品として登場し、自宅で手軽にチーズ専門店の本格的な味が楽しめるようになりました。
冷凍食品はメインディッシュだけでなく、スイーツも充実しています。
ニューヨークといったらニューヨークチーズケーキですが、最近ニューヨークのスーパーによく並んでいるのは、ちょっと変わったチーズケーキです。
通常のニューヨークチーズケーキは本来クリームチーズをベースに作られたものですが、最近よく売られているものは特殊なチーズケーキの方です。実はこちらのチーズケーキNew York Cheese Cakeではなく、NEW YORK CHEEZECAKE と言う名称で、クリームチーズなどの乳製品が一切使われていない新しいタイプのチーズケーキなのです。
アメリカでは最近牛乳ではなく、代替ミルクを好む人が増えています。
代替ミルクは、オーツやアーモンド、ココナッツ、ソイなど色々ありますが、この代替ミルク市場は急拡大中で生クリームやスイーツなどの乳製品の代替商品も色々登場しています。
いつも売れ切れ必須の人気の冷凍スイーツと言ったらTrader Joe'sの冷凍スイーツ、マカロンです。マカロンと言えばフランスの代表的なスイーツで、ニューヨークでも人気があり、専門店も色々あります。通常は賞味期限が短く、購入したらすぐ食べないといけないスイーツなのですが、冷凍食品なのでいつでも好きな時に食べることができます。
味違い・色違いの季節限定版が販売されたときはまとめ買いする人も現れるほどの人気ぶりです。
アメリカの代表的なお菓子チョコレートブラウニーにアイスクリームを挟んだスイーツというのも、意外と今までありそうでなかった商品です。
甘いチョコレートブラウニーに、バニラアイスクリームを合わせず、苦みのあるコーヒーのアイスクリームを掛け合わせたところがとても上手な大人のスイーツです。
人気急上昇中のノンアルコールドリンクの進化
アメリカのドリンクと言うと、以前までは選択肢が少なく、大手ブランドのビールやソーダが中心でしたが、近年多種多様で個性豊かなクラフトビールをはじめ、クリエイティブなドリンクが人気になっています。年々ドリンクブランドが増加の傾向にあり、商品の選択肢が増え目覚ましい進化を遂げています。
パンデミックを経てそんな飲料系で大きく存在感を増しているのが、ノンアルコールドリンクで、各種マーケットリサーチでも今後の継続的な大きな成長が予想されています。健康志向の高まりに加え、パーティやピクニックなどでアルコールドリンクを好まない人も楽しめる、プレミアム感のあるノンアルコールドリンクが数多く登場しています。ノンアルコールドリンクのブランドでは、コンセプトとパッケージ、マーケティングなど、クリエイティブの要素が重要となっており、ノンアルコールドリンクに特化したローカルのスモールビジネスが数多く登場しています。
スーパーでよく見かけるドリンクも最近ではヘルシー志向の商品が大変増えています。その中の一つが発酵ドリンクです。プロバイオティクスドリンクや、コンブチャカクテルなどがたくさん並ぶようになりました。紅茶キノコを発酵させて作られるコンブチャは、以前からアメリカではヘルシードリンクとして存在していましたが、最近ではフルーツカクテルになったものや、モスコミュールミックスとして、カクテルベースとして使えるものなど色々な形で登場しています。また、オーガニックのハーブティー、ルイボスティーやハイビスカスティー、ローズヒップなどを原材料とし、フルーツなどとカクテルしたティーベースのドリンクも増えています。
この他テパチェ(Tepache) と呼ばれる、パイナップルの皮に水と糖分を加え発酵させたメキシコで人気の発酵飲料もスーパーでよく見かけるようになっており、海外からのアメリカ市場への参入もあり、ヘルシードリンク市場が拡大していることが感じられます。
日常の飲み物だけでなくパーティや飲み会など人が集まる会で好まれるドリンクも最近は趣向が変わってきています。
ヘルシー志向の人々が増えているアメリカでは、アルコールを飲まないという人が若い世代を中心にとても増えています。どんな時代もお酒が苦手な人、飲めない人というのはいると思いますが今の世代の飲まない趣向というのは、飲めるけど、飲まない、という本人の意思によることが多いのが特徴です。
そんなノンアルコールのブーム到来で、ノンアルコールワインやビールの他、カクテルのように楽しめるプレミアム感のあるノンアルコールのミックスドリンク、モクテル(Mocktail) の人気が高まっており、ニューヨークではノンアルコールドリンク専門の販売店や、お洒落なノンアルコールカクテルなどを専門とするノンアルコールバーなど色々登場しています。
ノンアルコールドリンクの専門店には、まるでワインやウィスキーのようなボトルが並び、普通に見ると、普通のワインショップのように見えます。全般的にノンアルコールドリンクは、新しいブランドが多くお洒落なラベルやボトルなどパッケージのデザインを明るくお洒落なイメージにするこだわりが見られます。
若い世代に人気があり、アルコールが入っていないドリンクということで、お財布にも優しいと思われるかもしれませんが、実際はアルコール入りのドリンクとあまり変わらず、中にはむしろ高いものもあるので、特別感のあるプレミアムドリンクです。
ノンアルコールドリンクのブランドはパーティのスポンサーになり、ドリンクを提供するマーケティング活動などもよく行っています。
ノンアルコールのカクテル(モクテル)の原材料は、パンチのある味にするためによくジンジャーが使われています。それに華やかな味と香りを出すために、ゆずやレモン、オレンジなどのシトラス系フルーツや、エルダーフラワー、ハイビスカス、ハーブ、ハニーなどがよく使われています。
砂糖入りの飲み物を好まない人が増えているのでどれもローカロリーのさっぱりとした飲み口の炭酸ドリンクに仕上げられています。
このようにアメリカでは、冷凍食品やドリンクなど今まであまり変化がなかった飲食の分野でも大きな変化が生まれ、スーパーにもたくさんの個性的な商品が登場しています。
一人一人の価値観も多様化し、ローカルブランドを大切にし良質な素材を使いこだわりを持って作られる商品に価値を見出し購入する人が増えています。
ヘルシー志向に加え、それぞれの嗜好を大切にしよう、という意識の向上により今まで当たり前のように振る舞われていたアルコールも見直され、それぞれの人の好みに応じアルコールの有無に関わらず、プレミアム感のあるドリンクで体験を楽しむようになるなど、人々のライフスタイルの変化に応じて身近な食品やドリンクもどんどん進化しています。
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