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アメリカのドラッグストアの多様な商品とパッケージのトレンド

商品の集合

アメリカでは、パンデミックを経て、予防や体調管理、栄養バランスや免疫の強化など人々の健康意識が高まり、様々な健康関連の商品が登場しています。そんな商品の宝庫と言えるのが、パンデミックにより急増したドラッグストアです。アメリカのドラッグストアは処方箋の調剤を行う他、ワクチン接種なども行っており、より身近な存在になりました。そんな客層の広がりや人々の健康意識の変化に応じて、ドラッグストアでは品揃えが充実し、ジェネリック医薬品をはじめ様々なプライベートブランドの商品に加え、プロポリスやハーブなどの自然の恵みを生かした商品、子供用から大人用、男性・女性用までそれぞれのターゲット層に合わせカスタマイズしたサプリメントなど多様な商品が販売されています。ドラッグストアで見かけたアメリカの市販薬や健康関連商品のトレンドを紹介します。

プライベートブランドのジェネリック医薬品

アメリカには、WalgreensやCVSなどの大手薬局チェーン店や、WalmartやTargetなどの総合スーパー内の薬局チェーン店、そして地元に密着した独立系の薬局などいくつかのタイプのドラッグストアがありますが、近年M&Aが盛んで、大手ドラッグストアの存在感が増しています。そんなスケールメリットが働く大手ドラッグストアチェーンや総合スーパーの薬局でお馴染みとなっているのが、お店にとっては利益率が高く、消費者にとってはお得に購入できるプライベートブランドの商品です。

アメリカのドラッグストアでは、処方箋がなくても購入できる即効性の高い市販薬が充実しています。近年、大手ドラッグストアでは、よく知られるブランド医薬品ばかりではなく、プライベートブランドのジェネリック医薬品が増えています。プライベートブランドのジェネリック医薬品は、それぞれどのオリジナルブランドの薬に該当するのかが明確に表示されており、オリジナルよりも安価で販売されています。

CVSストアの内装

風邪薬と言えば、VICKSが良く知られていますが、大手ドラッグストアでは、そんなVICKSの薬の近くには、プライベートブランドのジェネリック医薬品が置かれています。左側がオリジナルで、右側がプライベートブランドの薬ですが、パッケージのデザインや配色も類似しています。こちらのプライベートブランド医薬品の場合は、"Compare to active ingredients in Vicks NyQuil Severe Cold & Flu" という表示があるように、パッケージには、明確にどのブランドのどの商品に該当する商品であるかが表記されています。

どちらもソフトジェルの薬です。以前は錠剤タイプの薬も多かったのですが、最近は、飲みやすさと効きやすさの観点から、このソフトジェルタイプの薬が人気があります。プライベートブランド商品はパッケージが似ているだけでなく、中身の薬の配合もオリジナルブランドとほぼ同じで瓜二つとなっています。

風邪薬のパッケージ

アメリカでは、風邪薬は、昼用と夜用の二種類が一つのパッケージになってよく販売されています。

こちらの風邪薬では、眠くなりにくい昼用と眠くなる成分が入った夜用の2種類の薬がオレンジと青で色分けされ、商品の外箱にもわかりやすく表示されています。

パッケージには、FDA(アメリカ食品医薬品局)のルールにより、用途や使用方法、薬の成分、有効期限、注意などが必ず明記されています。有効期限は、箱だけでなく、薬の包装シートの一粒一粒の部分にも印字されており、箱から出した後でも分かりやすいようになっています。

多様化するサプリメント

アメリカはサプリメント大国で、以前からサプリメントの種類が非常に多く、愛用者がとても多いです。そんなサプリメントにも、新しいブランドや商品が色々登場しています。最近よく見かけるのが、ターゲット層を絞ってカスタマイズした商品です。こちらは、2013年に創業し、2019年からUnilever傘下となっている新ブランド、Ollyのマルチビタミンのサプリメントです。この商品は女性用ですが、男性用、子供用、ティーンエイジャー用など、性別や年齢に合わせて配合が異なる、カスタマイズした商品を提供しています。サプリメントは、マルチビタミン以外にも、例えば、睡眠のためのサプリメントなど色々なものがあり、それらの子供用の商品もあります。

以前は、サプリメントと言えば、錠剤タイプが主流でしたが、最近は、グミやソフトジェルなど様々なタイプの商品が登場しています。パーケージも、薬風のデザインのものだけでなく、ポップな感じの遊び心のある楽しいパッケージも見かけるようになっています。薬のパッケージと言えば、アメリカでは薬の入れ物の蓋に工夫がされていて、小さな子供が簡単に開けられないようにチャイルド・レジスタンス包装(Child-Resistant Packaging)となっています。グミのサプリメントの入れ物も同様で、蓋を上から下に押しながら回さないと蓋が開かないようになっています。

サプリグミ

子供向けデザイン商品

ドラッグストアでは、子供用の薬などが集められているセクションもあり、可愛らしいデザインの子供向けの商品がよく目に付くようになっています。

以前から可愛いイラスト入りの絆創膏の商品などがありますが、最近は、可愛い絵柄だけでなく、実用性も高い工夫が凝らされた商品も登場しています。例えばこちらのWellyというブランドでは、Human Repair Kit など面白い名称のトラベル用のファーストエイドキットなどを販売しています。手の消毒液と、傷の消毒液、軟膏の薬が1回ずつの使い切りの小分けになっており、絆創膏と一緒にお洒落な薬箱の缶に入っています。色々な形状や可愛いイラストが描かれている絆創膏など中身が違う商品がそれぞれ異なるデザインの缶で販売されていて、商品選びも楽しめるようになっています。

ファーストエイドキット

体に優しい自然派健康商品

ドラッグストアには、即効性の高い薬の他、予防や軽い症状に効く自然派の商品も多く置かれています。最近では、老舗から新ブランドまで世界中の多様な商品を見かけるようになっています。中でもよくあるのが、ハチミツやレモン、ハーブなどといった体に優しい自然派商品です。

こちらは、プロポリスを使用した商品で知られる新ブランド、Beekeeper's Naturals の喉スプレーです。プロポリスはハチの巣から採取されますが、ハチミツではなく、ハチの巣の隙間を埋めるのに使用されている働きバチが集めた樹脂の混合物がプロポリスです。抗菌、抗酸化作用などがあり、古来から健康に良いとされてきました。天然の抗菌・免疫力アップ商品として、喉スプレーや、咳シロップ、のど飴、サプリメントなど、色々な形の商品になっています。また抗酸化作用によるアンチエイジングの効果を期待したスキンケア商品も色々あります。これらの商品は薬系のパッケージデザインとは異なり親しみやすいデザインになっています。

喉スプレー

最近では、のど飴の品揃えも多様になっており世界各国の商品が並んでいます。こちらは、マヌカハニーで知られるニュージーランドのブランド、Wedderspoonののど飴です。マヌカハニーは、ニュージーランドやオーストラリア原産のマヌカの花から採取される、強い抗菌力や抗炎症作用で知られるハチミツです。

マヌカハニーの商品も幅広く、ボトル入りのはちみつの他、1回分づつの使い切りサイズの商品や、マヌカハニー入りのアップルジュース、キャンディ、のどスプレー、のど飴、軟膏、絆創膏まであります。

マヌカハニーキャンディー

信頼性を高める認証マークとQRコード

薬や健康系商品のパッケージには、FDAのルールに従い、使用方法、成分、注意など様々な情報が書かれていますが、最近では、さらに信頼性を高めるべく様々な認証マークも表示されています。また、リサイクルマークも見られ、環境へ配慮したパッケージを使用する商品も増えてきています。さらに詳細な説明をオンラインで提供したり、薬の正当性を示すために、QRコードが印字されている商品も見かけるようになっています。

認証マーク

アメリカではドラッグストアブランドのM&Aが進み、規模の大きなドラッグストアチェーン店では、利益率の高いプライベートブランド商品に注力し、各店舗ではオリジナルの医薬品とそれを模したプライベートブランドのジェネリック医薬品が堂々と隣同士で棚に並ぶという面白い光景が広がっています。

パンデミックや人々の健康志向の高まりによる来客数の増加を背景に、綺麗な内装の新店舗が増え、品揃えも格段によくなって来ています。また従来の薬や健康系商品のイメージを覆すようなお洒落なデザインパッケージの商品や自然派健康商品などが登場したりと商品の多様化が進んでいます。

 

 

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