世界的な独立系飲料ソリューションプロバイダーの「Refresco」が、PEF(ポリエチレンフラノエート:Product Environmental Footprint)製のAlbert Heijn社の新しいフルーツジュースボトルを製造しました。Albert Heijn社はオランダ最大のスーパーマーケットチェーンで、プライベートブランドの商品にPEFパッケージを導入した世界初の企業となりました。
Avantium社のPEFは100%植物由来の完全にリサイクル可能なバイオポリマーで、ボトル、フィルム、繊維など幅広い用途に使用できます。
PEFボトルは、PETボトルと同じ仕組みでリサイクルでき、さらに、生分解性なので、土の中でも分解し、莫大な労力がかかり、その過程でCO2を発生する従来のPETボトルリサイクルシステムに比べて、環境適性にも優れており、コカ・コーラやダノン、カールスバーグなども支援しています。
PEFは、植物由来のFDCA(フランジカルボン酸)から得られる、リサイクル可能な高品質のポリマーで、ボトル、パッケージ、繊維に最適です。また、従来のプラスチックよりも優れた性能と持続可能性を備えています。パッケージとして利用することで、飲料や食品の保存期間を延ばすことができます。
PEFはPETに比べて優れたバリア特性を誇り、PEFの酸素バリアはPETと比較して10倍優れており、ニ酸化炭素バリアは6~10倍で、防水バリアもPETの2倍です。機械的な強度も高いため、より薄いPEFパッケージを製造でき、資源の減少化を実現します。
Avantium社はオランダのエームスデルタ市に世界初の商業プラントを建設しており、このプラントはPEFの生産に必要なFDCA(フランジカルボン酸)を年間5,000トン生産でき、米国化学品メーカーのOligin materials社との技術ライセンスを通じて、FDCAとPEFを年間1万トン生産するプラントに拡大する予定です。

Pilot plant
小売業者も食品包装にPEFを検討中
Avantium社はAlbert Heijn社と共同で、PEFを食品包装などの様々な用途への活用を調査中であり、PEFの用途開発が進めば、パッケージをより持続可能にし、リユース、リフューズ、リサイクルに加えて、化石燃料を使わない素材の活用を実現します。
PEFリサイクルの詳細
Avantium社によればPEFのリサイクルはPETと同じ仕組みで行うことができるため、追加のシステムを開発する必要はありません。また、PEFは光学選別システムによりPETや他のプラスチックと簡単に選別できます。
欧州PETボトルプラットフォームは欧州での単層および多層ボトルにおけるPEFの暫定承認を行い、米国を拠点とするプラスチックリサイクル協会は、2023年6月にプラスチック包装設計におけるリサイクルの可能性に関する重要なガイダンス承認にPEFを含めました。

PEF and FDCA
さらに機械的強度が高いため、包装を薄くすることができ、資源の使用量を削減できます。この環境適正と優れた機能性の強力な組み合わせにより、PEFは次世代のバイオポリマー素材として位置付けられています。
Avantium社のYXYテクノロジーは、植物由来の糖を触媒的にFDCAに変換します。FDCAは、PEFとして知られる次世代ポリマーを製造するための主要成分です。100%植物由来でリサイクル可能なプラスチックであるPEFは、今日の石油由来の包装材料に比べて優れた性能特性を備えています。
革新的なアップサイクルの実現
「Dawn Technology」は、100年の歴史を持つ手法を大幅に改良し、近代化して、森林や農業の残渣などの非食用植物由来原料を工業用糖類に変換します。これらの糖類は、FDCAの製造に使用されます。「Avantium」は、「Dawn Technology」のパイロットプラントで、綿とポリエステルの混紡繊維廃棄物をFDCAの原料として使用することを検討しており、有望な結果が得られています。「Avantium」は、ポリコットン廃棄物の綿部分をグルコースに変換します。残りの材料は、綿を含まないポリエステルであり、化学的にリサイクルできます。
「Dawn Technology」のパイロットプラントでは、綿とポリエステルの混紡繊維廃棄物を原料として使用する研究が行われており、原材料の柔軟性、持続可能性の向上、従来の資源への依存の低減が実証されています。「Dawn Technology」のパイロットバイオ精製所では、エネルギー生成が最大40%向上しました。このリソースの最適化により、全体的なエネルギー使用量とリソース利用率が向上し、プロセスの持続性とコスト効率が向上しています。
ライフサイクルアセスメント
第三者による査読とISO認証を受けたライフサイクル評価では、「Avantium」のPEFにより、500mlのPETボトルのライフサイクル全体でGHG(温室効果ガス)排出量を62%削減しました。バイオベースのボトルの焼却時に発生する排出量は、再生可能な原料の成長中にCO2を除去することで相殺されます。
ビールメーカーのカールスバーグも同社の紙ボトルのバリア層にPEFを活用しています。カールスバーグは、バイオベースで完全にリサイクル可能なビール瓶「ファイバーボトル」を導入しています。「Avantium」と「Carlsberg」は2019年からパートナー関係にあり、Paboco(PaperBottleCompany)およびPaperBottleCommunityとも連携してきました。コカ・コーラもPEFを利用した100%植物由来のボトルのプロトタイプを模索しています。
PEFに加えて、バイオポリマーにはいくつかの種類があります。以下はその中でも注目されているものです。
・ポリ乳酸(PLA)
トウモロコシやサトウキビなどの再生可能資源から作られるバイオポリマーで、プラスチック代替品として注目されています。生分解性があり、環境に優しい特性を持っています。
・ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)
微生物によって生成されるバイオポリマーで、さまざまな用途に利用されています。PHAも生分解性があり、土壌や海洋で分解されるため、環境負荷を抑えることができます。
・セルロースナノファイバー(CNF)
木材などの植物繊維をナノレベルにまで微細化して得られるバイオマス素材で、紙やバイオプラスチックの原料として使われています。セルロースナノファイバーは強度や軽量性を持ち、さまざまな産業での使用が期待されています。
・キチン・キトサン
甲殻類の殻から抽出される天然ポリマーで、医療や食品包装などに利用されています。抗菌性や生分解性があり、環境に優しい素材です。
スウェーデンのグリーンテクノロジー企業「Lignin industries AB」は樹木に多く含まれるリグニンから開発されたバイオベースの素材であるレノール技術の商業化を発表しています。リグニン社は有機材料であるリグニンを「再生可能で循環的な」バイオプラスチックに変換することで、化石燃料ベースのプラスチックへの依存を終わらせるとしています。リグニンは木に含まれる有機ポリマーで水分保持を助け、毒素の侵入を防ぎます。

Lignin
これらのバイオポリマーは、持続可能な材料としての特性が評価されており、さまざまな産業での利用が進んでいます。環境問題への意識の高まりとともに、今後さらに注目される分野です。
パッケージ関係企業やブランドは、化石原料の使用を避けるため、バイオベースのPEFのソリューションに目を向けています。
▼編集部おすすめ記事
消費者と共に環境保護に取り組むアメリカのブランド