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ポルトガルのお酒のラベル:ビール編

屋外で撮影した「サグレス」のビール
パケトラ読者のみなさま、こんにちは。ポルトガル在住の東リカです。
ワインの生産地&消費大国として知られるポルトガルですが、実はビールも大人気です。近年はクラフトビールも登場し、さまざまなパッケージを見かけるようになりました。定番からユニークなものまで、ポルトガルのビールのパッケージをご紹介します。
(前回のワイン編はこちら)

ポルトガルのビール事情

海と青空のお供はキレのあるビール!(筆者撮影)

海と青空のお供はキレのあるビール!(筆者撮影)

ビールはポルトガル人にとって、とても身近な飲み物です。晴れた日には海辺や公園、またカフェやレストランで昼間からビールを楽しんでいる人々の姿を目にします。比較的温暖な気候だけあって、ポルトガルの定番ビールはごくごく飲めるキレの良いラガータイプです。
今回は、ポルトガルの市場の8割を占めると言われる2大ビールブランドに加え、マデイラ島のビールや近年人気の小規模ブランドのビールのパッケージもあわせてご紹介します!

ポルトガルでもっとも歴史のあるビールブランド

ポルトガルの大定番ビール「スーパーボック」(筆者撮影)

ポルトガルの大定番ビール「スーパーボック」(筆者撮影)

まずは、1927年創業の老舗ブランド、「スーパーボック(Super Bock)」です。ポルトガル第2の都市、ポルトの北部で作られていてポルトガルの北部を中心に全国で人気があります。現在は世界50ヶ国以上に輸出もされているそうです。

このブランドのロゴは、赤い円の中に「スーパーボック」の文字が白抜きされたシンプルなものです。瓶ビール、缶ビール、グラスなど全てこのバリエーションで、即座に「スーパーボック」だと分かります。

「スーパーボック」の缶ビール(筆者撮影)

「スーパーボック」の缶ビール(筆者撮影)

オリジナルのピルスナーは赤地の円ですが、スタウト(黒ビール)は黒、ノンアルコールは白に青文字、と直感的に分かる色が採用されています。

高級ラインの「Super Bock Selecção 1927」(筆者撮影)

高級ラインの「Super Bock Selecção 1927」(筆者撮影)

また、逆に「スーパーボック」の商品だとは思わせないビールラインもあります。
厳選された原材料を使用し、小規模なバッチで醸造されるプレミアムビール「セレクション1927(Super Bock Selecção 1927)」のラベルは、おそらく庶民的な「スーパーボック」との差別化を図るために、定番ロゴは黒字で小さく、高級感のあるゴールドで「1927」という数字を目立たせたデザインになっています。こちらもヴァイス、ジャパニーズライスラガー、ダンケルというビールの種類は色で識別できます。

フクロウがデザインされた「スーパーボック」のIPA(筆者撮影)

フクロウがデザインされた「スーパーボック」のIPA(筆者撮影)

また、「スーパーボック」のIPA(India Pale Ale)である「スーパーボック・コルージャ・インディア・ペール・エール(Super Bock Coruja India Pale Ale)」もまずはフクロウが目を惹き、一見、「スーパーボック」だとは分かりにくいデザインです。

こちらは、スモールバッチの「1927」シリーズとは違い、クラフトビールの代表格とも言えるIPAを「より多くの人に楽しんでもらえる」とドライホッピングを採用した大量生産可能なラインです。その甲斐があってか「ポルトガルで最も売れているIPA」だそうです。
ちなみに、コルージャとはポルトガル語でフクロウの意味ですが、それを採用したのは「知識と神秘の象徴であるフクロウのイメージを、私たちのビールに反映させたいと考えたから」だそうです。

「深夜特急」にも登場する定番ビール

「サグレス」のミニボトル(筆者撮影)

「サグレス」のミニボトル(筆者撮影)

「スーパーボック」に並ぶ、もう1つの人気ビールブランドが「サグレス(SAGRES)」です。1993年からサッカーポルトガル代表の公式スポンサーを務めており、スポーツとの結びつきが強いブランドとしても知られています。
沢木耕太郎氏の紀行小説「深夜特急」に著者がこのビールを飲んで「サグレス」という港町を目指す、というシーンがありますが、ビール自体はリスボンの北東部にあるヴィラ・フランカ・デ・シーラ(Vila Franca de Xira)という町で作られているそうです。

盾が描かれた「サグレス」のビール(筆者撮影)

盾が描かれた「サグレス」のビール(筆者撮影)

パッケージにはポルトガルの国旗の色、赤と緑で紋章がデザインされた盾とブランド名、モンドセレクションのメダルがデザインされています。
こちらも遠くからでもすぐに「サグレス」だな、と分かります。

青いタイル柄でポルトガルらしさを打ち出したパッケージ(筆者撮影)

青いタイル柄でポルトガルらしさを打ち出したパッケージ(筆者撮影)

また、新しく「アズレージョ」と呼ばれるポルトガルのタイルをデザインしたパッケージもありました。これは、ポルトガル語で「太陽と海(Sol&Mar)」というラインで、ポルトガルの海塩が使われているそうです。お土産にも喜ばれそうな、大航海時代に重要な役割を果たした「サグレス」にルーツを持つポルトガルらしいビールですね。
(参照:https://www.cervejasagres.pt/)

マデイラ島の人気ビール

ポルトガル領マデイラ島のビール(筆者撮影)

ポルトガル領マデイラ島のビール(筆者撮影)

続いては、ポルトガル本土ではなく、マデイラ島の人気ビール「CORAL(コーラル)」をご紹介します。ラベルには1872年創業とあり、本土のビールメーカーよりも歴史が長いようです。

こちらもシンプルなパッケージです。上の写真はオリジナルのラガー系ビール「コーラル・ブランカ(Coral Branca)」ですが、ラベルの下部には「28」と、獲得したモンドセレクションのメダルの数があしらわれています。南国の島でキリッと冷やして飲むのにぴったりなすっきりとしたビールです。
(参照:https://www.cervejacoral.com/)

個性豊かなクラフトビールのパッケージ

イラストがかわいいリスボンのクラフトビール(筆者撮影)

イラストがかわいいリスボンのクラフトビール(筆者撮影)

ここからは、個性的なクラフトビールのラベルを見ていきましょう。まずは、首都リスボンのクラフトビールを代表するブルワリー「MUSA」です。

「MUSA」のビールとハードサイダー(右端)(筆者撮影)

「MUSA」のビールとハードサイダー(右端)(筆者撮影)

「ボーン・イン・ザ・IPA」(IPA)、「ツイスト&スタウト」(オートスタウト)、「レッド・ツェッペリン」(レッドセッションIPA)といった世界の音楽や文化にインスピレーションを得た遊び心のあるネーミングとポップなラベルが特徴です。
(参照:https://cervejamusa.com/)

「オイタヴァ・コリーナ」のビール(筆者撮影)

「オイタヴァ・コリーナ」のビール(筆者撮影)

また、同じくリスボンの「オイタヴァ・コリーナ(Oitava Colina)」のラベルもイラストがかわいいクラフトビールです。
「オイタヴァ・コリーナ」とは、ポルトガル語で「8つ目の丘」という意味です。「7つの丘の街」と呼ばれるリスボンにちなんだもので、グラサ地区にある醸造所の位置を象徴しているのだそうです。ビールの名前やパッケージデザインもポルトガルの文化や歴史に根ざしていて、ビールをグラサ地区の住民として擬人化したラインがあります。

例えば、写真左のアメリカンペールエール「ジョー・ダ・シルバ(Joe da Silva)」は、アメリカ生活を終えてポルトガルに帰ってきた、「国に残った人よりもポルトガル人らしい」たたき上げの男性という設定です。他にもIPAはビターな女性「Urraca Vendaval」、ポーター(黒ビール)は、定年を過ぎても働くパイプが似合うチャーミングな老人「Zé Arnaldo」といった具合です。
(参照:https://www.oitavacolina.pt/)

「セルベージャ・ハフェイラ」のビール(筆者撮影)

「セルベージャ・ハフェイラ」のビール(筆者撮影)

また、リスボン近郊の世界遺産都市、シントラの外れにあるクラフトビールの醸造所「セルベージャ・ハフェイラ(Cerveja Rafeira)」は菓子職人を祖父にもつ創業者の醸造所で、ビールには珍しい素材を加えたフレイバーで知られています。
犬が描かれたボールドなラベルのシリーズは、バジル入りのブロンドエール、ジャスミンの花を使ったペールエール、ミント入りのスタウト、といった具合です。
(参照:http://www.cervejarafeira.com/)

「ソヴィーナ」のIPA(筆者撮影)

「ソヴィーナ」のIPA(筆者撮影)

最後は、リスボンに次ぐ大都市、ポルトのクラフトビール「ソヴィーナ(Sovina)」。2009年に創業したポルトガルのクラフトビールのパイオニアですが、現在はワインで知られる「エスポラン(Esporão)」グループの傘下になっています。そのため、ぶどう果汁とビールを併せて発酵させるユニークな限定ビールも生産しています。

「ソヴィーナ」のビール(筆者撮影)

「ソヴィーナ」のビール(筆者撮影)

他のクラフトビールと違い、イラストなどはなく、種類ごとに丸の色が違うとだけ、というすっきりとしたパッケージが採用されています。シンプルなデザインながらプレミアム感がありますよね。2021年には、国際デザインコンペ「Graphis Design Awards」を受賞しています。
(参照:https://sovina.pt/)

ポルトガルのビールのパッケージ、いかがだったでしょうか。
次回はリキュールのパッケージを紹介します。

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