パケトラ読者のみなさま、こんにちは。ポルトガル在住の東リカです。
ワイン、ビールとみてきたポルトガルのお酒のパッケージですが、続いてはポルトガルならではのリキュール(果実、香草、薬草などで風味づけをし、さらに甘みなどを加えた蒸留酒)のパッケージをご紹介します!
ポルトガルのリキュール

さくらんぼのリキュール、ジンジーニャ(左)と同店のジンジーニャをベースに常連ピエロ「エドュアルディーノ(Eduardino)」氏が考案した、彼の名前を冠したリキュール(筆者撮影)
古代から薬としてポルトガルの各地で作られてきた長い伝統をもつリキュール。現在も甘くて飲みやすいものを中心に、そのまま食前・食後酒として、またカクテルの材料としても人気を博しています。
各リキュールブランドは、地元の人々はもちろん観光客にもアピールしようと、さまざまなパッケージを生み出しています。
リスボン生まれのさくらんぼ酒「ジンジーニャ」

ジンジーニャ発祥のお店と言われる「ア・ジンジーニャ・エスピニェイラ」のボトル(筆者撮影)
「ジンジャ(Ginja)」もしくは「ジンジーニャ(Ginjinha)」は、ポルトガルの首都リスボンの下町で生まれ、100年以上愛されてきた伝統酒です。ポルトガル語で「ジンジャ」と呼ばれる地元のサワーチェリー「スミミザクラ」を発酵させて作るルビー色のお酒です。

特別感のあるフラスコ型のボトルに入った熟成ジンジーニャ(筆者撮影)
リスボンの街角にあるジンジーニャ・バーでは、通常注文の際にさくらんぼを入れるか入れないかを選べます。瓶入りで販売しているものにも、さくらんぼ入りがあります。
パッケージは、やはりさくらんぼやその赤色を基調にしたものが多いようです。

さくらんぼ入りのジンジーニャ。ラベルにはオビドスの街のシンボルである城壁がデザインされている。(筆者撮影)
また、リスボンの北にある城壁の街、オビドスでは、果実なしのジンジーニャをチョコレートカップに注いで飲むのが定番です。こちらはカップも食べられ、チョコレートボンボンのようです。そんな飲み方を再現するため、チョコカップ付きのパッケージも販売しています。

チョコレートカップ付きジンジャ(筆者撮影)
空港などでも見かけるオビドスで1949年創業の酒造メーカー「リコービドス(licóbidos)」のジンジャブランド「マリキーニャス(Mariquinhas) 」は、チェリーの赤色とポルトガルの伝統工芸、フィリグリー装飾にインスパイアされたハートのロゴが目印です。
「マリキーニャス」は、ポルトガルの伝統音楽ファドの有名な曲にも登場する女性の名前で、ブランド全体でポルトガルらしさを訴求しています。

炭酸水とグラスやミニサイズボトルをセットにした「マリキーニャス」のジンジャ(筆者撮影)
ボトルはもちろん、お土産にも良さそうなチョコレートカップやミニボトル、またジンジーニャを炭酸割りにするための炭酸水とグラスのキットなども販売しています。昔からのファンだけでなく、若い人に向けて新しい飲み方の提案もしています。
130年以上の歴史を持つリキュール「ベイラン」

スーパーマーケットの「ベイラン」売り場(筆者撮影)
ポルトガル人にとって馴染みの深いリキュールに「リコー・ベイラン(Licor Beirão)」があります。1890年にポルトガル中部の山岳地帯「セーラ・ダ・ロウザン(Serra da Lousã)」で誕生したリキュールで、13種類の秘密のスパイスやボタニカルが使われていて、独特の風味があります。2023年に現在の8代目ボトルになりました。(2025年6月時点)
また、1950年代からユニークな広告キャンペーンでも知られており、スーパーで目を引く陳列棚も見かけました。ボトル売りだけでなく、より「ベイラン」のイメージを訴求できるような箱に入った商品も見かけます。

隣り合わせて置くとボトルを完成させられる箱入り(筆者撮影)

サングリア用のキットと創業者の生誕100周年を記念して作られたリザーブボトル&グラスのセット(筆者撮影)
「ベイラン」はロックでレモンツイストを入れたり、カクテルベースとして使われたりします。2001年に「ベイランの汎用性を訴求するため」に開発されたブラジルの伝統カクテル「カイピリーニャ」にインスピレーションを得たカクテル「カイピラン」は好評を博しています。

ライム風味の「カイピラン」とそのアレンジでいちご風味の「モランガン」カクテル缶(筆者撮影)
「カイピラン」は、2022年に缶入りカクテルとしても登場しました。歴史あるブランドながら、若者にもアピールするフレッシュさを保っているようです。
ビターアーモンドのリキュール「アメンドア・アマルガ」

スーパーに並ぶ「アメンドア・アマルガ」(筆者撮影)
続いては、ポルトガル南部のアルガルヴェ地方を中心に生産される「アメンドア・アマルガ」もしくは「アマルギーニャ」として知られるアーモンドのリキュールです。
アーモンドの香りと甘みがあり、レモンとソーダで割って飲むことが多いようです。

「アマルギーニャ」は、「アメンドア・アマルガ」のバリエーションを展開(筆者撮影)
リスボンで最もよく見かける「アマルギーニャ(Amarguinha)」ブランドからはオリジナルに加え、近年レモン入り、3種類のクリームタイプ(クリーム、キャラメル、チョコレート)のリキュールも登場しました。
パッケージデザインは2021年に刷新しただけあって、色やフォントなどもモダンに感じます。オリジナルやレモン風味に使われている曇りガラスのボトルは涼しげで、透けないボトルのクリームタイプは温かな印象です。

缶入りカクテルやミニボトルセットも販売(筆者撮影)
さらに、最近缶入りのサワーカクテルも発売されました。オリジナルのファンに新しいバリエーションも試してもらえるよう、ミニボトルのセットやカクテル缶とのセットも見かけます。
ポルトガルのサンセットをイメージした「ペルセ」

オレンジ色のリキュール「ペルセ」(筆者撮影)
続いては比較的最近、2010年に開発された食前酒「ペルセ(Per Se)」です。ポルトガル南部の光とエッセンスをコンセプトに、オレンジの皮やカルダモン、ジャマイカペッパーなど24種類のボタニカルを使用して作られたリキュールです。
氷とオレンジの皮を加えたオンザロックやトニックウォーター割りがおすすめの飲み方で、味や香りはもちろん、サンセットのような美しいオレンジ色も楽しみの一つです。

オレンジ色のグラスのセット(筆者撮影)
マーケティングにもこのオレンジ色を前面に打ち出しているようで、オレンジ色のグラスをおまけにしたリゾート感のあるオレンジストライプのボックス入り商品も見かけました。
ポルトガルの伝統菓子「エッグタルト」のリキュール

ちょっとシュールにクリームを描いたクリームリキュールのラベル(筆者撮影)
続いては、日本では「エッグタルト」として知られるポルトガルを代表するお菓子「パステル・デ・ナタ」のように甘くてクリーミーな「ナタ」のリキュールです。「ナタ」はポルトガル語で「生クリーム」の意味です。

リスボン生まれの「Licor 35」(筆者撮影)
「ナタ」のリキュールは、そのままでもカクテルにしても使え、甘党の方におすすめです。
こちらも複数のメーカーが作っていますが、リスボンの「Licor 35」は、特に伝統菓子「パステル・デ・ナタ(エッグタルト)」リキュールとして販売しています。お土産需要を見込んでか、ポルトガルの伝統タイルのデザインをパッケージに用い、ポルトガルらしさを訴求しているようです。

ハートのフィリグリー装飾ロゴがかわいいお菓子味のクリームリキュール(筆者撮影)
また、先述のジンジャブランド同様、フィリグリー装飾にインスパイアされたハートのロゴを採用している「カンタレス・デ・ポルトガル(Cantares de Portugal)」ブランドは、エッグタルト風味のリキュールに加え、Bolacha Maria(マリービスケット)風味やArroz Doce(ライスプディング)風味など、お菓子にインスパイアされたクリームタイプのリキュールを揃えています。

デザートっぽさが強い「ジンブロ」のミニボトルセット(筆者撮影)
一方、酒造メーカー「ジンブロ(ZIMBRO)」は、ポルトガルの伝統菓子シリーズとしてエッグタルト、ライスプディング、チョコレートムースの3種類のクリームリキュールを販売しています。ボトルにはお菓子やレースペーパーが描かれており、お酒というよりもデザートのような印象です。
マデイラ島のカクテル「ポンシャ」

ポップなラベルの「フレーバーポンシャ」も(筆者撮影)
最後に、ポルトガル本土ではなく、クリスティアーノ・ロナウド選手の出身地としても知られるマデイラ島の「ポンシャ」を紹介します。
「ポンシャ」とは、アグアデンテ(マデイラ島で生産される無色のラム)にレモン果汁、砂糖を加え、専用の棒でしっかりとかき混ぜて作る伝統カクテルのことです。最近は、気軽に「ポンシャ」を味わえる瓶入りのリキュール版も登場しているようです。

マデイラ島のお土産にも人気の「ポンシャ」のミニボトル(筆者撮影)
かつて「剛健な漁師の酒」として知られていた「ポンシャ」は、現在、パッションフルーツやオレンジをはじめ、さまざまなフルーツを取り入れたカクテルとして進化を遂げ、それに合わせてリキュール版にはポップなパッケージも登場しているようです。
ポルトガルのリキュールパッケージ、いかがだったでしょうか。
機会があれば、ぜひ手に取ってみてくださいね。
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