ビジネスパーソンが読むメディア。マーケティング、セールスプロモーション、パッケージの企画・開発に役立つアイデアと最新の情報を、世界中から配信。

アメリカの華やかなクリスマスシーズン

今、ニューヨークは一年で一番華やかなホリデーシーズンを迎えています。アメリカでは、11月下旬頃からクリスマスの飾り付けが行われ、きらびやかなクリスマスツリーやイルミネーション、クリスマスウィンドウが登場し、クリスマスムードが高まります。

クリスマス気分が盛り上がるのは公共空間や商業施設など街中だけではありません。各家庭でもクリスマスデコレーションが施され、クリスマスプレゼントを準備したり、アドベントカレンダーでクリスマスまでのカウントダウンを楽しんだり、クリスマスの食事やお菓子を準備してパーティをしたりと、毎日がクリスマス体験となる楽しい季節になります。

そんなアメリカのホリデーシーズンを象徴する、クリスマスデコレーションをはじめ、スイーツや雑貨、アドベントカレンダーなど、季節限定のアイテムと共に、ニューヨークならではの美しいクリスマスのシーンをご紹介します。

伝統のクリスマスツリー

アメリカでは、クリスマスの時期になると街の中心地などにクリスマスツリーが飾られます。ニューヨークでもさまざまな場所にクリスマスツリーが登場しますが、最も有名なのが、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーです。ロックフェラーセンターのクリスマスツリーの点灯式はニューヨークの冬の一大イベントです。巨大なクリスマスツリーの前には、アイススケートリンクが広がり、とても絵になる光景です。ニューヨーカーに加え、旅行者たちが溢れかえるニューヨークのクリスマスの見逃せないスポットとなっています。

目の前にアイススケートリンクが広がるロックフェラーセンターのクリスマスツリー
ニューヨークでは、ロックフェラーセンターの他にも公園やミュージアム、商業施設など、さまざまな場所でクリスマスツリーが飾られます。
数あるクリスマスツリーの中でも特に個性的なものが、ナポリの歴史ある伝統工芸の人形で彩られたメトロポリタン美術館のクリスマスツリーです。きらびやかなロックフェラーセンターのクリスマスツリーとは対照的に、教会のような厳かな雰囲気の中でクラシックなクリスマスツリーが楽しめます。
イタリアの伝統的なクリスマス飾りである、キリスト降誕のシーンを再現した壮大なプレゼピオのクリスマスツリーで、ツリーのまわりには360度にわたって天使が舞い、降誕にまつわるさまざまなエピソードが描写され、その細やかな表現に時間を忘れて見入ってしまいます。

メトロポリタン美術館のクリスマスツリー

華やかなデパートのクリスマスウィンドウ

ホリデーシーズンを迎えると、デパートやブランドのブティック店などでは、競い合うように趣向を凝らした豪華なクリスマスウィンドウが登場し、道行く人々を楽しませてくれます。テーマは毎年さまざまですが、今年はクリスマスの原点に戻り、ノスタルジーを感じさせるクリスマスシーンのウィンドウが多くなっています。

こちらは、ニューヨークを代表するデパートである「メイシーズ(Macy's)」のホリデーウィンドウです。「メイシーズ」のホリデーウィンドウは、毎年子どもたちに夢を与えてくれる温かみのあるクリスマスをテーマにしています。サンタクロースが飛び出す絵本を読んでいる姿が微笑ましい、目を引く楽しいディスプレイなどが見られます。「メイシーズ」は、クリスマスウィンドウやサンタクロースに出会えるイベントなど、現在も続くさまざまなホリデーイベントの先駆けとなった老舗デパートであり、今年は、そんな「メイシーズ」の歴史を振り返ることができるヴィンテージシーンが登場するウィンドウとなっています。

メイシーズのホリデーウィンドウ
ニューヨークの高級デパート、「サックス・フィフス・アヴェニュー(Saks Fifth Avenue)」では、例年の大人向けのディスプレイから少し趣向を変え、今年はアメリカらしいクリスマスの光景を描いた、子どもたちにも喜ばれるファミリー向けのウィンドウデザインとなっています。光に包まれたクリスマスツリーや、ジンジャーブレッドクッキーを焼いている巨大なオーブンなど、今にも甘い香りが漂ってきそうな臨場感あふれるクリスマスの演出で人々を楽しませています。

子どもたちにも喜ばれるファミリー向けのウィンドウデザイン
「サックス・フィフス・アヴェニュー」では、デパートの建物の正面をいっぱいに使って行われるクリスマスライトショーも大変人気になっています。光と音楽で魅了するイルミネーションショーがホリデー期間中毎晩行われ、たくさんの人々が見に訪れます。こうした体験型の演出は、直接的な購買を促すものではないものの、「サックス・フィフス・アヴェニュー」というブランドに対する強い印象を残します。子どもの頃に見たキラキラしたデパートの光景は、幸せな思い出として心に刻まれることでしょう。

光と音楽で魅了するイルミネーションショー

住宅街のクリスマスデコレーション

アメリカでは、一般家庭でもクリスマスの飾り付けを楽しむ家が多いです。中には趣味が高じて凝りに凝ったクリスマスデコレーションを行い、毎年多くの人が見に訪れるクリスマス名物となっている家や住宅街がアメリカ各地にあります。

ニューヨーク周辺では、ブルックリン南部にある高級住宅街のダイカーハイツのクリスマスライトが有名です。普通の住宅地にもかかわらず、玄関から家の建物全体まで、クリスマスらしいキャラクターやイルミネーションが飾られ、まるでテーマパークのようにキラキラした飾り付けが行われている家が数多く立ち並んでいます。そんなアメリカらしい迫力あるクリスマス飾りの住宅街を一目見ようと、ヨーロッパをはじめ、海外からの旅行者たちもたくさんやってくる人気のスポットになっています。

高級住宅街のダイカーハイツのクリスマスライト
家の玄関先のクリスマスデコレーションで人気があるのは、おもちゃの兵隊です。おもちゃの兵隊は、街中やクリスマスマーケットなどでもよく見かける、クリスマスを象徴する存在の1つとなっています。最近は、おもちゃの兵隊に加わり、兵隊姿のミッキーやミニーといったキャラクターも親しまれています。

玄関先のおもちゃの兵隊

ジンジャーブレッドハウス

クリスマスの季節には、お菓子のジンジャーブレッドで建物をかたどった「ジンジャーブレッドハウス」が人気となります。家庭で簡単に作れるジンジャーブレッドハウスのキットがスーパーなどに登場する他、ジンジャーブレッドハウス作りのプロたちの趣向を凝らした作品もさまざまな場所で展示されます。

こちらは、ニューヨーク市立博物館で毎年開催されている、ベーカリーが競い合ってニューヨークのさまざまなシーンを再現するジンジャーブレッドの特別展の様子です。巨大な歴史的ホテルや自由の女神などニューヨークらしい作品が並び、感動させてくれます。

ジンジャーブレッドの特別展の様子
こちらは、ニューヨークの「ディオール」の新フラッグシップ店のホリデーウィンドウです。今年は、可愛いジンジャーブレッドの「ディオール」の世界が広がっています。多くの人々に愛されているジンジャーブレッドをテーマとしたディスプレイは、街ゆく人々が思わず立ち止まってしまう魅力的なショーウィンドウで、センスの良さが感じられます。

ジンジャーブレッドのディオールの世界

アドベントカレンダー

12月に入りクリスマスまで、毎日カウントダウンしながら楽しむことができるアドベントカレンダーは、クリスマスシーズンの人気アイテムです。アドベントカレンダーは、チョコレートなどのお菓子、紅茶、コスメ、おもちゃ、料理やアウトドアなどの趣味グッズまで、幅広いジャンルのものがあり、ホリデーシーズンになると専門ブランドから小売店のプライベートレーベルまで数多くの商品が登場します。

アドベントカレンダーは、そのブランドの代表的な商品を日替わりで体験してもらえるため、ブランドにとってはファンにリーチできる絶好の機会をもたらしてくれる商品でもあります。福袋のように開けて初めて中身がわかるという商品の性質上、購入の決め手となるのはパッケージデザインです。パッケージデザインだけでアドベントカレンダーのワクワク感やブランドの魅力を伝え、消費者に期待を持ってもらわなければいけないのは興味深いところです。
価格帯の高いラグジュアリーブランドでは、アドベントカレンダーにもより洗練されたデザイン性が求められます。そんな高級志向のアドベントカレンダーでよく見るパッケージが、毎日1つずつ小さな引き出しを開けていくタイプのパッケージです。

例えばこちらは、イギリス・ロンドン発の高級紅茶ブランド「Newby Teas」のアドベントカレンダーです。楽しそうな冬のシーンを描いたおしゃれな外箱を前扉から開くと、24個の引き出しがあり、それぞれの引き出しには4種類の個包装されたティーバッグが入っています。上質なパッケージから毎日丁寧に引き出しを開けて、お茶をいただく体験は洗練されたひと時をもたらし、ブランドイメージへとつながります。

高級紅茶ブランド「Newby Teas」のアドベントカレンダー
イタリアのチョコレートブランド「Venchi」のアドベントカレンダーは、箱を開いた瞬間、綺麗な24個の小箱がパーッと現れる、とてもおしゃれなアドベントカレンダーです。Alice Bureauのデザインによるもので、カラフルな24個の引き出しが交互に重なり、引き出しの数字もバラバラに配置され遊び心がある、ワクワク感を感じさせるアドベントカレンダーです。

イタリアのチョコレートブランド「Venchi」のアドベントカレンダー
「Lindt」のチョコレートのアドベントカレンダーは、アメリカのスーパーマーケットで、クリスマスシーズンの定番商品として人気があります。中でも、「Lindt」の愛らしいクマのキャラクターのチョコレート「Lindt Teddy」は、クリスマスになると店頭に必ず並ぶ定番アイテムです。

幸せいっぱいの暖かみのあるデザインで、金色など光沢のある華やかな包み紙や、クリスマスらしい色合いが使用され、とてもクリスマスギフト感のあるパッケージデザインです。アメリカでは、身近な人に気軽にプレゼントを渡す文化がありますが、スーパーマーケットで購入しやすい価格帯の「Lindt」チョコレートのアドベントカレンダーは、とても親しみやすい存在となっています。

「Lindt」チョコレートのアドベントカレンダー
クリスマスまでの24日間、毎日一つずつ、アドベントカレンダーの箱の窓を開けて楽しみます。テディベアのチョコレートや「Lindt」の代表的なチョコレートがアソートされて入っており、毎日どれが当たるのかワクワクします。

テディベアのチョコレートや「Lindt」の代表的なチョコレートが入っている
アドベントカレンダーは、デパートのホリデーウィンドウなどでもよく登場します。今年は、サックス・フィフス・アヴェニューのホリデーウィンドウに大きなアドベントカレンダーが登場し、扉が開く瞬間を道行く人々が楽しんでいました。

サックス・フィフス・アヴェニューのホリデーウィンドウに大きなアドベントカレンダーが登場
アドベントカレンダーは、何が入っているかわからないよう小窓や引き出しの中に隠れている商品を一日ずつ開けて楽しむというのが通常のスタイルですが、こちらは一風変わった、見せるアドベントカレンダーです。「PUKKA」という、ハーブティーブランドのアドベントカレンダーで、外箱を開けると中には、カレンダーが折りたたまれて入っています。カレンダーにはクリスマスまでの24日分の日にちが並び、そこにさまざまな異なるフレーバーのハーブティーが挟まれています。

従来のアドベントカレンダーのように中身を隠さず、あえて見せる構成でありながら、毎日異なる味を楽しめるため、期待感は変わりません。とても綺麗なデザイン性の高いアドベントカレンダーで、見て楽しめるだけでなく、普段自分では選ばないような味も試すことができるため、新しいフレーバーとの出会いの楽しみもあり、従来のアドベントカレンダーの形にこだわらない、多様なスタイルの可能性があることを教えてくれる商品です。

ハーブティーブランド「PUKKA」のアドベントカレンダー

クリスマスのお菓子

日本のクリスマスのお菓子と言うと、イチゴのショートケーキのクリスマスケーキが真っ先に思い浮かびますが、アメリカではそれほど一般的ではありません。むしろ、ケーキよりもクッキーやチョコレート、焼き菓子などのスイーツがホリデースイーツとして親しまれています。
ケーキでいうならば、アメリカならではのクリスマスケーキはなく、イギリス風のフルーツケーキ、イタリアのパネットーネ、ドイツのシュトーレン、フランスのブッシュ・ド・ノエルなど、ヨーロッパ各国に由来するクリスマスケーキを好みに応じて楽しみます。

ホリデーシーズンのスーパーマーケットには、サンタクロースやクリスマスツリー、ジンジャーブレッドマン、スノーマン、おもちゃの兵隊などクリスマスの伝統的なキャラクターが描かれたクリスマスらしいお菓子がたくさん並びます。そして、シーズンものの期間限定商品のため、人気のものは発売と同時に飛ぶように売れていきます。

クリスマスの伝統的なキャラクターが描かれたクリスマスらしいお菓子のパッケージ
パッケージだけでなく、商品そのものにもクリスマスの定番モチーフが取り入れられ工夫が凝らされたものが多くなります。アメリカで最もクリスマスらしいお菓子と言えば、ジンジャーブレッドハウスでお馴染みのジンジャーブレッドクッキーです。さまざまな顔と形状のジンジャーブレッドクッキーの商品が登場します。ジンジャーブレッドクッキーは、とても良い香りが広がり、クリスマスの気分が盛り上がります。

また、スノーマンの姿をかたどった「ギラデリ」のペパーミントバーク(Peppermint Bark)もクリスマスらしい人気の商品です。赤と白のペパーミントバークは、味も見た目もクリスマスを感じることができるアメリカのホリデーシーズンの定番お菓子です。

さらに、1960年代に「McKee Foods」によって誕生した歴史あるホリデーブランド「リトル・デビー(Little Debbie)」のクリスマスツリーケーキも、この季節を象徴する定番商品です。赤と緑が鮮やかなクリスマスツリー型のスイーツは、見た目にも華やかで、アメリカのクリスマスらしい楽しさを演出します。時代を超えて今も変わらずクリスマスシーズンにスーパーマーケットで売れている商品で、ノスタルジーも感じられる商品です。

左から、クリスマスツリーケーキ、ペパーミントバーク、ジンジャーブレッドクッキー

クリスマスの雑貨

クリスマスは、家族はもちろん、パーティなどで多くの人が集まる機会が増え、プレゼントやお菓子を贈り合う機会も多くなります。そんな時にギフトをより楽しく演出することができる便利な雑貨もクリスマス前になるといろいろ登場します。

「くるみ割り人形」の物語のイメージもある兵隊は、クリスマスの代表的なキャラクターのひとつで、クリスマスのグッズでとてもよく使われます。下図右にあるのは、カラフルでクリスマスの華やかなイメージにぴったりの紙袋です。アメリカでは、プレゼントのラッピングは自分でする人も多く、こういったギフト用バッグの需要も高まります。

サンタクロース帽をかぶったジンジャーブレッドマンのようなデザイン缶のパッケージもよく売られています。ジンジャーブレッドクッキーなどクリスマスのお菓子の入れ物としてもピッタリで、手作りのプレゼントも既製品に負けないおしゃれなものにすることができます。またクリスマスツリーの周りに飾っても存在感がある、デコレーションにもなるパッケージデザインです。

トナカイが描かれた大きなクリスマスソックスは、お菓子やちょっとしたプレゼントを入れることができ、クリスマスツリーのそばに一緒に飾ると絵になります。こうした昔からあるクリスマスアイテムは、時を経ても変わらず人気があります。特に今年はノスタルジー志向の高まりもあり、こうした昔ながらのクリスマスアイテムがよく売れています。

左から、トナカイが描かれた大きなクリスマスソックス、ジンジャーブレッドマンの缶パッケージ、くるみ割り人形がデザインされた紙袋
アメリカでは、11月下旬の感謝祭頃から年末にかけてのホリデーシーズンは購買意欲が高まり、一年で最も消費が盛り上がる時期となっています。そんな購買意欲が高まる時期、消費者を引き付けようと街では豪華なクリスマスデコレーションが施され、ジンジャーブレッドハウス作りやクリスマスキャロルの合唱隊など、さまざまなイベントが行われ、街全体がクリスマスムード一色になります。

今年のニューヨークのホリデーウィンドウでは、ヴィンテージ人気の影響もあり、ノスタルジーを感じさせるサンタクロースやクリスマスツリーなどが登場する、定番のクリスマスの光景を描いたデコレーションが多く見られました。また、「メイシーズ」はホリデーデコレーションやイベントの歴史的な発祥地であることをテーマとしたウィンドウを展開、「サックス・フィフス・アベニュー」では昨年中止となった人気のクリスマスライトショーを復活させるなど、各ブランドがそれぞれの強みや伝統を強調し、オーセンティシティ(Authenticity)をアピールする絶好のブランディングの機会となっています。

また、パーティなどで多くの人が集まる機会が増えるホリデーシーズンには、プレゼントやお菓子などのギフトの需要も一気に高まります。そんな場で思わずみんなを笑顔にしてくれるクリスマスらしい可愛いお菓子や雑貨も数多く登場します。クリスマスまでの日々を毎日カウントダウンしながら、今日は何がもらえるかわくわくしながら楽しむアドベントカレンダーは、そんなクリスマスシーズンに人気の典型的なアイテムで、近年たくさんの商品が登場しています。

さまざまな商品をセット販売することができるアドベントカレンダーは、ブランドにとっても魅力的な商品となっています。コンセプトやパッケージデザインなどクリエイティビティが成功の鍵となる商品で、ホリデーシーズンの始まりとともに、デパートやグルメマーケット、スーパーマーケットなどには、さまざまなブランドの趣向を凝らしたアドベントカレンダーが登場し、人気となっています。昔ながらの定番のクリスマスアイテムに加え、新しいデザインや体験を提供してくれるアドベントカレンダーは、クリスマスのギフト市場の注目アイテムとしてさらに進化を続けていくのではないかと思います。

▼編集部おすすめ記事

日本でも人気上昇、思いのこもったクリスマスのアドベントカレンダー

特別なホリデー体験を!カナダの多様なクリスマスマーケット

タイのクリスマスプロモーションと期間限定商品

このライターの記事

Top