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プロテイン食品市場の、新しい顧客を捉えるデザイン

プロテイン摂取は「削るダイエット」ではなく「プラスするダイエット」

今やニューヨークでは、どこのお店に行ってもレジ前にたくさんの種類があるGrab to goのプロテイン食品。アメリカではスポーツ栄養食品市場がここ10年非常に高い成長率で市場が拡大しています。

スポーツ栄養食品の中でもその6割を占めると言われているのが、プロテイン食品。このプロテイン食品がここまでアメリカで人気になった理由として、『プロテイン食品は、「グルテンフリーやシュガーフリー、ファットフリー」といった「削る」ダイエットではなく、運動をして積極的に「プラスする」ダイエット食品であるためだ』という人もいます。

私も日々アメリカで生活をしていて、何かを我慢するのではなく積極的に活動することで目標を達成することを好む人が多いという印象を持っているため、この意見には共感しました。

プロテイン食品=健康的な体を維持するため、ワークアウトと共に積極的に摂取するものというイメージが定着してから、「筋肉を鍛えたい男性」だけではなく、幅広い顧客層がプロテイン食品のターゲットとなっていきました。

そのため、メーカー各社はこの顧客層を取り込もうとプロテインの力強いイメージの配色(白や黒のベースに黄色などの蛍光色)、一辺倒な形状(プロテインパウダーをプロテインシェイカーに自分で入れて牛乳や水を加えて振って飲む)から、より日常生活の一部に馴染む様な、そして広がったターゲット層に合わせた商品が増えています。今回は形状やターゲットの異なるプロテイン食品のデザインを紹介したいと思います。

写真:ターゲット層に合わせ、様々なパッケージの商品が売られている

素材のシンプルさをパッケージで表現した人気商品

RX BARは、「シンプル」というコンセプトを一貫している人気ブランドです。2人の創業者はこの商品のメインターゲットを「ものに溢れた社会で育ったミレニアル世代」と捉え、彼らに何度も商品の説明をする機会を作っていたそうです。

彼らと話していくうちに、彼らの興味を引くポイントは「無駄なものがない、自然そのままの素材が使われている」この二点にある、と考えたそうです。そこで思い切って当初のパッケージデザインから、通常類似商品がおもて面に記載するような彼らにとって余分な情報を省き、ロゴも小さく、素材がシンプルであるという特徴をダイレクトに伝えることに徹底したパッケージデザインに変更し、商品を発売したと2017年6月出版のINC. MAGAZINEでのインタビュー記事で語っています。

「シンプルでモダンなフォントのパッケージ」、この言葉だけでは流行に乗っただけのようですが、デザイン決定に至るまでの秘話を聞くとデザインの影響力に驚かされます。

写真:今では常時13種類以上のパッケージバリエーションで展開

購入者(子供を持つ親)と消費者(子供)両者に好かれるパッケージデザイン

アメリカでは今、学校で砂糖が大量に入った飲み物の販売を禁止するなど、子供の栄養に関する興味関心が高まってきています。学校でおやつを食べることが当たり前のアメリカでは、親がランチボックスと一緒におやつを持たせる家庭も多く、この「親が子供に持たせるおやつ」にもプロテインが何グラム入っているという表記がある商品も、最近は見かけるようになりました。

上記で紹介したRXBARにも子供用があります。こちらの商品と大人用との違いは、サイズ、容量だけではなく、子供を意識したイラスト、よりポップな色使いが施されている点です。

写真:子供も喜びそうなキャラクターが入ったパッケージ

オフィスなどでも手軽に飲めるプロテインシェイク

Soy lentは環境に配慮した取り組みでも知られ(植物由来原料のみを使用し動物性食品に比べ製造にかかるCO2の排出量や水の消費量を減らす努力をしていることを企業の特徴としている。)収益の一部をWorld Food Program USAへの寄付、様々な機関と連携して飢餓撲滅キャンペーンにも積極的に取り組んでいる企業です。

Soy lentは、プロテインだけではなく一食に必要が栄養素が全て取れる、昨今話題の「コンプリートミール」でもあり、忙しく昼食も取れない人たちがオフィスなどでも気軽に飲めるという特徴もある商品です。オフィスでも飲む顧客がいることを想定し、商品のキーワードだけが記載され、少ない色使い、モダンな字体のデザインもターゲットの利用シーンを意識して計算されたパッケージデザインと言えるかもしれません。

写真:オフィスでも飲みやすいモダンでおしゃれなパッケージ

ワンハンドで持ち運べるプロテインアソート

チーズとクラッカーやスティククッキーとチョコレートスプレッドなど、この商品のように「素材ごとにしきりがあり、一緒に食べたり単体で食べたりできるお菓子」は従来あるものですが、従来品と大きく異なることは2点あります。

まず、全てがプロテイン豊富な素材で炭水化物がないこと。その特徴を伝えるため、左側に写真、そして右側に言語で素材を記載しています。言語的情報がパッケージの右側に配置され, 非言語的情報がパッケージの左側に配置された場合に消費者が情報をうまく再生できるという化学的な証明にも合致しており、ビジュアルを効果的に利用したレイアウトと今えます。

そして、二つ目は手で握って持ち運べる形状になっていること。従来品はボックス型が多く持ち運び用としては小さいサイズを製造する傾向にありました。しかしこのH型のパッケージにすることで中央を手で握ることができるため、サイズを変えずに持ち運びができる商品に仕上げています。

これは製造側からしても2SKUを作ることなく「ミニサイズではない商品が欲しい顧客」、そして「持ち運びのしやすさを求める顧客」どちらの需要にも対応することができ生産性の観点からも効果的と言えるかもしれません。

昨今では空港でも見かける商品で、外のシール(=トップシール)が各素材の仕切りの上で区切られているため、空港でのトランジットのちょっとした待ち時間に少しだけ食べたいときなど、片一方の素材のトップシールだけ剥がして一つの素材は食べ、残り二つの素材の上のトップシールは剥がさず後で食べる、と言った食べ方ができるところは費者として嬉しい点かもしれません。

写真:まさに”Grab”できる形状のパッケージ

今回のリサーチを通して知ったのは、パッケージデザインも強調したい商品の特徴を表現するだけではなく、ターゲットのライフスタイルをリサーチし、生活に馴染むデザインを追求することが重要だということ。今後ますます成長する市場において、どの様なパッケージデザインによって各社がターゲットをつかんでいくのか、楽しみです。

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