「キルメス・ビール」がアルゼンチンのシンボルになった理由
アルゼンチンのスーパーマーケットには、様々な企業のビールが並んでいます。日本でもお馴染みのハイネケンやコロナはもちろん、地元のビールもたくさん。数あるビールの中でも、人気ナンバーワンが「Quilmes(キルメス)」です。その人気は国内シェアの75%を占めたことがあるほど。
キルメスの創業者は、ビール大国ドイツからの移民オットー・ベンベルク氏。1888年にビール醸造所を設立し、1890年にビールの販売を開始。会社が設立された街の名前をとって「キルメス」と名付けました。1920年頃には国内最大のビール会社となり、多くの雇用を生み出し、街の発展にも大きく貢献したのです。
一目で「アルゼンチンビール」と分かる、キルメスのパッケージデザイン
筆者がアルゼンチンで初めて購入したビールもキルメスでした。その理由は、ずばりパッケージ。水色と白を基調としたパッケージは、アルゼンチンの国旗を彷彿させます。特に深い知識がなくとも、一目見てアルゼンチンを代表するビールだと分かるのがキルメスの特徴です。
パッケージを詳しく見ていきます。まずは「1890」という数字。これは予想できる通り、キルメスビールが発売された年を表しています。数字を用いることで、伝統や信頼を感じさせるデザインです。
キルメスビールのウリは、完全国内生産の100%天然ビールであること。定番のキルメス・クリスタルには、アルゼンチンの畑で育った原材料のみで製造されている旨が、パッケージに記載されています。
「キルメスビール」と「サッカー・アルゼンチン代表」の深い関係
アルゼンチン人の誇りはスポーツです。テニスやラグビー、柔道など、様々なスポーツでアルゼンチン人が活躍しています。なかでも人気が高いのはサッカーでしょう。アルゼンチンは、メッシやマラドーナなど世界的スタープレーヤーを多数輩出しており、ワールドカップ優勝も果たしています。
国民は熱狂的に応援し、国内リーグも盛ん。サッカーはアルゼンチン人のアイデンティティなのです。そしてキルメスは、サッカーアルゼンチン代表のメインスポンサーを20年以上に渡って務めました。
もはやアルゼンチン人にとって、アルゼンチンサッカー代表=キルメスと言っても過言ではないほど、切っても切れない存在です。2019年、サッカー代表のスポンサーがキルメスからライバル企業のシュナイダーに変わると発表されましたが、キルメスが長年積み重ねてきたイメージは、そう簡単には崩れないと思われます。
原料から生産までアルゼンチンで行い、国民的スポーツのスポンサーを務めていたことから、愛国心の強いアルゼンチン人に温かく受け入れられたのかもしれません。
瓶ビール購入に繋がるシステム「バクト・ポロン」
アルゼンチンでは、缶ビールと同様に瓶ビールも販売されています。大多数の方が購入するのは瓶ビール。その理由は、瓶ビールを購入する際、空き瓶を渡すと定価よりも安い値段になるからです。このシステムは「パクト・ポロン」と呼ばれています。
キルメスの瓶ビールには、「瓶の方が良い」とはっきり記載されています。ガラス瓶は100%リユースできる素材。生産プロセスにおいて廃棄物や排出ガスの量が少なく、省エネルギーで生産できるため、地球に優しい容器と言えます。
パクト・ポロンのおかげで、消費者は手頃な価格でお気に入りのビールを楽しめつつ、地球への負担を軽減できているのです。
パッケージデザインから想像できる軽くて爽やかな味わい
キルメス・クリスタルのパッケージに注目して、味を想像してみてください。水色と白色の爽やかな組合せ、メタリックな雰囲気のパッケージ。そう、キルメス・クリスタルは癖のないクリアな味わいです。日本のビールパッケージと比べると、文字での情報量は少ないように感じますが、デザインでしっかりと商品の宣伝をしていると思います。
また、アルゼンチンの主食肉料理との相性が抜群なのも、長年愛されている理由でしょう。口の中に残った油を、キルメスがさっぱりと洗い流してくれるのです。サッカー観戦やアウトドア時のお供にもぴったり。他のビールと比べても、癖がなく家庭料理と合うことから、毎日の食卓にふさわしいビールと言えます。
▼パケトラおすすめの関連記事
ニューヨークのノンアルコールバー「ゲッタウェイ」が生み出す、新しいソーシャルの場
ディスプレイで輝く、目立つ、デザイン賞 ワインパッケージ