サーキットブレーカーの実施
シンガポールでは、現在「サーキットブレーカー(部分的封鎖と同等)」の措置が実施されています。期間は4月7日から5月4日までの4週間(潜伏期間2回分)。小売店は閉鎖され、必要不可欠な分野のサービスに従事する人々以外は、在宅勤務となっています。
人材開発省(MOM)は企業への監督を強化し、在宅勤務に関する勧告に従わなかった企業に対して、業務停止命令や是正命令を出しています。また、スーパーマーケットや薬局、レストランなどの飲食店はテイクアウトのみに切り替え、引き続き営業を続けています。
学校や高等教育機関は完全な在宅指導に移行し、プレスクールや学童保育を停止。私立の教育機関も家庭学習に完全に切り替えられている状況です。
4月7日、サーキットブレーカー開始日前後の様子
サーキットブレーカーの開始前には、2月の上旬より何度もスーパー・小売店でのパニック購買がみられました。
政府は、日本でいうLINEのような国民的アプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」のコロナ対策専用アカウントを開設するなどして、登録者へ迅速にメッセージを配信しています。人々の行動をいち早く関知し、その日の新たな感染者数、入院者数、そのうちICU(集中治療室)に入っている患者数、退院者数の状況を含め、1日あたり1~3通程のメッセージが送信されてきます。
食品や生活必需品は?
オンラインでの食品購入は困難な状態です。主要な「レッドマート」「アマゾン」などのオンラインスーパーでは購入不可の状態が続いています(4月9日現在)。知名度がレッドマートよりも低い「OpenTaste SG」では、5日待ちで配達日設定が可能でした。
サーキットブレーカー発表後には最大の混乱が起き、スーパーは混雑を極めていました。レジまでは数十分にも及ぶ長い行列が、そしてスーパーの外には入店するための行列もできました。入店している人の数がカウントされており、中にいる買い物客が一定数に達すると退店した人数分だけ中に入れる、というような措置がとられているからです。
そして、いざサーキットブレーカーが実施された後は、スーパーも公共交通機関も閑散としていました。
「パニック購買で人が殺到した場所からクラスターが発生した」というニュースも流れました。
教育関連の対応は?
小学生の子どもを持つ同僚によると、以下のように自宅学習が行われているようです。
・授業はビデオ機能にて開催。アプリを使った体育なども実施される予定
・提出物は写真を取り、シェアフォルダにアップロード
・音読の宿題は携帯で録音して指定場所へアップロード
また、普段は乳幼児用託児所に通っている筆者の息子のスクールの対応は以下の通りでした。
・アプリを使用した子どもの健康状態管理。毎日4回の体温測定やおむつ交換食事の記録などを先生と共有
・毎日のウェブビデオ通話(マイクロソフトのTEAMを使用)
・1か月間の自宅アクティビティとして絵本2冊の支給
次々と情報がシェアされ、肌で感じる助け合いの輪
シンガポールでは、国全体で「この危機に立ち向かおう」という一体感が生まれているように感じます。例えば、国内最大級のネットスーパ「レッドマート」の配送枠がパンクしており注文ができない状況が続いている中で、このようなメールが多くの人にシェアされています。
メールがシェアされてきたのは4月9日の夜。早速、翌朝10時に試してみると、今まで何度試してもできなかった「注文確定」まで進めました。
100万人以上が参加する政府開発トラッキングアプリ
政府がWhatsAppなどから呼びかけて、既に参加者数が100万人以上になったトラッキングアプリ「Trace Together(一緒に追跡しよう)」。これは、政府が8週間かけて開発したモバイル用アプリで、シンガポールの携帯番号を持っている人は誰でも登録できます。自ら率先してウイルスの拡大を阻止しよう、というもので、3月20日にローンチされました。
Bluetoothを利用して人々の行動を追跡し、万が一自分が感染した場合は、政府がこのアプリを通じて過去21日間分の情報を拾い、感染の疑いがある人々を特定することができるというものです。また、自分が逆の立場で感染者の近くにいたことが判明した場合は、政府機関から連絡があるとのこと。
合言葉は「Stay Safe」
外出は必要最小限とされ、人と会えない厳しい状況が続くなか、友達や取引先との電話やメールでは「Stay Safe」が合言葉のように使用されています。また、前述のお得情報やアプリによる情報共有をはじめとした助け合いの輪が急速に広がっており、「皆でなんとかこの難局を乗り越えよう」という雰囲気を肌で感じています。
シンガポールのシンボル、マリーナベイサンズも国旗と「SG♡」という特別使用のライトアップで応援メッセージを発信しています。
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