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【特集】世界の今。新型コロナウイルスが変えた私たちの生活(8)——「アメリカ・ポートランド」の今

「パケトラ」読者のみなさま、こんにちは。ポートランド在住の東リカです。

こちらも新型コロナウィルスの影響で、外出制限が続いています。今回は、そんなポートランドの様子や私たち家族が何をして過ごしているかをお伝えします。

ポートランドの現状

Photo:近所で見かけた手書きのポスター「We will get through this together (一緒にこれを乗り越える)」

オレゴン州では、4月9日現在、新型コロナウィルスの感染者数は1321名(うち死亡者数44名)という報告がなされています。

オレゴン州で初めて陽性が報告されたのは、2月28日。ポートランドのあるマルトノマ群では3月10日です。まだポートランドでは感染者がいないものの、州内に13人の感染者が確認された3月8日の時点で州知事は緊急事態を宣言。3月12日には、翌週月曜日の3月16日からの休校が発令されました。この時点での感染者数は22人でした。

そして3月16日には、翌日からレストラン・バーなどの飲食店で着席の禁止(テイクアウトのみ可)、25人以上の集まりを禁じる州知事命令が発令されました。この段階での感染者数は、まだ46名という報告でしたが、少しずつ深刻さが増してきました。多くの施設が営業自粛を発表。我が家で毎年恒例の春休みスキー旅行も、スキー場が閉鎖してしまい中止に。

更に3月23日には全州民に対し、不必要な外出を控え、やむを得ず外出する場合には他人と6フィート(約180cm)の間隔を確保することなどを指示する州知事命令(Stay Home, Save Lives)を発表しました。この時点での感染者数は161名(うち死亡者数5名)でしたが、テストできていない感染者がこの何倍もいるという想定で掲げた決断でした。

現在もイベントの開催は不可。また、大型施設はもちろん、オフィスビル、多くのレストランやバー、学校や習い事の教室、美容院、ジム、公園やプレイグラウンドなども閉鎖していて、街はすっかり静かです。人々が外出するのは、食料品や生活必需品の買い出しやテイクアウトのピックアップ、散歩やサイクリングくらいです。

Photo:ひと気のないナイキ本社キャンパス

そんな中、他州に比べて早い段階での学校やビジネスの閉鎖が功を奏したようで、4月5日には、オレゴン州保健当局(Oregon Health Authority)から「まだ断定はできないものの事態は収束へ向かっている兆し」とのコメントがありました。州知事は、オレゴンは大丈夫だという自信を見せて、ベンチレーターをニューヨーク州に貸し出すという明るいニュースもありました。

Photo:満開のマグノリア。付近は花盛りです

ポートランドでは、ちょうど雨の続く長い冬が終わりました。犬の散歩に近所を歩くと、青空が続いていることもあり、先週よりも散歩する人が多い印象です。ソーシャルディスタンスを保つため、道を譲り合い、遠くから挨拶をします。アジア系への差別が増えていると聞きますが、私の近所ではわりとみんなフレンドリーです。

ガーデニングに精を出している人たちの姿もよく見かけます。また、庭でバドミントンや読書、チェスをしている家族も目にしました。友人家族の中には、自宅にスケートボードのランプを組み上げたツワモノもいます。みんな自宅での生活を出来るだけ楽しもうと、努力しているようです。

Photo:ポートランドの自宅車庫内にスケートボードのランプを自作した友人夫婦

スーパーマーケットの様子

現在も営業を続けており人手不足だと言われているスーパーですが、その多くは早朝にシニアや持病を抱えている人専用の時間帯を設けています。また、カートの持ち手やクレジットカードのキーパッドの消毒、除菌シートやハンドサニタイザーの設置、店内に入れる人数の制限、レジでの立つ位置の指定、プラスチックのガード板設置など、ソーシャルディスタンスを守る工夫がされています。

Photo:レジに並ぶ際に立つ位置が示されています。

人数制限のある店で、週末は外で1時間近く待たされることもありましたが、店内はガラガラなのであまり人と接触することなく素早く買い物ができます。欲を言えば、店員さん全員にマスク着用を義務付けて欲しいところです。

Photo:アメリカ人の友人が届けてくれたマスク。日本とは違うセンス?

お客さんは米疾病予防管理センター(CDC)による一般人への布マスク着用の要請を受けてか、急激に手作りマスクや手袋を使う人を見かけるようになりました。ちなみに、裁縫用ゴムや手頃な価格のミシンはもう品薄でなかなか買えません。

店によりますが、トイレットペーパー、ハンドサニタイザー、除菌スプレー、除菌シート、小麦粉、イースト、ベーキングパウダー、米、パスタ、豆、缶スープなどが売り切れ、もしくは品薄になっている傾向があります。人気の商品は1人1個と制限されている場合も少なくありません。

Photo:商品の置かれていない棚がまだ目立ちます

イースト、ベーキングパウダーの売り切れには正直驚いたのですが、ニールセンのデータによると、アメリカでも新型コロナウイルスの感染が増え始めた3月15から21日の週のイーストの売り上げは、昨年比の647.3%増、ベーキングパウダーは193%増とのこと。

その理由は「#quarantinebaking(隔離ベーキング)」。昨年頃から増えてきていた、精神安定のためにお菓子やパンを焼く「#anxietybaking」「#stressbaking」が一気に浸透したのです。

学校の状況

我が家には11歳と9歳の娘がいて、それぞれポートランドの公立中学校と小学校に通っているのですが、今年は1週間早く春休みが始まりました。当初は春休み明けの数日後、4月1日には再び登校する予定でしたが、3月半ばには4月28日へと1ヶ月の延長が決定。更に先日、スクールイヤー期間中全ての学校閉鎖が発表されました。

こちらのスクールイヤーは8月末から翌年6月半ばまでなので、次に学校へ行けるのは夏の終わりです。これには子供たちもがっかりです。プロムも卒業式もなく、バラバラになってしまう高校の最終学年の子供達はもっと可哀想ですが…。

Photo:家の向かいの小学校には誰の姿もなく不思議な感じです

また、こちらの公立小中学校では休暇中の宿題が出ないのですが、この通常より2週間伸びた春休み(?)の間も特に課題などはありませんでした。こんな状態でいいのか?と親たちの心配も大きくなっていた4月6日、ついにオンライン学習がスタートしました。

先生方のトレーニングはもちろん、クロームブックの配布など、パソコンやインターネットネットアクセスがない家庭の子どもが不平等にならないような配慮がなされ、ようやくオンライン学習の環境が整ったようです。

我が家の様子

我が家は、通常は私が自宅で仕事をしていて、夫は会社へ、2人の娘は学校へ行くという生活なのですが、今は全員が家にいます。子ども達はオンライン学習が始まったので、朝起きて犬の散歩の後に課題をこなします。

午後からは、ケーキを焼いたり、裁縫をしたり、ピアノやクラリネットを練習したり、アートや工作をしたり、iPadで本を読んだり…。ミシンなんて中学校の家庭科の授業以来ずっと触っていなかったのに、子供と一緒に使い始めて、簡単なものなら縫えるようになりました。YouTube様様です!

図書館をはじめ、多くのサイトや企業が無料コースを提供してくれているのもありがたいです(記事の最後でいくつか共有しています。)

Photo:独りでケーキを焼けるようになった次女。作っているのは、レモンホエイケーキ。

また、娘たちはポートランド市のスイミングチームに属しているのですが、週に2日、そのチームが主催するZoomを使った陸上トレーニングにも参加しています。学校へ行けないのは寂しいようですが、お友達と郵便ポストを使ってお手紙やギフトを交換したり、ビデオコールをしたりとなんとかやっているようです。最近ではイースターエッグを近所の友達に配達しました。

Photo:近所のお友達のポストに届ける予定のイースターエッグ

それにしても、動画サイトを始め、読書もアートもほとんどがスクリーン有りき。以前はスクリーンタイムを制限していましたが、今はパソコンやタブレットがないと日常がまわりません。これまでスイムチームの練習や日本人学校の宿題に追われて、なかなか試せなかったことにも挑戦できて、悪いことばかりではないようです。

一方、夫は自宅勤務のほうが仕事も捗るようで、家にいることを全く苦にしていません。私と違って几帳面なこともあり、仕事をサクッと切り上げては換気扇の内側や網戸、ウォーターヒーター、庭の落ち葉など、気になる部分の掃除に精を出しています。

また、全国のアメリカ人がはまっているパン作りにも手を出しています。サワードウをタネから仕込んで、明日にはパンを焼けるはずです。

Photo:夫が仕込んだサワードウ

一方で、私は店舗やインタビュー取材がなくなってしまったので、デスクリサーチを中心に仕事をしています。仕事以外では、ガーデニングはもちろん、最近アメリカ人が食料不足の不安から手を出しているという家庭菜園や野草料理を楽しんでいます。もともと山菜やキノコ狩りは好きなのですが、春が来たことと、情報が増えたことに後押しされた感じです。

Photo:日本のよりもだいぶ大きなアメリカのつくし

最近は、ツクシ、たんぽぽ、アザミ、クローバーの天ぷらや、ハコベ、デッドネトルのおひたしをしたり、ハーブや食用花を植えたりしました。マグノリアの花が食べられることも知りました。子供には不評の野草料理ですが、春の味覚に一人満足しています。

Photo:我が家のマグノリアの花弁をピクルスにしてみました。味は残念ながらイマイチ!

それから最近、図書館の無料動画配信サイトKanopyで「鍵泥棒のメソッド」「転々」「歓待」と3本も立て続けに日本の映画を見ました。面白かったです。

あとは、気がついたら体重がなんと4キロも増えていました!でも、お酒も、娘や夫の焼くお菓子も諦められないので、犬の散歩時間を増やすことにしました。そして、そのお陰でオーディオブックを聞くようになりました。ミシェル・オバマの「マイストーリー(Becoming)」や、デビッド・セダリスの「カリプソ(Calypso)」など、著者本人が読んでくれるものが好きで選んでいます。

Photo:一日中、誰かが構ってくれるので、普段よりご機嫌な我が家の犬

今のところ、こんな感じでなんとかやっています。いずれ収束すると信じて、できるだけ人と接触しないよう、頑張りましょう!

[こちら人気の無料オンラインリソースです。良ければお子さんとの英語の勉強にもご活用下さい]
■Scholastic:幼児から中学生までカバーする学習教材大手のサイト
https://classroommagazines.scholastic.com/support/learnathome.html
■Epic!:児童書や子供向け動画を集めたサイト
https://www.getepic.com/
■Newsela:娘たちの学校でも使っているニュースを集めたサイト
https://newsela.com/

[参考]
https://govstatus.egov.com/OR-OHA-COVID-19
https://public.tableau.com/profile/oregon.health.authority.covid.19#!/vizhome/OregonHealthAuthorityCOVID-19DataDashboard/COVID-19EPIConfirmed?:display_count=y&:toolbar=n&:origin=viz_share_link&:showShareOptions=false
https://govstatus.egov.com/or-covid-19#executiveorders
https://www.koin.com/news/health/coronavirus/is-oregon-flattening-the-curve-of-the-coronavirus/

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