ビジネスパーソンが読むメディア。マーケティング、セールスプロモーション、パッケージの企画・開発に役立つアイデアと最新の情報を、世界中から配信。

スイーツ自販機で売上増!ウィズコロナでも成長するポートランドの洋菓子店

「パケトラ」読者のみなさま、こんにちは。ポートランド在住の東リカです。今回は、ポートランドの人気パティスリーが導入した、コロナ感染対策も万全な楽しいスイーツの自動販売機「PIX-O-MATIC(ピックス・オー・マティック)」をご紹介します!

24時間、美味しいスイーツを提供する自販機

Photo:スイーツの自動販売機「PIX-O-MATIC(ピックス・オー・マティック)」(Photo by Pix Patisserie)

「ピックス・オー・マティック」は、ポートランドにある人気フランス洋菓子店「Pix Patisserie(ピックス・パティスリー)」の店頭に置かれたスイーツの冷蔵自動販売機。コロナウイルスの影響で一時閉店中のパティスリー に代わり、美味しいデザートを24時間無人で販売しています。

2001年よりポートランドで営業を続けるピックス・パティスリーの創業者兼オーナーシェフのシェリル(Cheryl Wakerhauser)さんは、以前から閉店時間もスイーツを販売できる自動販売機の導入を検討していたそうですが、今回のパンデミックで営業規制を受け「今こそ」と設置を決めたそうです。

自動販売機には126点のアイテムが入るようになっていて、毎朝10時に清掃と商品の入れ替えが行われます。同店の人気アイテムであるマカロンやケーキはもちろん、同オーナーのバーで扱っている魚介の缶詰やカクテルミキサー、スタッフの手による手芸品まで、常時50種類程度の商品が準備されているそうです。

ピックス・オー・マティックを使ってみた

早速、ピックス・オー・マティックを体験しに出かけてみました。

Photo:マシンの利用客がいる際はスロープの手前で待つようになっている

シェリルさんによると、最も利用客が多いのは驚くことに「午後8時から午前2時の間」とのことですが、出かけた平日のお昼前でもマシンの前には既に利用客がいて、その後ろに1組の親子が順番を待っていました。

Photo:順番待ちのスポットに掲示された自動販売機の使い方を説明したシート

十分なソーシャルディスタンスが確保された店へのスロープの手前に並びます。ここで待つようにという指示と共に、ピックス・オー・マティックの使い方が掲示されています。

Photo:ミラーボールや電球で飾られた店頭

10分ほど待ち自分たちの順番が来ました。自動販売機の周りはミラーボールや電飾などで飾られ、ダンス系の音楽も流れています。

「夜、付近を歩く人に販売機の存在をアピールすることに加え、スイーツの購入を単なるテイクアウトのピックアップではなく楽しい体験となるようにしたいから。だって、このご時世、土曜の夜に行くところもないでしょう?」と笑うシェリルさん。

Photo:クレジットカードで購入する自動販売機。現金は受け付けない。

ピックス・オー・マティックの前は、確かに楽しい雰囲気でワクワクします。自販機の横にはスイーツメニューが張り出されていますが、機械の中にはトイレットペーパーやマスクをはじめ、デザート以外のアイテムも並んでいます。

Photo:商品のラインナップ(Photo by Pix Patisserie)

クレジットカードを差し込み、矢印ボタンでトレイを回転させ、欲しいものが手前に来たら扉を開けて取り出す仕組みです。これが意外と迷うので、ちゃんと説明を読まなければなりません。

Photo:購入したデザート。家に帰って美味しくいただきました。

同行した娘の希望を聞き入れ、2つのチョコレートケーキ(各12ドル)を購入しました。扉を開けて取り出すので、繊細なケーキですが形も崩れておらずキレイです。もちろんひんやり冷蔵されています。

ちなみにピックス・オー・マティックの売れ筋スイーツは、お店でも販売していたマカロンと「PatisFrance Chocolate Competition」コンクールの受賞歴もあるというデザート「Amelie」、そして売り上げの100%を「Don't Shoot Portland」と「National Lawyers Guild」に寄付するという新作デザート「Black Hearts Matter」だそうです。

また、グッズでは「モスコー(モスクワ)・ミッチ2020」とルース・ベイダー・ギンスバーグ最高裁判所判事が描かれたマスクが人気だとか。

Photo:ルース・ベイダー・ギンスバーグ最高裁判所判事が描かれたマスク(Photo by Pix Patisserie)

私たちが買い物を終えた頃には、シニアのカップルとアジア系のグループが順番待ちをしていました。パティスリーの元々のファンはもちろん、自動販売機のニュースを聞いて訪れる新客も多いようです。

コミュニティでの新客開拓にも貢献

毎週末「PIX-O-MATIC POP-UPS」と称して、ピックス・パティスリーの商品に加え他社の商品も販売しています。

Photo:ポップアップで登場したLucky Strikeの紅油水餃(Photo by Pix Patisserie)

例えば7月は、四川料理店「Lucky Strike」の坦々麺や紅油水餃、「Meals4Heels」のグルテンフリー&ビーガンボウル、また、前回こちらでもご紹介した「Urban Cheesecraft 」のDIYチーズキット等が登場します。

シェリルさんは、このポップアップを行う理由は次の3つだと教えてくれました。

1つは、コロナの影響で通常営業ができない中、売り上げを伸ばしたい地域のスモールビジネスのショーケースとなるため。2つ目は、お互いの顧客ベースをシェアして、より多くの人にそれぞれのビジネスを知ってもらうため。そして3つ目は、販売機の中身が頻繁に変わることで、ピックス・オー・マティックをより楽しく興味深いものにするためだそうです。

新たなビジネスモデルとしても定着の見込み

Photo:ピックス・オー・マティックを利用する2人組(Photo by Pix Patisserie)

気になるピックス・オー・マティックでの売り上げは、通常営業時の70%ほどだそうです。ただし、従業員数も20人から3人に減らしたためビジネスとして成立しているとのこと。そしてなんと、先月6月は昨年度の平均純益から47%アップを実現したそうです。

シェリルさんによると「自動販売機専用のクレジットカードのプロセスの機能がイマイチ」だったり「説明を読まずに販売機を使おうとして扉を開けられないユーザーがいる」といった問題点はあるものの、「長い営業時間中ずっと店に待機して、電話対応する必要がなくなった」「新しく販売機に入れるグッズを開拓するのが楽しい」と自販機ならではのメリットも大きいようです。

何よりも、コロナ禍の中で純益アップを実現させた自動販売機。これから他のビジネスでも利用が増えるかもしれませんね。

Pix Patisserie
http://www.pixpatisserie.com/
https://www.instagram.com/pixpatisserie/

▼パケトラおすすめの関連記事

自宅で簡単にチーズが作れるキット!DIYの聖地、ポートランド生まれの「アーバン・チーズクラフト」

フライドポテト戦国時代?!ジャガイモをめぐるオランダのパタット事情

このライターの記事

Top