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サステイナブル化が加速する、フランスのコスメ事情

パケトラ読者の皆さま、こんにちは。パリ在住のライター、大内聖子です。

私が暮らすフランスでは、サステイナブルなグッズの生産が加速しています。今、「サステイナブル」というワードはさまざまなシーンで目にしますが、これは特に地球の自然環境の維持に役立つ事業や開発、行動を表現したものです。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、フランスでは、2040年までに使い捨てプラスチックをゼロにする法律が可決されました。この20年以内に、日常生活で使用する多種多様な使い捨てプラスチックの使用を段階的に禁止することを計画しているのです。

もちろん、プラスチックの排除だけではありません。自動車業界、ファッション業界に次いで世界で第3位の汚染産業とみなされている化粧品業界の「サステイナブル化」も顕著になりました。

今回は、そんなフランスの化粧品ブランドがどのように環境に配慮しているのか、詳しくご紹介したいと思います。

薬剤師が生み出したブランド『LA ROSÉE(ラ・ロゼ)』

左:4種類の植物性オイルが配合された美容オイル。右:カモミールやローズ由来オイルが配合されたローション。

『LA ROSÉE(ラ・ロゼ)』は、2人の薬剤師が「自然の恵みをフル活用した、シンプルで効果的なクリーンビューティー の開発」を目標に、5年以上のテストと評価を繰り返し完成させたフランス生まれのドクターズコスメブランドです。

処方成分は生分解性にこだわり、 容器は再生プラスチックを使用し、過剰包装も排除しています。外箱もなし、キャップ部分のプラスチックフィルムもなし、といった陳列状態で並んでいるのですが、今の時代ではそういったミニマリズムの方が安心感を覚えます。

また、体への影響だけでなく、地球への影響も考慮している点も消費者から支持される理由のひとつ。『LA ROSÉE(ラ・ロゼ)』は現在、フランスのほとんどの薬局に置かれています。

人気ナンバーワンの植物オイルは、2019年にマリー・クレール・ボーテ大賞を受賞しました。

・ほぼ100%が天然由来

・90%以上の生分解性(物質が微生物などの生物の作用により分解する性質)

・ビーガン成分採用、動物実験なし

『LA ROSÉE(ラ・ロゼ)』の成分はこのように環境にやさしいため、ゴミに出す際も中を洗い流す必要がないとのこと。公式ホームページではボトルをゴミに出す際の分別の仕方までハッキリと書かれてあります。

https://www.larosee-cosmetiques.com/collections/visage/products/serum-visage-repulpant
出典:『LA ROSÉE(ラ・ロゼ)』公式ホームページより

オーガニックキュウリを使用した保湿クリーム。

この保湿クリームはオーガニックキュウリと海藻の成分でできているほか、チューブもサトウキビ由来のエコ・プラスチックで作られているのだとか。

また、品質の安全について意識する人が多いフランスでは、「ユカ(Yuka)」というアプリが広く浸透しています。

パッケージのバーコードをスキャンすると、即時に「Excellent(非常によい)」「Bon(よい)」「Médiocre(普通)」「Mauvais(悪い)」の4段階で商品を評価。主成分はもちろん、脂肪や糖分、添加物の含有量といった細かな分析結果も得られます。もちろん食品だけでなく、シャンプーやスキンケアなど、10万点以上のフランス製の家庭用品が評価の対象になっています。

実際の写真です。

『LA ROSÉE(ラ・ロゼ)』の、この保湿クリームは「ユカ(Yuka)」で満点の100「Excellent(非常によい)」をマーク。嘘偽りない、信頼度抜群のブランドです。
ちなみにこの「ユカ(Yuka)」というアプリは、「商品を購入する前に情報を得られる」といった点でも便利で、健康に留意する人にとっても、アレルギーを持つ人にとってもありがたいシステムです。このようなアプリの存在も、フランスのゼロウェイスト活動と密に繋がっていると言えるでしょう。

フランスが誇る大企業『L'OREAL(ロレアル)』の取り組み

消費者がよりサステイナブルな製品を求める現代。化粧品業界では、よりケミカルなものを減らす企業努力が続けられています。

フランスのパリ郊外、クリシーにある『L'OREAL(ロレアル)』本社。世界最大の化粧品メーカーです。

実は『L'OREAL(ロレアル)』は、昨年2020年に、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を考慮したビジネスモデルに転換すると発表しています。

さらに今年2021年の7月には、新たなサステナビリティ目標として「2025年までに全世界の拠点を100%再生可能エネルギーに移行する」こと、そして「2030年までに全製品の95%をサステイナブルにすること」を明らかにしました。2030年にはほぼ全てのプラスチックパッケージが、リサイクルしたものか植物由来のものに変わるというものです。

企業スローガンは、「L'Oréal pour le futur(未来のためのロレアル)」。

世界中に約4,000人の研究者を擁し、その研究部門の中心に「バイオサイエンス」を設置するなど、自然に負荷をかけない商品作りを急いでいます。また『L'OREAL(ロレアル)』グループのジャン=ポール・アゴン会長兼CEOは、「新型コロナウィルスによって世界は危機的状況にさらされたが、さらに危機的な状況をもたらすのが気候変動です。2013年からロレアルは、環境の危機的状況に対応するため、サステナビリティと企業責任を果たすことに取り組んできました。これから新たな変革の時代に入ります。」と述べ、このパンデミックを通して、サステナビリティへの取り組みが加速するとの見方を示しました。
そんな『L'OREAL(ロレアル)』のサステイナブル・プログラムの第一弾として、2021年5月に「ボリューム・ミリオンズ・アイラッシュ」という名のマスカラが発売になりました。

『L'OREAL(ロレアル)』の最新マスカラ。

今年5月に発売されたこのマスカラは、『L'OREAL(ロレアル)』の新しい戦略のひとつ。91%の天然由来の成分(主に菜種油、デンプン、グリセリン)からできていて、ブラシ部分とパッケージは再生プラスチックで作られたそうです。もちろんリサイクル可能で、環境を脅かさない成分でできたマスカラが新登場となりました。

「ボリューム・ミリオンズ・アイラッシュ」のブラシ部分。16ユーロ(約2,080円)と平均的な価格です。

「ボリューム・ミリオンズ・アイラッシュ」の使用感は、ほぼ今までのマスカラと変わりません。むしろケミカルなものが使用されていないからか、ほんのり良い香りがします。仕上がりに差がないのであれば、皆が環境にやさしい商品を手に取るでしょう。

自治体のゴミ処理場では、マスカラやリップといったリサイクル品は小さすぎて処理できないそうです。容器を構成する素材の特定や分離、洗浄、分類にとてつもない労力とコストがかかるのだとか。そういった観点からも、この「ボリューム・ミリオンズ・アイラッシュ」の登場は画期的ですし、「時代に沿った商品」と言えるでしょう。

 

パリの大型デパートにおける化粧品フロア。コロナ禍でオンライン注文が増えたからか、閑散としています。

現在、『L'OREAL(ロレアル)』の商品の59%が既にサステイナブルになっているとのことです。これは10年前の40%と比較して19%アップ。10年には40%アップに近い95%の商品がサステイナブル化されるということで、ハイピッチな開発が予想されます。

最後に

コスメ、スキンケアは女性にとって必需品ですが、使用後のことまで考える人は少ないと思います。個人の美を追求するだけでなく、自分が生活している社会と、その未来に責任を持つ、という目線で化粧品を選ぶこともサステイナブルに繋がります。
フランスにおける企業努力はこのように進んでいますが、どちらかというと目立つのは「変化を求める消費者の声」です。

若者を中心に、どんどん「サステイナブル化」するフランス。コスメやスキンケアについては「持続不可能」なものがすっかり嫌われるようになりました。これからは、人間も、地球と一緒に「綺麗になる」ことが不可欠となりそうです。

 

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