急成長する米国ノーロー市場
ノンアルコール飲料市場におけるアルコール代替品の需要が高まっています。ビール分野ではノンアルビールや微アルコールビールが日本でも一般的になっていますが、米国や欧州のノーローと呼ばれる商品分野ではより高級なワインや蒸留酒等の嗜好飲料分野の市場が拡大しつつあります。
これらの市場の成長は、単にアルコールの摂取を控えるということだけでなく、ハレの日やお祝いの飲み物を楽しみたいというライフスタイルニーズや願望の高まりによるものです。最近では”Dry January”というキーワードで、飲む機会の多い12月を受けて、翌月の1月にアルコールを抜く習慣も定着していますが、新型コロナウイルスのパンデミック以降、生活をエンジョイしたり、あらゆる機会をお祝いの瞬間にしたいという消費者ニーズが高まっています。
飲料会社は、アルコール分を省きながら味と香りを再現する技術を活用して、ノンアルコール版飲料を創り出すイノベーションを行っています。
アルコール飲料をノンアルコールバージョンで再現することに関しては、大きなマーケットが期待されています。Seedlip や Athletic Brewing Company などのブランドに代表されるアルコール代替品の人気の高まりは、マインドフルな飲酒と飲酒を控える消費者の増加に対応し、ノンアルコール飲料が従来のアルコール飲料から市場シェアを獲得する可能性を持っています。ノンアルコール飲料は、多様化と革新の十分な機会を提供し、企業が競争の激しい市場で差別化を図ることを可能にします。モクテルと呼ばれるプレミアム ノンアルコール カクテルの出現により、飲料の提供において創造性と洗練性を高める新たな道が開かれました。
フランスのリーディングメーカーであるJNPRは著名なイタリア人バーテンダーに、アルコールフリーおよびシュガーフリースピリッツのフレーバーの開発を委託し、商品ラインを強化するとともに、輸出市場を攻略するために、2022年に投資家から110万ユーロを調達しています。
今日、ノーロー市場はニュービジネスのスタートアップとしても注目されています。
Curious Elixirs や Kin Euphorics などのブランドは、ハーブ、スパイス、アダプトゲン(ストレスなどの抵抗力を持つ天然ハーブ)のブレンドでこのカテゴリーの先駆者となり、消費者に従来のカクテルに代わる高級な選択肢を提供しています。
企業は、常に革新を続け、斬新なフレーバーや配合を導入することで、変化する消費者の好みを活用し、ノンアルコール飲料のダイナミックな市場動向を先取りしています。
2019 年にオーストラリアで起業したLyre's 社は、この分野のリーダーで、約 20 種類のアルコールフリー製品を開発して、世界に展開しています。中国向けにはアルコールフリーの白酒も開発しました。
大手蒸留酒メーカーもこれらの市場に興味を持ち、Perno ricardは2021年にCedersを買収し、Diageo は英国を拠点とする先駆的なブランドseadlipに出資しています。
Diageoが資金を提供し支援している飲料アクセラレータDistill Ventures社は投資の 4 分の 1 をノンアルコール分野に費やしており、米国やドイツで事業展開しています。
イノベーションの方向
創造性は依然として、ノーロー市場における成長の鍵で、有名な蒸留酒 (ジン、ウィスキー、ラム酒など) を再現しようとするものと、差別化されたオリジナルのドリンクを含みます。後者の代表はフランスの新興メゾン プルリエル・ノローはジンに似た芳香蒸留物と生姜ベースの食前酒で水をテストした後、活力を与える特性を持つ植物ベースの飲料の開発に取り組んでいます。これらの「機能性」飲料には、認知機能に影響を与えるビタミンや気分を高揚させる物質が添加されており、no-low の多様化の軸になっています。
また、フランスの若い企業である Sober Spirits は、古典的な脱アルコールとは異なる抽出プロセスで商品開発をしました。
Le petit beretは、ワイン部門で独自の製造プロセスで際立っています。フランス美食の世界からも関心が高まっており、三ツ星シェフのジル・グージョンは、アルコールを含まないモクテルと食事の組み合わせを作り出しています。
ワイン部門、特に赤ワインにおいて、アルコールフリーの概念を確立するのは、蒸留酒部門よりも難関です。フレンチ・ブルームは2023年ワールド・スパークリング・ワイン・アワードにおいて、2年連続で世界一のノンアルコールスパークリングワインとして選ばれました。
フレンチ ブルームの価格は約 30 ユーロで、シャンパンの平均価格とほぼ同等です。他の多くのノー・ローも、アルコールの同等品と同じ価格設定です。したがって、ノーロー市場はマーケティングが鍵となるプレミアム市場といえます。スピリッツのパッケージに似ていながらも、ダイナミックでカラフルなグラフィックを使用したオリジナルのラベルデザインが際立っています。
調査機関Statistによれば、ノンアルコール飲料市場における総売り上げは2024年に1兆5,400億米ドルに達し。そのうち、家庭での売上(スーパーやコンビニエンスストアでの売上)は、2024年には9,533億米ドル。レストランやバーで生じる家庭外での売上は 5,873 億米ドルに達します。米国内での売上は毎年 5.72% 増加すると予想されています。
ノンアルコールボトルショップも急増
ノーロー市場が盛り上がる中で、ノーロー製品を購入できる小売店も出現しています。2020年以前は、アメリカの消費者がノンアルコール飲料(NA)の専門店を見つけるのは困難でした。しかし、米国初のノンアルコールボトルショップを自称するSpirited Away(千と千尋の神隠しの英語タイトル)が2020年にニューヨーク市にオープンして以来、同様の店舗が全米の都市にオープンしています。
ニールセンによると、2021年8月から2022年8月にかけて、北米産飲料の米国での総売上高は3億9,500万ドルに達し、前年比20.6%という驚異的な成長率を示しています。確かに、現代のゼロプルーフ飲料(ノンアル飲料)は複雑な風味とおしゃれなパッケージを提供し、ますます魅力的になっています。しかし、多くのノンアルコールボトルショップは、アルコール度数ゼロの商品を販売するだけでなく、同じ考えを持つ人々がアルコールなしで集まり交流する出会いの場としても機能しています。これらのショップは、テイスティング、プロのバーテンダーによるモクテル作りの講習会、本の朗読などを含む関連イベントを通じてコミュニティを盛り立てています。
日本でも神田万世橋に日本初のノーローショップ「LOW-NON-BAR」がオープンしています。「お酒は飲めないけれど、バーには行きたい。あるいはお酒はあえて飲まないけれど、バーには行きたい。」という人が楽しめるお店です。