グアテマラと聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
筆者は訪れる前は「コーヒーの国」という印象が強く、具体的にどんな場所なのかは、あまりピンときていませんでした。しかし実際に足を運んでみると、歴史と文化が息づく街並み、そしてコーヒーと深く結びついた街づくりが広がっていました。
本記事では、グアテマラの古都アンティグアに焦点を当て、観光プロモーションや環境に配慮したコーヒー生産、さらには植民地時代の建物を活かしたスターバックスの店舗についてご紹介します。
廃墟を活かした街づくり
アンティグアは1543年に首都として創設、スペイン統治下で美しいコロニアル様式の街並みが築かれました。最盛期には人口6万人を誇りましたが、1773年の大地震によって大きな被害を受け、首都は現在のグアテマラシティに移されました。当時の教会や修道院の多くは補修・保存され、今でも街の至るところにその面影を残しています。
そのたたずまいは、かつての偉容と儚さを同時に帯び、アンティグアに独特の雰囲気をもたらしているように思います。
1979年には、街全体がユネスコ世界遺産に登録され、歴史の名残を感じられる街景を求めて世界中から旅行者が訪れるようになりました。

高台から眺めるアンティグアの街

ライトアップされる街の遺構
またアンティグアは3つの火山に囲まれ、火山灰が積もった肥沃な土壌と昼夜の寒暖差が、コーヒー栽培に適した環境を生み出しています。街には多くのカフェがあり、歴史と共に豊かなコーヒー文化が根付いています。地元の人々にとってもコーヒーは生活の一部です。旅行者もまた、街のいたるところでコーヒーを楽しむことができ、その文化の深さを実感できるでしょう。
遺産を受け継ぐラグジュアリーホテル
アンティグアには、歴史を継承しながら現代に活かされた建築が多く見られます。
その代表例が「ホテル・ムセオ・カサ・サント・ドミンゴ (Hotel Museo Casa Santo Domingo)」です。
かつて修道院だった建物が、1989年に宿泊施設として再生されました。廃墟を活かした修復は、過去と現在の融合を象徴するものとなり、アンティグア屈指のラグジュアリーホテルとして人気を博しています。
また館内の中庭は一般に無料開放されており、訪れる人々が修道院の歴史や美しい庭園を楽しめる憩いの場となっています。

中庭



併設の博物館

崩れたフォルムを残した補修が特徴的
「ホテル・ムセオ・カサ・サント・ドミンゴ」は持続可能な観光を推進しており、太陽光パネルの設置や水の予熱システムの導入、INAB(国立森林庁)によって認証された薪の使用など、再生可能エネルギーを積極的に取り入れています。
また「プライドルート(Ruta del Orgullo)」と呼ばれるプロジェクトを通じて、アンティグア市内の歩道や花壇の清掃・維持管理を行っており、街全体の景観向上に貢献しています。これらの活動は、アンティグアの歴史を守りながら、未来へと受け継いでいくための重要な取り組みだと思います。
カフェ文化を支えるコーヒー農園のこだわり
アンティグアの街には数多くのカフェがあり、コーヒー豆は近郊の農園から直接届けられています。コーヒー農園「フィンカ・ラ・アソテア(Finca La Azotea)」では体験やイベントを通じて、農法やコーヒーの魅力を提供しています。
この農園では、1株ずつ丁寧に育てられた苗木からコーヒー豆を栽培し、完熟した実だけを手摘みで丁寧に選別しています。収穫後は天日乾燥させることで、じっくりと風味を引き出します。化学農薬は一切使用せず、コーヒー豆の皮を発酵させたものと馬糞を養分とすることで、土壌の豊かさを維持しているようです。土が痩せては持続的な栽培はできない——この信念のもと、環境と調和した農法が実践されています。
この農園では、生産だけでなく観光体験にも力を入れています。
農園ツアーや試飲体験のほか、地元アーティストによるイベントなども開催され、訪れる人々にコーヒー文化をより深く楽しんでもらう工夫がされています。また博物館を併設しており、訪れた人々がコーヒーの歴史や製造工程を学べる場となっています。
こうした取り組みを通じて、アンティグアのカフェ文化がより一層深みを増し、街全体の観光プロモーションにもつながっていると考えられます。
歴史と未来をつなぐ場所、スターバックスの役割
アンティグアのカフェの中でも特に目を引くのが、植民地時代の建築を活かしたスターバックスです。「世界一美しいスターバックスの一つ」とも称されるこの店舗は、アーチ状の門をくぐると美しい中庭が広がります。

奥行きが深く、開放的な空間
各部屋が中庭を囲むように配置されている建築は、アンティグアでは定番のスタイル。
コロニアル建築の特徴であり、その土地らしさを感じられる空間となっています。
伝統的な建物ながら、スターバックスらしい洗練された雰囲気が漂い、モダンな感覚を醸し出しているように思えます。
さらに緑豊かな装飾や、壁にはグアテマラの国鳥「ケツァル」のペイントが施され、アンティグアの文化や自然が感じられる演出がなされています。

国鳥、ケツァルのペイント
スターバックスは、グアテマラに「ファーマーサポートセンター」を設立し、生産者への技術支援を通じて持続可能なコーヒー生産を支えています。この取り組みではコーヒー栽培と加工に関するエキスパートであるアグロノミスト(農学者)が、生産者と連携し、コーヒー豆の品質向上や収穫量の増加、生産コストの管理などをサポートしています。また土壌分析や新品種の栽培支援、気候変動に対応するためのトレーニングなども行っています。
「ファーマーサポートセンター」は地域のコーヒー産業の発展を支える重要な要素になっていると考えられます。持続可能な農業を推進することで、高品質なコーヒーの生産が可能となり、その結果、地域のブランド価値が高まり、観光客の誘致にも寄与しているのではないでしょうか。アンティグアのスターバックスでは、美しい建築とともに、世界的なコーヒーブランドがこの地の歴史や文化と調和しながら根付いている様子を感じ取ることができます。
グアテマラのコーヒーが世界中で愛される背景には、アンティグアの観光地としての魅力も関係しているのかもしれません。アンティグアの街を歩き、現地のコーヒーを味わうと、その一杯の背後に文化と景観の調和を感じます。
歴史的建築を活かした街づくり、コーヒー農園での丁寧な農法、そしてカフェ文化の発展——それら全てが合わさり、アンティグアの魅力は確立しているのです。
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