アメリカのチョコレート展示会で見かけたおしゃれなパッケージデザイン
世界のチョコレートブランドが集まる国際的なイベント、「サロン・デュ・ショコラ(Salon du Chocolat)」が先日ニューヨークのジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターで開催されました。
このチョコレートイベントはパリで始まり、現在では世界の主要都市で開催されている、世界のチョコレートブランドや業界関係者も集まる大きなイベントです。チョコレートを作るショコラティエやパティシエ、チョコレート好きの方まで多くの人々がやってきていました。そんなイベントで見つけた、おしゃれなチョコレートのデザインパッケージやトレンドを紹介します。
展示会場では各チョコレートブランドのブースが並び、試食が行われ、ブランドによってはこのイベント限定の商品や特別価格での販売があります。会場にはステージもあり、シェフたちによるクリナリーショー(料理ショー)が開催され、チョコレート作りのデモンストレーションや、フードビジネスの専門家によるトークショーなども行われます。新しいチョコレートブランドを発見したり、チョコレートにまつわるさまざまな講演が行われたり、直接質問する機会も得られ、チョコレートに関連する仕事をしている人やチョコレート好きの人にとって貴重な機会となっています。
面白いチョコレートパッケージ
アメリカでは特にパンデミック以降、プレミアムチョコレートへの注目が集まり、売上が急増しています。そんなプレミアムチョコレートに彩りを添える存在となっているのが、プレミアム感を高めるためのパッケージで、展示会では面白いパッケージの商品をいろいろ見られました。
例えばこちらは、アメリカ・メイン州のチョコレートブランド「Bixby Chocolates」の商品ですが、「サーディン缶」を模したデザインになっています。ダークチョコレートとミルクチョコレートがあり、缶詰の蓋を開けると中からはチョコレートのサーディンが出てくるという面白い商品になっています。
シーフードの缶詰はここ数年大人気となっており、洗練されたおしゃれなデザインの缶詰がいろいろ登場しています。そんな流行を取り入れた、ロブスターなどのシーフードで知られるメイン州のブランドらしい面白いチョコレートのパッケージです。
こちらは、ニューヨーク州のチョコレートショップ「EJ Bonbons & Confections」のまるで宝石箱に入ったカラフルで美しいボンボンチョコレートです。
厳選された上質な素材を使用して作られた上質な香りと味のボンボンチョコレートは、アーティスティックな美しい色付けがされていて、まるで宝石のようなチョコレートです。そんなチョコレートの数々が宝石箱のような豪華なボックスにぎっしりと入っています。3段の引き出し付きの商品ボックスで、贈り物としてはもちろんですが、パーティなどの多くの人が集まる時にも重宝する商品です。ボックスがチョコレートの見栄えをさらに高めています。
レバノンのチョコレートブランド「Omniya」は、チョコレートからピスタチオなどを用いた中東のスイーツまでバラエティに富んだ商品が揃っていて、いろいろな味を楽しめるお店でした。最近、人気になっているピスタチオがたっぷりと入ったドバイチョコレートなども販売しています。
いろいろな商品が入ったアソートチョコレートボックスも販売されており、少し中東風なエキゾチックな雰囲気のおしゃれなパッケージで目を引きました。ブランドカラーである上品なグリーンとゴールドの組み合わせで、手触りが良い上質な紙のボックスが使用されています。形に一工夫がされていてクラフト感があり、さらにゴールドのリボンで上品さを引き立たせている、美しいチョコレートボックスです。
熱いビーントゥバーチョコ
世界各地のカカオの産地から、それぞれローカルのカカオ豆に特化したシングルオリジンのビーントゥバーチョコレートのブランドがいろいろやって来ていました。ビーントゥバーチョコレートは、チョコレートの中でも特にホットな分野で、今後も大きな成長が予想されています。ローカルの信頼できる農家からフェアトレードでカカオ豆を仕入れ、カカオ分の高い板チョコレートを少量生産しています。パッケージはクラフト感のあるカラフルなデザインが共通となっていますが、それぞれの国やブランドならではのこだわりが感じられる個性的な模様やモチーフが加えられています。
「Fruition Chocolate Works」は、2011年に創業したニューヨーク州キャッツキルズのチョコレートブランドで、世界各地からカカオ豆を仕入れ、豆からチョコレートを作るビーントゥバーチョコレートのブランドとして知られています。紙のように薄く繊細な板チョコレートが有名で、ホールフーズなどのスーパーマーケットでも見かけますが、芸術的なパッケージに包まれていて特別感があります。カカオの配合が40%ほどから100%まで幅広い商品があり、バニラやミント、シナモンなどさまざまな香辛料で味付けされたフレーバーや、パッションフルーツなどフルーティなものもあります。
「Conexión Chocolate」は、南米エクアドルのビーントゥバーチョコレートブランドで、エクアドルの高品質な「Arriba Nacional」という特別なカカオを使用しています。Academy of Chocolate Awardsの賞の受賞歴もある高品質なチョコレートで、商品はカカオ分40%から100%まであり、フルーツや香辛料などで味付けされたいろいろなフレーバーの板チョコレートや製菓用のクーベルチュールチョコレートを販売しています。
商品のパッケージには、エクアドルの伝統的な織物の生地のデザインが使用されていて、エクアドルの文化が垣間見えます。また、唐辛子には赤と緑、パイナップルには黄色と緑とオレンジなど、商品の中身に合わせた色の配色のデザインになっています。このようなパッケージデザインは日本でも、日本の文化を感じさせる素敵なデザインが作れそうだと思いました。
「Argencove Chocolate」は、中米のニカラグアのカカオを使用したチョコレートブランドで、カカオ分70%のさまざまなフレーバーの板チョコレートを販売しています。パッケージは、アステカ模様を現代風にした幾何学模様が、赤や水色、黄緑色など鮮やかな色とともに使用され、エキゾチックで印象的なデザインになっています。
「Korokoro Cacao Chocolate」は、コロンビア産カカオのビーントゥバーチョコレートのブランドです。2024年に創業したばかりの新しいブランドのため、商品はカカオ70%のダークチョコレートの板チョコレート1点のみですが、コロンビア産カカオが使用されたこだわりのチョコレートです。
パッケージは珍しいピローケースに入っており、色も鮮やかなオレンジ色で目立ちます。ピローケースのパッケージは、丸みを帯びていて見た目に優しくおしゃれな印象を与えます。また、丸みを帯びていることから箱の中にほどよい空間が生まれ、中身を守るという意味でも実用的に感じました。ホールセール用の段ボールもおしゃれなデザインとなっています。
「FuWan Chocolate」は、台湾のリゾートブランドから派生して誕生した、珍しい台湾産のカカオを使用したビーントゥバーチョコレートのブランドです。台湾の先住民、オーストロネシア人と四季をテーマとするなど、文化を反映した面白いテーマの板チョコレートの商品などがあります。
「EKA Chocolate」は、2019年に創業したマダガスカルのビーントゥバーのチョコレートブランドです。マダガスカル産のカカオは、果実感がある風味豊かでフルーティな酸味があるのが特徴です。そんなマダガスカル特有のカカオを使用し、高カカオ分のダークチョコや、バニラ、フルーツを使用したフレーバーの商品を販売しています。パッケージは、カカオやフルーツ、自然の恵みを前面に出した、南の島らしいトロピカルなデザインのパッケージが印象的です。
香辛料も活躍
今回の展示会では、商品化されたチョコレートを求める人々だけでなく、製菓に興味がある人々も多くやって来ていました。
チョコレートの歴史を遡ると、カカオは飲料や香辛料として使用されてきたもので、いろいろな香辛料との相性が良く、チョコレートを語る上で香辛料は外せないものとなっています。そんな関連する香辛料のブランドもいくつか展示会に登場していました。
こちらは、バニラの名産地であるマダガスカルの「EKA Chocolate」が販売していた「Trésor d'Épices」のバニラビーンズです。材料でありながらも見た目も大切にしており、試験管風のおしゃれなパッケージに入り、プレミアム感のある商品となっています。
チョコレートブランドだけでなく、ニューヨークのクイーンズを拠点とする個性的な香辛料ブランドもやって来ていました。「Burlap & Barrel」は、社会や環境を良くしていくことを主目的にした「ソーシャルエンタープライズ」という面白い形態の会社で、世界各地のその産地ならではの味や質にこだわった、シングルオリジンの香辛料を手掛けています。例えば、ベトナムのフエ周辺産のシナモン「Royal Cinnamon」や、アフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈産のクミン「Wild Mountain Cumin」など珍しいシングルオリジンの香辛料の商品がいろいろありました。
こちらは、そんな香辛料を使用したテキサス州オースティンのチョコレートブランド、「Madhu Chocolate」の板チョコレートです。チョコレートの味を決める大切な原料となる香辛料についても知識を深められるとても興味深いプレゼンテーションでした。
今回ニューヨークで開催された「サロン・デュ・ショコラ(Salon du Chocolat)」は、ニューヨークやヨーロッパのおなじみのチョコレートブランドから、世界各国の新興ビーントゥバーチョコレートブランドまでバラエティに富んだブランドが集まり、とても活気のあるイベントとなっていました。
チョコレートと言えば、現在、需要が増えている中、カカオ豆の主要産地であるコートジボワールやガーナなど西アフリカの国々が天候不良で不作だったこともあり、カカオ豆の価格が高騰し、チョコレートの値段が上昇してきています。西アフリカでは大手業者や政府、業界団体などの利権構造により実際のカカオ豆の生産者に利益が渡りにくいことが知られていますが、そんな構造を覆そうと世界各地でローカルなカカオ豆を用いて製造まで手掛ける「サステナブルなビーントゥバーチョコレートブランド」が増えてきています。今回の展示会でもそういったブランドの存在感がありました。
プレミアムチョコレートで大切なのは、個性的な高品質のチョコレートであることはもちろんですが、同時に重要なのが、コンセプトやデザインなどのブランディングです。今回の展示会では、一目見たら覚えてしまう個性的なパッケージや、サステナブルやシングルオリジンを謳うブランドが多く、それぞれの地域性や文化を表現しながら、カラフルで高級感のあるおしゃれなデザインの商品が魅力的なブランドとしていろいろ見られました。
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