パケトラ読者のみなさま、こんにちは。ポルトガル在住の東リカです。
世界で最もワイン好きだと言われるワインの消費大国ポルトガル。紀元前から続くワインの生産地でもあります。今回は、そんなポルトガルが誇るワインのパッケージをご紹介します。
ポルトガルのワイン事情

スーパーのワイン売り場(筆者撮影)
ワインはポルトガル人にとって、なくてはならない飲料です。OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)の2022年調査によると、ポルトガル人は1人当たり年間で約90本(67.5L)と世界で最もワインを消費しているとされています。
ポルト近郊で生産される酒精強化ワイン「ポートワイン」が世界的に有名ですが、ポルトガル全土でワインが作られており、いわゆる「普通の」ワインも山のようにあります。ワインショップや酒屋はもちろん、小さなスーパーマーケットでも産地別にずらりと国産ワインが並んでいます。そして、この競争の激しい陳列棚で手に取ってもらえるよう、消費者の目に留まって覚えてもらえるよう工夫を凝らしたパッケージがたくさんあります。
ここからは、スーパーの売り場で筆者の目に飛び込んできたワインを紹介します!
世界で人気のロゼワイン

独特のフラスコ型ボトル入りの「マテウス・ロゼ」オリジナルと「マテウス・ミディアム・スイート・ロゼ」(筆者撮影)
まずは、日本でも流通しているポルトガルワイン「マテウス(Mateus)」です。1942年の創業当時から生産している微発泡のロゼワインが特に有名で、ピンク色のワインをたたえた独特のフラスコ型ボトルも印象的です。このボトルは第一次世界大戦の兵士のフラスコから着想を得たものだそうです。

187mlと飲みきりサイズの「マテウス」(筆者撮影)
現在は、ストローを挿して飲むようなミニボトルやポップな記念パッケージも登場しています。
(参考:https://www.mateusrose.com/en/)

「音楽」をテーマにした「マテウス・ロゼ」の限定版ボトル(写真提供:MATEUS Ltd)
猫が目印の緑のワイン

猫のラベルの「Gatão」(筆者撮影)
続いても、日本で購入可能なポルトガルの人気ワイン「ガタオ(Gatão)」です。このワイナリーは、ポルトガル語で「緑のワイン」という意味の「ヴィーニョ・ヴェルデ」地方にあるガタオ村で1905年に創業したという老舗です。「緑のワイン」の代名詞にもなっている若くて微発泡の白ワインが定番ですが、ロゼや赤もあります。
ワインの名前は村名「ガタオ」からきているそうですが、「gatão」とはもともと「大猫」という意味であることから、ラベルには猫が採用されています。
また近年は、よりエコで手軽な缶入りも登場し、若い世代にアピールしているようです。
(参考:https://www.instagram.com/gatao_vinho/)
毎年異なるアーティストが洗練されたラベルを作成

「エスポラン・へゼルヴァ」(筆者撮影)
「エスポラン(Esporão)」はポルトガル南部、アレンテージョ地方を代表するワインメーカーです。1267年から引き継がれた荘園エスポランでワイン作りが始まり、1985年に最初のワインが出荷されたそうです。現在は、北のドウロ地方やビーニョ・ヴェルデ地方のワイン、またオリーブオイルやビールも手がけています。2012年より、オーガニック、減農薬栽培に転換し、すでにヨーロッパ最大級を誇るオーガニック栽培の自社畑を所有しているそうです。
エスポラングループにはいくつものワインブランドがありますが、「エスポラン・へゼルヴァ(Esporão Reserva)」と「エスポラン・プライベートセレクション(Esporão Private Selection)」は毎年異なるアーティストを招聘(しょうへい)し、アレンテージョ地方のワイン文化とブランドのアイデンティティを反映したデザインを依頼するそうです。そのため、ヴィンテージごとにユニークなラベルが楽しめます。
写真左は2023年のもので、Eduardo Aires氏の手によるもので、シンプルながらメタリックなカラーのグラデーションが洗練された印象です。写真右は2022年のもので、Alexandre Conefrey氏が手がけました。アレンテージョ地方の巨石遺跡が美しく描かれています。なお、ボトルには「Herdade do Esporão(エスポラン荘園)」の文字と建物がエンボス加工で入っています。
(参考:https://esporao.com/pt)
子どものイラストをラベルに採用

左がマチルダちゃん作、右がマテウスくん作のマリャディーニャ牛(筆者撮影)
「マリャディーニャ(Malhadinha)」は同じくアレンテージョ地方にある「マリャディーニャ・ノヴァ荘園(Herdade da Malhadinha Nova)」の高品質なワインブランドです。
ワイナリーの創始者家族の娘、マチルダちゃんが描いたマリャディーニャ牛(地元で持続可能な手法で育てられているアレンテジャーナ牛)がブランドの顔となっています。
また、家族が増えるに従って、子供たちの名前を冠したワインやイラストが登場します。素朴で温かみのあるデザインは、ブランドのアイデンティティの1つである荘園の環境や家族の絆を表現しているそうです。
手頃なリスボンのワイン

リスボンの街並みが描かれた「Porta 6」(筆者撮影)
「ポータ6(Porta 6)」は、「ヴィディガル ワインズ(Vidigal Wines)」のワインブランドです。リーズナブルな価格で、イギリスで最も売れているポルトガルの赤ワインだそうです。
リスボンのアルファマに暮らすドイツ人の路上画家であるハウケ・ヴァグト(Hauke Vagt)氏がリスボンの街並みを象徴する28番トラムの路線にインスピレーションを得て描いたカラフルなラベルが目を引きます。ポルトガルのお土産にも喜ばれそうですね。
(参考:https://www.porta6.com/)
切り抜いたデザインのラベル

牛の頭の形に切り抜かれたラベルの「Cabeça de Toiro」(筆者撮影)
ワインのパッケージは、長方形のラベルが貼られたものが多いですが、そのラベルを切り抜いたものもあります。例えば、カベッサ・デ・トイロ(Cabeça de Toiro)は、ポルトガル語で「雄牛の頭」という意味ですが、ラベルは牛の頭が切り抜かれ、ワインの色が見えるデザインになっています。
(参考:https://cabecadetoiro.com/en)

「Pouca Roupa」(左)と「VolteFace」(右)のラベル(筆者撮影)
また、ポルトガルを代表するワインメーカー、ジョアン・ポルトガル・ラモス(João Portugal Ramos)氏のアレンテージョのワインブランド「ポウカ・ロウパ(Pouca Roupa)」のラベルでは、その文字が切り抜かれています。ちなみにポウカ・ロウパとは、「少しの果肉」のぶどうになる厳しい環境、もしくは「質素な生活(少ない蓄え)」を尊ぶ、という意味合いからアレンテージョ地方のニックネームとして使われる言葉だそうです。
(参考:https://www.jportugalramos.com/pt/pouca-roupa/)
一方、「180度の転換」を意味する「ヴォルト・ファス(VolteFace)」のワインは、ミステリアスなマスクがラベルになっています。このブランドは、アレンテージョ地方でテレザ・メテロ・ディアス(Teresa Metelo Dias)氏という女性が創業したもので、彼女がこのマスクに相応しいミステリアスで強く美しい女性として宣伝塔の役割も担っています。
ヘビメタバンドがプロデュース

兜をかぶったアイアン・メイデンのマスコット「エディ」が異彩を放つ(筆者撮影)
最後に陳列棚で最も目を引いたイギリスのヘビーメタルバンド「アイアン・メイデン」のワインを紹介します。
このワインは、バンドの2021年発売の最新アルバム「戦術」に収められたシングル曲のひとつ「In Darkest Hour」にインスパイアされているそうです。そのため、象徴的に、2021年にドウロ地区で収穫されたぶどうから「最も暗い赤色」をしたワインが造られたそうです。なお、ドウロ地方は、世界遺産にもなっているワインの産地です。
こちらは、日本風の背景にバンドのマスコットである「エディ(エディ・ザ・ヘッド)」がどーんと描かれた紙に包まれたパッケージで、ポスターのようにコレクターアイテムになっているそうです。上部のタグには「エディのブレンド」と書かれています。
(参考:https://www.ironmaidenbeer.eu/collections/beer-and-merchandise/products/iron-maiden-darkest-red-douro-wine-750ml)
ポルトガルのワインのパッケージ、いかがだったでしょうか。
次回は、ビールのパッケージについてお伝えします!
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