化粧品やスピリッツなどのラグジュアリー商品は、その高級感や希少価値をパッケージを通じて表現しています。今回はそんなラグジュアリーなパッケージをご紹介します。
ベイン・アンド・カンパニーがアルタガンマと共同で実施した最新レポートでは、高級パーソナルグッズの支出額は2025年に3,580億ユーロ、2035年までに年間4%から6%の成長を遂げると予測されています。
マルチセンサリーパッケージ(Multisensory Packaging)の増加
香水やコニャック、シャンパンなどの高額商品はその価値を訴求するために、パッケージに注力しています。視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚といった"五感"を使ってブランド体験を高めています。
Maison Vendôme(メゾン・ヴァンドーム)のダイヤモンドを思わせるスパークリングワイン
2人の創業者によって設立された「Maison Vendôme」は比較的新しいブランドで、アンリ2世の寵愛を受けたディアーヌ・ド・ポワティエが、永遠の若さを求めて、ダイヤモンドのジュエリーをワインに浸していたと言われる伝説をもとにボトルを設計しました。
Cantini Vetro社製の特注の六角形のボトルには、ダイヤモンドのようなカットが施されています。ボトルの構造は、ワインの映り込みの変化を際立たせるよう設計され、細身のボトルネックには金ラッカーがあしらわれています。このグラフィカルなディテールは、ボトルのコルクを隠す24金メッキスチール製のキャップ(Decayeux)にも引き継がれています。非対称に作られたキャップには、精巧に幾何学模様を描いたダイヤモンドのロゴが刻まれています。
Darphin「Stimulskin Plus Sculpting Cream」
この化粧品パッケージは、ザマック材(亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅を主成分とする亜鉛合金)を使用し、ボトルをしっかりと固定・密閉するためのプラスチックインサートで補強されています。複雑な2つのパーツからなる構造は、継ぎ目がほとんど見えない精巧・緻密な技術で仕上げられています。
コニャックメーカー「Martell(マーテル)」新ガラス新素材でボトル設計
「Martell」は、スマートフォンなどに広く使用され、強度、透明性、そして様々な形状へのカット加工性に優れている板ガラス製のボトル試作品で、高級スピリッツのパッケージデザインに革新をもたらそうとしています。中国に拠点を置く材料科学企業「Vitalink Technology Co., Ltd」と提携し、平らな形状で製造され、大きなシート状に加工される板ガラスをスピリッツのパッケージに活用しています。このガラスは優れた重量比強度を誇り、ボトル製造に使用することで製造工程で必要な材料の量を大幅に削減し、より軽量なボトルと優れた感覚体験を実現します。
「Aesop(イソップ)」のサステナブル・ラグジュアリー
オーストラリアの高級スキンケアブランド「Aesop(イソップ)」のパッケージは、世界のラグジュアリーブランドの中でも評価が高く、「静かなラグジュアリー(Quiet Luxury)」、"エコなのに高級"の代表格として語られます。また、「Aesop」のパッケージはミニマリズム・素材へのこだわり・サステナビリティを軸に構築されており、アンバーガラスは光から成分を守るための機能性と、再生ガラスの使用による高いリサイクル性を備え、「Aesop」らしい落ち着いた美しさを実現しています。
飾って美しい詰め替え香水ボトル「Louis Vuitton Perfume」
他のラグジュアリーブランドと比較すると、LVMHの詰め替え(リフィル)戦略は「グループ全体での循環性推進」が特徴で、他社とは方向性やスピード感に違いがあります。「Louis Vuitton」が採用している「詰め替えパッケージ(リフィル)」の考え方は、単なる"補充用"ではなく、ブランド哲学とサステナビリティを両立させるためのデザイン思想が背景にあります。
詰め替えは"節約"ではなく"持続可能なラグジュアリー体験"として設計され、本体は長く使える高品質素材とブランド価値を損なわないデザイン性を保ち、中身を交換することで、高級品でも環境配慮は当たり前というメッセージが込められています。「Louis Vuitton」の香水ボトルは、詰め替え前提でも"飾って美しい"ことが最優先。ガラスボトルは重厚で彫刻のようなデザインで、詰め替え口は見えないように隠されており、リフィルしても新品同様の佇まいを保つことで、「詰め替え=安っぽい」というイメージを完全に払拭しています。
また、「GIVENCHY」の香水リフィルは、逆流しないように自動で注入される仕組みになっています。その結果、こぼれない、空気が入らないことで、衛生的に補充でき、補充をラグジュアリー体験に変えているのが特徴です。詰め替えを採用することで、ユーザーは長期間ブランドと接点を持ち続け、ブランド体験を継続させる仕組みを構築しています。リフィル購入で、ブランドとの継続的な関係を保ち、愛着やサステナブルな選択をしたという満足感を演出し、ブランドロイヤリティを高めています。長く大切に使うラグジュアリーのあり方を打ち出しています。
包装の再利用は、ラグジュアリーブランドにおいてまだ完全には浸透していません。しかし、規制は進んでいます。フランスでは、循環型経済のための廃棄物対策法(AGEC)により、製造業者は2027年までに包装の10%を再利用することが義務付けられています。この法律は、包装および包装廃棄物規則(PPWR)の策定に影響を与えました。PPWRは、欧州レベルで同様の10%目標を採用しています。
ロココ・クラシックの復活(Rococo Revival)=金箔、曲線、装飾美の再評価
ロココ・クラシックが高級パッケージの世界で脚光を浴びています。ロココ・クラシック復活の背景には18世紀ロココの再解釈があります。18世紀の優美で装飾的なロココ様式を"現代的に洗練させた形"で取り入れる動きや、長く続いたミニマルデザインへの反動として、より豊かで感情的なデザインが求められています。パッケージ自体を"宝物のような体験"にすることで、高級ブランド価値を高める狙いがあります。
「Guerlain(ゲラン)」は、ロンドンを拠点とする百貨店ハロッズと共同で、限定フレグランスを発売しました。「ロイヤル エクストラクトIII」と名付けられたこのフレグランスは、「Guerlain」の象徴的なビーボトル(ポシェ・デュ・クールヴァル)に収められ、ハロッズのシンボルであるゴールドとグリーンで装飾されています。ボトルのネック部分には、1mm幅のレーヨンコード(オリオール&フォンタネル)があしらわれています。このコードは、フランス・オート=ロワール地方の工房で編み上げられています。
「Dom Pérignon(ドン・ペリニヨン)」アーティストコラボ
パッケージ自体が"作品"になる方向性を持ったアートパッケージが注目されています。シャンパンの「Dom Pérignon」は現代美術家・ポップアーティストである村上隆とコラボしています。シャンパンでは「ヴーヴ・クリコ×ジャックムス」、「レア・シャンパーニュ×ウィリアム・アモール」などのコラボレーションはシャンパーニュ界における創造性と感性を刺激しています。
また、「Diptyque(ディプティック)」限定版(キャンドル)や「Hennessy(ヘネシー)」アーティストシリーズ(コニャック)など、手描き風イラスト、特殊紙、金箔などを組み合わせ、パッケージをキャンバスに見立てたアート&文化パッケージが高級パッケージに取り入れられています。「Hennessy」のアーティスト、トラジャン・ジアがデザインした「ザ・ホース・エディション」は、金細工のバカラクリスタルデキャンタに収められています。これは、後にゾディアック(星座)・コレクションとなる、12種類の希少なコニャックシリーズの最初の一章となりました。
「L’Oréal」のスマートパッケージ
高額商品では、偽造品対策などにスマートパッケージ技術が積極的に採用されています。「L’Oréal」は、パーソナルな肌分析と、天候などの環境分析、個人の嗜好、カスタム処方などを実現するpersoを開発しています。
イヴ・サンローラン ルージュ・シュール・ムジュール Powered by Persoは、「L’Oréal」のテクノロジーインキュベーターが考案したパーソナライズ美容デバイスのブランド化です。このデバイスは、AI技術により、5,000色のカラーオプションから自宅で自分だけのリップカラーを作成できます。パーソナライズ美容のトレンドを捉えたYSLボーテのカスタムリップカラーデバイスは、「L’Oréal」傘下のModiFaceを搭載したアプリを使用することで、消費者が無数のリップカラーを作成できるようになっています。
「Remy Martin(レミーマルタン)」のスマートパッケージ
高級コニャックの真贋判定やブランド体験、顧客とのデジタル接続を強化するための仕組みとして導入されています。消費者がスマートフォンをボトルに近づけることで、偽造防止の認証や、製品情報の提供、ブランドの特別コンテンツ「ルイ13世ソサエティ」へのアクセスが可能になります。
イタリアのブランド「Vagheggi Phytocosmetici」のスマートキャップ
「Nuon Medical」の美容技術を統合した初のブランド製品が市場に登場しました。
フィトコスメティックを専門とするイタリアの業務用化粧品ブランド「Vagheggi Phytocosmetici」は、新製品「Longévité 75.25」クリームを発売しました。このスキンケア製品は、再生・修復プロセスを促進するNAD+アクティベーター、細胞の老化を遅らせるラパチョエキス、疲労感を軽減するラバンデュラハイブリダなどの成分を配合し、12種類の肌老化サインにアプローチします。
AIによるonly1デザイン
ドバイ免税店では、AIが独自にデザインしたたった1つの「ジョニーウォーカー」のブラックラベル ボトルを手に入れることができます。ディアジオはトラベルリテールにおけるパーソナライゼーション体験の変革を目指しています。ドバイ免税店限定のキャンペーンでは、ディアジオのブレークスルーイノベーションチームが開発した技術であるプロジェクトHaloを搭載したAIが使用されています。Haloは、アルゴリズム設計テクノロジーと生成AIを組み合わせて、「ジョニーウォーカー」のブラックラベル ウイスキーのユニークなボトルイラストを50,000点デザインしました。このコンセプトは、ドバイの買い物客にパーソナライズされたショッピング体験を提供します。ディアジオは、トラベルリテールにおいて消費者が限定商品を求める傾向が高まっているとしています。
まとめ
ラグジュアリー商品は、その価値を訴求するために、商品、哲学、アート、技術、ブランド力を結集し、競争力の向上を図っています。
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