パッケージ×美味しさで評判のハイブリッドなベーカリーがニューヨーカーのハートをつかむ
ロウワーイーストサイドに10月にオープンしたスーパームーン・ベイクハウスSupermoon Bakehouse は、パッケージと斬新な発想の美味しさがウリの今をときめくハイブリッド・ベーカリー。
オリジナリティのある品揃え(クロワッサンとドーナッツ、オリジナルのクラッフィン)に特化したベーカリーがマンハッタンのロウワーイーストサイドに誕生しました。その名はスーパームーン・ベイクハウス( Supermoon Bakehouse )。
10月にオープンしたばかりだというのに、インスタグラムのフォロアーはすでに16万人超え!という、バイラルマーケティング(口コミで商品情報を消費者に広げていく方法)を使ったPRに大成果を上げているこのショップは、10月7日(土)朝8時20分にオープン後、10時には完売。さらに、ニューヨークタイムズ、タイムアウトといった大手メディアにもすぐに取り上げられ、あっという間にニューヨークトップ10のベーカリー入りという偉業も成し遂げました。
話題の理由は、商品アイデアだけでなく、パッケージングのクールさ。
味で勝負するだけでなく、消費者をあっと驚かせたのは、ここのパッケージングツール。ベーカリーの、オーガニックやナチュラルやトラディションといった通常のイメージに対して、クールでアーティスティックなセンスの良さで勝負をかけ、思惑通り、アート志向の高いニューヨーカーを“やられた感”でノックアウト。わたしも、知り合いがインスタにアップした写真に「あ!これは行ってみたい。」と惹かれ、実際に出かけて「やられた!」と思った一人です。
ニューショップオープンの話題に敏感なニューヨーカーのハートをつかんだ3つの要素は、(1)パッケージング、(2)商品アイデア、(3)店舗デザイン&ディスプレイ。以下、一つずつレポートしてみましょう。
1.パッケージング
6個買うとこれに入れてくれる、このギフトボックスパッケージと言われたら、やっぱり6個買いたくなってしまうレインボーに輝くボックス。土台は紙で、その上にエナメルちっくなプラスティック紙が貼ってある。モダンアートを思わせるテクスチャーとグラフィック文字は、かなりのインパクトがあり、このフォトジェニックなパッケージングがもたらす宣伝効果は果てしないと言えそう。手提げ袋は、このボックスをShow Off =自慢できるように、あえてロゴなしの透明のビニール袋です。
上から見るとこんな風。角度によって色が変わって見えるのが楽しい。ロゴもレインボーカラーに変化するテクスチャーも、70年代?で宇宙的。アナログのターンテーブルとレコードが流行る昨今、流行に敏感な若者にも、当時を懐かしむ大人たちにも、心惹かれるルックスと言えそうです。
横から見るとこんな風。パッケージボックスは引き出し式で、開けるときもワクワク感が。素材がしっかりしているので、このパッケージを集めるニューヨーカーも出てきそうです。”CHEW YORK CITY” はNew York CityとChew (噛む)を掛けた造語。
引き出すとこんな風。ボックスの中で商品がくっついたり、動いたりしない工夫として引き出すと一つ一つのドーナッツは、紙製のグラシンカップ(マフィンを焼くときの紙製カップ)に入れて箱の中に収められています。食べるときにても汚しにくい。日本人の感覚では、見た目のおおざっぱ感はいなめませんが、消費者目線で考えられているパッケージだなと思いました。
ドーナッツはマフィン用の紙製グラシンカップに入れてからボックスの中へ。市販製品かオリジナルかはわかりませんが、持ちやすく、いいアイデアだと感心しました。日本にパン屋さんだと一つ一つビニール袋に入れたり紙袋に入れてくれますが、ニューヨークの店は、一つづつ小分けにしてくれるところが(思い出せないくらい)少ないので、新鮮な驚きがありました。
箱の底にも “ STAY WILD, MOON CHILD”のメッセージが。一個用の袋のパッケージもあります。ボックスパッケージと同じく、レインボーカラーに変化するメタリックな素材の袋。袋のサイズは、縦(約)21cm×横(約)18cm
1個4ドル〜7ドルの商売(割高感あり)で、気合の入った単価の高いパッケージングにあえて挑戦。使い捨てるというより、長くヴィンテージになるまで取っておける質の高さです。パッケージは、節約方向にあるニューヨークで、これだけパッケージングにこだわる新しいショップができたことは、ニューヨーカーにいい意味でショックを与えています。
2.商品アイデア
味にもうるさいニューヨーカー。アイデアは面白いけれど、肝心の商品〜クロワッサンとドーナッツのお味はいかに?美味しくないとあっという間に興味は削がれますが、クロワッサンはバターをたっぷり使った本格派。ドーナッツは中に入っているクリームも程よい量と甘さで、パッケージに続き、やられた〜!と降参(するほど美味しい)です。
ハイブリッド・スイーツと呼ばれる「クロナッツ」で一世風靡した “ドミニク・アンセル(Dominique Ansel)”と同じような勢いですが、話題だけでなく、ニューヨーカーの胃袋もしっかりつかみました。
見た目は普通のクロワッサンですが、ネーミングにもこだわったニューヨーク・クロワッサン‘New York Croissant’。中身は、スモークサーモンとクリームチーズ。本来はベーグルのトッピングの王道のこのふたつを、クロワッサンの中に包み込んであります。価格は7ドルと、高級ですが、サイズも通常より大きくて食べ応えがあり。
他にもバイカラー(色の違う2種の生地を巻き込むという)の、ひねりの効いたハイブリッドなクロワッサンもあります。
トリプル・ブラック・ドーナッツTriple Black Doughnutと命名されたブオッシュの生地で作られたドーナッツ(4ドル)は、パンに近い食感。黒い色はイカ墨を使い、中は黒い胡麻クリーム入り。他に抹茶ドーナッツもあります。オーナー兼パティシエのRy Stephenがメルボルン出身で、帰国の際によく日本に立ち寄るそう。斬新な材料チョイスは、訪日が影響しているのかもしれませんね。
一番話題のクラッフィン’Cruffin”(6ドル)。クロワッサンの生地をマフィン型で焼くクロワッサンxマフィンのハイブリッド・スイーツ。たっぷりのパウダーシュガーをふりかけ、中にはペイストリークリーム、チョコレートファッジやナッツ、ドライフルーツがトッピングされています。
スーパームーン・ベイクハウスは、実は、クラッフィンの生みの親 、サンフランシスコのミスター・ホームズ・ベイクハウス‘Mr. Holmes Bakehouse’ の系列。Ry Stephenはそこで、ビジュアルとともに、味わい深い新商品を生み出した気鋭のパティシエとしての経験を積んで、ニューヨークへ。
3.店舗デザイン&ディスプレイ
驚いたのが、商品の種類が、全部で11種類しかなかったこと。ショーケースもなく、直接大理石のカウンター(ピンク)に、プライスと簡単な商品説明とともに、サンプルが等間隔で並べてある風景は、ラボのような印象で、かなりインパクトがあります。
カウンター後ろに積まれたギフトボックスパッケージも効果的にディスプレイとして使われています。ハコ(店舗内の床〜壁)はコンクリートのむき出し。それがかえってボックスと、このロングカウンター、そしてその上の商品を引き立てます。
レジカウンターではコーヒーやティーもオーダーできます。店員のユニフォームにもこだわりがあり、白い朝素材のシャツに白いパンツで統一。清潔感のある風景です。
本来はキッチュなネオンピンクに光るトレードマークのネオンサインは、山積みされたボックスの風景、カウンターに直置きの数少ない商品とともに、フォトジェニックなスポットとしてたくさんの顧客がインスタグラムにアップしています。この日は残念ながら故障中で光らず、でした。
スーパームーン・ベイクハウスのインスタグラム
https://www.instagram.com/supermoonbakehouse/
#supermoonbakehouse
https://www.instagram.com/explore/tags/supermoonbakehouse/
古くからの街並みが残るロウワーイーストサイド
スーパームーン・ベイクハウスがオープンしたのは、エセックスストリートマーケットやエコノミーキャンディーといった、1940年代から続く、ローコストのショップが今も残るロウワーイーストサイドの中でも下町情緒のある地区です。少し時代に取り残された感があったこの界隈も、最近は時代の流れとともに新しい風が吹き始めたところ。スーパームーン・ベイクハウスの出店が追い風になることは間違いありません。
スーパームーン ベイクハウス(Supermoon Bakehouse)
住所 :120 Rivington Street, New York, NY 10002
WEBSITE:https://www.supermoonbakehouse.com
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