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レトロなのに新しい。クラシックとモダンを融合させた「Rise Bakehouse Heritage」

コーヒー好きが多く、島内に多くのカフェがあるシンガポール。常に最先端のものを取り入れている同国では、世界中から話題の店舗が並びます。
一方で、愛国心の強いシンガポールでは自国の文化や歴史を守り、継承する目的から古いものを新しく再生させる動きも盛んに行われています。その中で増加しているのが、使われていない歴史的建造物を改装した飲食店です。ただ改装するだけでなく、文化や歴史を知れるような空間を作り出すことをコンセプトとしているのが、これらのお店の特徴です。

本稿では、「Rise Bakehouse Heritage(ライズ・ベイクハウス・ヘリテージ)」という話題のカフェにスポットライトを当て、どのようなブランディングやマーケティングを行っているかを見ていきます。

Rise Bakehouse Heritage

2022年にPotong Pasirに1号店をオープンし、瞬く間に人気カフェとなった「Rise Bakehouse」。その3号店として誕生したのがチャイナタウンに位置する「Rise Bakehouse Heritage」です。2025年4月にできたばかりの店舗ですが、オープンから連日多くのお客様が訪れ、特にピーク時には行列ができることもあります。

3店舗のうち、本店舗のみ「Heritage」という名称がついているのには理由があります。その理由は、同店が歴史的建造物のショップハウス内にあるためです。日本では聞き慣れない用語ですが、ショップハウスというのは1階が店舗で2階以上が住居になっている建物のことです。東南アジアの都市部でよく見られ、間口が狭く奥行きが長いという特徴があり、イギリス植民地時代には間口の広さに応じて課税されたため、このような構造になりました。
パステルカラーのポップで現代的なデザインの他支店とは異なり、昔ながらの雰囲気が漂う佇まいの3号店は、姉妹店と異なるコンセプトという点でも話題となりました。

Rise Bakehouse Heritageの外観
さらに、「Rise Bakehouse Heritage」は、地元の食材を活かし、ローカルフードをテーマにした商品を提供していることでも知られています。この店舗でのみ味わえるメニューがあることも人気の理由だと言えるでしょう。古き良きシンガポールのコピティアム(シンガポールの伝統的なコーヒーショップ)をイメージして作られた店舗は、内装だけでなくメニューにもこだわりを取り入れています。

店内とメニュー

下記からは実際の店舗の様子をご紹介していきます。
木製の家具で囲まれた店内には、温かみのある雰囲気が漂います。シンガポールの伝統的なコーヒーショップに現代的なカフェの要素を取り入れた内装は、独特な空間でとても素敵です。

Rise Bakehouse Heritageの内観
Rise Bakehouse Heritageの内観
入り口すぐのヴィンテージのキャビネットには、伝統的な品々が並んでいます。中国語で「おはよう」と書かれたタオルは、シンガポールの「レトロ」のシンボルの一つ。昔ながらの飲食店でよく目にするため、かつての状況を再現する際によく使用されています。他にも、棚に置かれた旧式のテレビはモニターになっており来客の姿が映るようになっているなど、古いものをうまく利用しながら人々を楽しませる工夫を取り入れています。

一方で、同店オリジナルのカヤジャムやコースター、グラス、お店の料理がプリントされたTシャツが並べられるなど、ポップな雰囲気も溢れており、グッズコーナーもクラシックとモダンが混ざり合った一角となっています。

クラシックとモダンが混ざり合ったグッズコーナー
グッズだけでなく、来店時はショーケースにずらりと並んだケーキや焼き菓子にも目を奪われます。色鮮やかな商品を入り口付近に置くことで、見ているだけで気分が高揚するような雰囲気づくりをしています。

ショーケースに並んだケーキや焼き菓子

ここでしか味わえない魅力的なメニューの数々

新聞風に作成されたメニューは見ているだけでワクワクした気持ちになります。魅力的なラインナップに惹きつけられ、色々頼みたくなってしまうのも同店のブランディングのうまさだと感じます。

新聞風のメニュー
訪問時は、Singapore Latte(シンガポールラテ)、Milo Mocha Gao(マイロモカガオ)というドリンク、Kueh Salat cake(クエ・サラトケーキ)というケーキをオーダーしました。

シンガポールラテ、マイロモカガオ、クエ・サラトケーキ
Singapore Latteは、訪問した際に必ず頼もうと考えていたメニューでした。理由は中身にあります。ラテにコンデンスミルクとグラマラカ(ココナッツの樹液を煮詰めて固めた日本で言う黒糖のような砂糖)、塩と胡椒が使用されていると聞き、どのような味わいになるのか気になっていたのです。
また、本商品がホットドリンクでのみ提供される点にも関心を持ちました。提供方法も限定していることから、最も素材の持ち味を引き立てるよう試行錯誤した企業努力を感じました。

内容を見ると甘そうですが、実際は甘味はほとんどなく、マイルドで飲みやすく仕上がっています。さらに、胡椒のピリッとした味や香り、塩の塩味がミルクやコーヒーに加わることで、これまで出会ったことのない味のハーモニーとおいしさを作り出しています。

シンガポールラテ
The Milo Mocha Gaoはまず見た目の可愛さに惹きつけられました。「マイロ」は日本で言う「ミロ」のことで、シンガポールやマレーシアでは国民的飲料と言われている程に消費量が高く人気の商品です。そんなマイロとコーヒーを合わせたのがこのドリンク。「Gao」(ガオ)というのは福建語で「濃い」を意味する用語で、シンガポールやマレーシアでコーヒーを濃いめに作ってほしい時にこの言葉をつけます。

甘さはそこまでなく、チョコレート風味のマイロとコーヒーが絶妙なバランスで溶け合う風味豊かな一杯でした。フォームクリームの上にトッピングされたビスケットも、実はシンガポールのレトロの象徴です。古くからあるブランドで、地元の人々の間で知らない人はいないこのビスケットは、昔ながらのコーヒーショップには大抵置いてある代物です。見かけも味もモダンとレトロを掛け合わせたユニークでおいしいメニューでした。

マイロモカガオ
「Kueh Salat」は、パンダン風味のココナッツエッグカスタードの下に、もち米を敷き詰めた伝統的なお菓子。それをモチーフにしたのが、このKueh Salat cakeです。運ばれてきた際は色合いの鮮やかさに思わずじっくり見てしまったほど、カラフルで美しいケーキです。見かけだけでなく、本商品が「Rise Bakehouse Heritage」限定メニューという点もポイントです。一口いただくごとに、ココナッツとパンダンの甘く芳しい香りが漂い、甘さ控えめでとても美味しい一品でした。

クエ・サラトケーキ
現代的なタッチの中に昔ながらのコーヒーショップの雰囲気を再現した空間は、時折1960年代のシンガポールにタイムスリップした気分にさせてくれます。 このクラシックとモダンの融合は、チャイナタウンにある「Rise Bakehouse Heritage」だからこそ味わえるものです。シンガポールの昔と今をカフェで体験したい際は、ぜひ同店を訪れてみてください。

▼参考資料
Rise Bakehouse Heritage公式サイト
https://risebakehouse.sg/

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