インスピレーションは日本から。日本×ニューヨークの"ベーグルウィッチ"と食のエンターテイメント体験を生み出すベーグルショップ「Keen's Bagelry」
シンガポールには、CBDと呼ばれる地区があります。これはCentral Business Districtの略で、金融機関や多国籍企業が集中するシンガポールの経済・商業の中心地のことを指しています。
そんな経済の中心地であるCBDのオフィスビルの一角に、行列の絶えないベーグル店があります。それが今回ご紹介する「Keen's Bagelry」。日本とニューヨークのスタイルを融合した独自のフレーバーと具材のボリューム感が魅力の"ベーグルウィッチ"を目当てに、連日多くの人々が訪問する同店。オーナーの思いが詰まった手作りベーグルは、おいしさもさることながら、他にない調理のパフォーマンスも話題となっています。
富裕層が多く、物価が高いことでも知られているシンガポール。とりわけ、CBDのような中心地で人気を博しながら営業を続けられる店舗はごく僅かだと言われています。そうした激戦区で連日行列の絶えない「Keen's Bagelry」はとても稀有な存在だと言えます。本稿では、同店の魅力や人々に支持されるポイント、ブランディングの工夫についてご紹介していきます。
「Keen's Bagelry」の魅力(1):温かな雰囲気の店内と心温まる接客
「Keen's Bagelry」はAsia Square Towerというオフィスビルに位置しています。建物があるのはCBD。高層ビルが立ち並び、多くのビジネスマンやキャリアウーマンが道に溢れる姿は、まさに国際都市シンガポールを象徴する光景です。世界の金融企業や大手企業が集まるこのエリアでは、仕事に忙しくする人々が行き交い時間がせわしなく流れていきます。
そんな街の真ん中に、ふっと肩の力が抜けるような落ち着く場所があります。それが「Keen's Bagelry」です。

木の温もりを感じるインテリアに包まれた店に近づいていくと、ジブリの曲が静かに流れ、優しい音色と落ち着く色合いにどこかほっとした気持ちになります。写真では確認しにくいかもしれませんが、店の至る所にはジブリのキャラクターの小物が置かれていたり、日本のハガキやシールが飾られるなど心和む装飾が施されています。

なぜこのように日本の物が溢れているのでしょう。
これにはきちんとした理由があります。
オーナーのKeenさんは日本の落ち着いた雰囲気が好きで、それを自分のお店にも取り入れたいと考えたのだと言います。さらに驚くべきことは、実はKeenさんがベーグル作りを始めたきっかけは東京にある「Kepo Bagels」にインスピレーションを受けたことに始まるということ。インスピレーションを日本から受け、そこから改良を重ね、ニューヨークのスタイルを融合させて二つの良い点を掛け合わせた商品を生み出しました。こうして誕生した"ベーグルウィッチ"は大好評で、それを目当てに連日多くの人々が店を訪れています。
簡単に説明するとニューヨーク式と日本式のベーグルには下記のような違いがあります。
ニューヨーク式は生地に卵を使わず、塩を少々使い、麦芽を入れたお湯で茹でてからオーブンで焼き上げます。大きくボリュームがあり、外側はところどころクリスピーな食感、中はしっかりとした噛みごたえがある生地になっているのが特徴です。種類も豊富でケシの実やセサミの他に、ブルーベリー、シナモンレーズンなど多くのフレーバーがあります。そのままでも食べますが、クリームチーズやサーモンなど具材をサンドし、サンドイッチとして食べることが多いです。
日本式ベーグルは、生地に少量の砂糖やはちみつを加えることが多く、店舗によってはバターやオイルなどの油脂を少し配合することもあるそうです。焼き上げる前に茹でる工程は共通していますが、全体を柔らかめに仕上げる傾向があるとのことです。サイズはやや小ぶりで、生地はほんのり甘く、しっとりもっちりとした食感です。種類はプレーンやセサミといった定番に加え、抹茶やあんこなど和のフレーバー、芋や栗など季節の食材の商品に加え、明太ポテトや照り焼きチキン、きんぴらごぼうなど、日本の惣菜パン文化を取り入れた具材入りタイプも多く見られます。
「Keen's Bagelry」のベーグルは、日本式とニューヨーク式の製法や生地、具材などの良い点をうまく組み合わせて構成した、まさにハイブリッドな商品。それを象徴するように、お店には「ニューヨーク」と「世田谷」と表記のある世界時計が置かれています。これは「Kepo Bagels」がある世田谷とベーグルの本場ニューヨークという二つの都市から同店のメニューが生まれたことを表しているのです。

これらの魅力的な商品に加え、オーナーのKeenさんやスタッフの方々の丁寧な接客も、忙しい日常の中で気持ちをほっとさせてくれる要素です。外の喧騒を忘れるような、やすらぎを感じられるのが同店の魅力の一つだと言えます。
「Keen's Bagelry」の魅力(2):ライブキッチンから生み出す食のエンターテイメント体験
「Keen's Bagelry」のもう一つの魅力は、カウンター越しに広がるライブキッチンでベーグルの調理工程を見ることができること。注文が入ってからオーナーのKeenさんが目の前でベーグルを調理する姿は、ただ料理が提供される店とは異なる臨場感やイベント感があります。
特記すべきは、Keenさんが店のベーグルの発酵から調理まで一人で行っていること。経営者としてだけでなく、作り手としても全ての工程を担っている点に、同店のこだわりを感じます。ベーグルウィッチのメニューは写真のようなラインナップになっています。まずは店頭に並べられたベーグルから好きな種類を選び、調理が始まります。

ベーグルを温めて、具材に火を通し、丁寧に重ね、サンドし、紙で包んでカットし、断面を見せてくれる手捌きは、まるで職人の舞台を観ているよう。日本のベーグルの繊細さとNYスタイルのボリューム感の両方が掛け合わさることで生まれた "ベーグルウィッチ"。それらを手がける姿をライブキッチン越しに眺めながら待つ時間は、非常にわくわくするひとときです。
ただ食べるだけではなく、「出来上がるまでの時間」も楽しむ。これこそが「Keen's Bagelry」が提供する食のエンターテイメント体験なのです。(筆者のInstagramにはオーナーのKeenさんがベーグルウィッチを作る際の動画を載せております。動画の方がより臨場感を味わえると思いますので、ぜひご覧いただけますと幸いです。)





「Keen's Bagelry」の魅力(3):気分が高揚するパッケージと頬張る度に幸せになるおいしさ
「Keen's Bagelry」の魅力は、パッケージやブランディングの工夫にもあります。テイクアウトの袋や商品の包み紙にプリントされたベーグルのロゴは、可愛さに癒されます。黄色やオレンジなど鮮やかな色合いを基調にした絵柄を見ると気分が上向きになりますし、包装されたベーグルに手書きで名前を書いてくれるのも嬉しいポイント。「Keen's Bagelry」はテイクアウト専門店なので持ち帰りか同フロアのフードコート内で食べるかの二択ですが、可愛らしいロゴ入りの袋を持っていると足取りもどこか軽やかになります。

下記では、私が試した中で特にお気に入りのBEKKIとSAITAMAという2つのメニューをご紹介します。
BEKKIは、ベーコンとスクランブルエッグ、チーズなどが入った朝食の王道コンビを具材にしたようなメニュー。本商品で特記すべきは、スクランブルエッグのふわっとした食感とシルキーさ。北海道ミルクを使ったスクランブルエッグはふわふわに作られているため軽く、ミルクの甘味やコクがしっかり感じられる深みのある味わい。そこにカリカリに焼かれたベーコンの塩味やとろりと溶けたアメリカンチーズのマイルドさ、自家製スパイシーガーリックアイオリソースのパンチのあるテイストが加わり、絶妙な味のハーモニーを生み出しています。まさに、シンプルな構成だからこそ一つ一つの素材の持ち味や旨みが活きる一品。ボリューム感がありながら、ぺろりといただけてしまう間違いのないメニューです。

SAITAMAは名前の通り、日本の「埼玉」の名前が語源となっています。オーナーのKeenさんが好きな作品の舞台が埼玉であることからこの名前がついた本商品。Keenさんイチオシの商品で、筆者も一度いただいてからそのおいしさの虜になりました。
具材はスモークサーモン、トマト、アボカド、卵、スライスチェダーなど。通常、卵はサニーサイドアップとなっていますが、私はKeenさんのおすすめで卵の焼き方をスクランブルエッグにして注文しています。ミルキーでふわふわのスクランブルエッグとチェダーチーズのコク、アボカドのマイルドさが溶け合うことで、味は非常にまろやかです。これだけだと重たくなってしまいそうですが、そこにサーモンやルッコラの爽やかさ、トマトの酸味が入ることで全体を引き締め、意外なほど軽やかにいただける一品に仕上がっています。

丁寧に作られたことがわかるもっちりとした生地のベーグルウィッチは、素材の組み合わせとのバランスが絶妙で、そのおいしさに頬張る度に自然と笑顔になってしまいます。
躍動感溢れるベーグルの調理現場を間近で見てから出来立てのベーグルを味わうことのできるエンターテイメント性があるのも朝食やランチ時の楽しみです。ライブ感のある調理を見てからベーグルをいただくと、より旨味が増していくように思います。
商品のおいしさやパフォーマンスが話題となり、「Keen's Bagelry」はこれまで数々のメディアや著名人によって取り上げられてきました。そんな大人気の同店ですが、接客は迅速かつ丁寧で、訪れるとどこかホッとした時間や優しさをもらえる気がします。常にせわしなく時間や人々が動いているシンガポールのビジネス街ではとても貴重な存在です。
忙しい仕事の合間に。少し疲れた午後に。あるいは、誰かと分け合うランチタイムに。そんなひとときやおいしさをぜひ都会のオアシス「Keen's Bagelry」で味わっていただきたいです。
▼参考資料
Keen's Bagelry Instagram
https://www.instagram.com/keensbagelry/
Kepo bagels Instagram
https://www.instagram.com/kepobagels/
筆者Instagram:Keen's Bagelry ベーグルウィッチ調理動画
https://www.instagram.com/reel/DT1QZbyksLb/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
筆者Note:Keen's Bagelryインタビュー記事
https://note.com/saveurami/n/n422e3fde75fd
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