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誰もが知っているパッケージをエンジニアの視点から読み解く

こんにちは。紙の構造デザインです。

紙パッケージの企画・デザイン・設計に幅広く携わるパッケージエンジニアという立場から、デザインやマーケティングとは少し違う視点で箱を紹介していきます。

パッケージエンジニアリングって何?

どんなパッケージで商品を届けるかを決めるのがパッケージデザインだとすれば、そのパッケージをどう作るかを決めるのがパッケージエンジニアリングです。商品を作る人、商品を買う人、箱を作る人など多方面の要望を取り入れてパッケージを具現化していくのがパッケージエンジニアの役割です。

今回はカロリーメイトの箱がどう作られているのかを観察スケッチという手法で調べてみました。カロリーメイトの様な量産品では、ほんの少しの仕様変更が大きなコストアップになったり消費者の使いにくさにつながったりすることもあり得るので、パッケージにもエンジニアリングの基本が詰まっています。

カロリーメイトの箱を要素ごとに分解してみる

カロリーメイトのパッケージ観察スケッチ

①材質(紙の種類)
コートボール270g/㎡は裏がグレーの厚紙でいわゆるボール紙と呼ばれる紙です。印刷適性が良くコストも抑えられるので量産される箱の材質としては定番の紙です。
1枚の紙に箱の展開図を効率よく並べて無駄なく紙を使うことでコストダウンしていきます。1枚の紙の中に展開図を並べる作業を面付けと呼び、カロリーメイトの箱では展開図を12個も面付けして効率よく製造していると想像できます。

②形状(形の種類)
サック箱やキャラメル箱と呼ばれる形で、いかにも普通の箱という形状です。個性的な形を追求する傾向にある菓子類とは違い、「バランス栄養食」という商品コンセプトに合った機能性を感じさせる意図がありそうです。開け口は糊付けされ商品を店頭で取り出せないよう保護しつつ開封時はミシン目を破って取り出す仕様です。形状は普通ながら開封のし易さなどに気を配っていることが分かります。

③印刷方法
細かい印刷表現ができコートボールの箱に採用されることの多いオフセット印刷が採用されてます。ベタ面(広い面積を同じ色で塗りつぶしてある箇所)も均一に印刷できるのでブランドのアイデンティティである黄色面を活かすのに有効な印刷方式です。

④印刷内容
黄色に黒のロゴが印象的なデザインは発売当初からほとんど変わっておらず、骨太なグラフィックデザインが商品のアイデンティティとなっています。
箱になった際に隠れてしまう糊代には印刷・加工・流通のために必要なマークや番号が印刷されています。これらはアクセサリーと呼ばれ量産品には必ず必要になるもので、観察スケッチの際には箱を読み解く貴重な材料にもなります。

⑤成形方法
商品を箱に入れながら同時に立体に成形するライン製函(せいかん)で箱ができあがっています。専用の機械が必要なためロットの大きい売れ筋商品で採用される方式です。糊付けの仕方はここ20年でほとんど変更されておらず、箱の成形方法は完成されていると言えます。

3色印刷と4色印刷が混在しているのはなぜ?

カロリーメイトの観察スケッチ

観察スケッチをする中で私が興味をひかれたのは、フレーバーによって印刷に使われる色数が違うという点でした。これはロゴとバーコードの印刷色に表れています。

チーズ(黒)とフルーツ(緑)はロゴと同じ色でバーコードを印刷してありますが、チョコレート(茶)とメープル(ピンク)とプレーン(白)はバーコードがロゴ色とは別に黒で印刷してあります。おそらくバーコードを読み取りやすくするために黒を1色追加して印刷する必要があったのでしょう。印刷色が1色増えれば印刷コストも上がるのですが、バーコードが確実に読めることが流通のうえでは必須だからです。

商品のためにパッケージデザインを実現するだけでなく流通や受け取る消費者のことも考えてパッケージをトータルに設計するのがエンジニアリングの役割だと言えます。

カロリーメイトの箱 まとめ

カロリーメイトの箱をエンジニア視点で見ると、材質、印刷、成形などが量産に最適化され徹底して基本を貫いた無駄のないパッケージという印象です。

量産パッケージではグラフィックデザインやエンジニアリングをマイナーチェンジしながら進化する商品が多い中で、カロリーメイトではほぼ同じ仕様の箱が使われ続けていることからもパッケージの完成度が高いことが分かります。まさに王道のパッケージエンジニアリングですね。

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※観察スケッチの内容は個人(筆者)の見解によるもので、実際のエンジニアリングとは異なる場合があります。また製造技術などの機密事項を探す意図はなく、箱の楽しみ方の提案として描いています。


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