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2025大阪・関西万博までカウントダウン!地元店舗が共創する新たな「大阪みやげ」の“YOKAN”とは?

商品集合写真

菓子業界のパッケージや販促PRに関する事例をご紹介する連載9回目。今回は、2025年4月13日から半年間の開催となる「2025大阪・関西万博」に向けて、関西の複数店舗が共に提案する新感覚の羊羹を紹介します。2023年春から始動し、進化を続けているプロジェクト。思わず笑みを誘われる、大阪ならではの洒落の効いたネーミングやパッケージにも注目です。

「大阪ええYOKAN」の第一弾商品「パビリオン」

2024年7-8月に百貨店催事で販売された「夏のパビリオン9個セット」

2024年7-8月に百貨店催事で販売された「夏のパビリオン9個セット」

大阪みやげの新ブランド「大阪ええYOKAN(おおさかええようかん)」は、来る「2025大阪・関西万博」を見据えて、菓子職人が共創し新しい大阪土産を作り出すプロジェクト。兵庫県西宮市に本社があり、創業の地である大阪にも店舗を持つ和菓子店「株式会社髙山堂」の代表取締役社長・竹本洋平氏をはじめとする関西の和洋菓子メーカー9店舗と高校1校を加えた10団体でスタートしました。

「大阪ええYOKAN」ロゴ

“羊羹”と“予感”をかけた「大阪ええYOKAN」

その第一弾商品「パビリオン」は、「大阪感」×「食感」をテーマとして開発した、キューブ型のひとくちサイズの羊羹。大阪の魅力を表現すべく、菓子職人の方々が技術を見せ合う様子を、万博内の「パビリオン」に見立てています。常温で持ち歩きできて日持ちも長めなので、国内旅行客のお土産にはもちろん、海外からの訪日客に向けてもいいですね。

2023年5月のゴールデンウィーク中、大丸梅田店で初めて販売され、7日間で1万5千個以上を売り上げる大きな反響を得ました。

EXPOセット

「パビリオン」3個入りの「EXPOセット」

単体でも販売可能なキューブ形パッケージを3個ずつセットできて、中の絵柄が切り抜き窓から見えるスリーブもお洒落です。

1つ1つの開発背景やセットのタイトルにもストーリーがあり、たとえば、「EXPOセット」は、「2025大阪・関西万博」をイメージした3種類の「パビリオン」の組み合わせ。

「髙山堂」が創作した2種類の1つ「2025かん(にーぜろにーごーかん)」は、万博のイメージカラーである赤と青を錦玉羹の中に散りばめて、「人類の進歩と調和」「いのち輝く未来社会のデザイン」など、常に未来の多様性を考える人間を表したもの。もう1つの「いのちの輝きかん」は、苺と無花果の赤い色彩が鮮やか。万博内の「大阪ヘルスケアパビリオン」にプレミアムパートナーとして協賛する「森永乳業」の「シールド乳酸菌®」を使用し、「健康」という観点から未来社会の新たな価値の創造を目指したものです。

「和菓子工房 あん庵」が創作した「咲くやこの花かん」は、大阪府藤井寺市の道明寺が発祥の干し飯“道明寺”を使い、大阪に咲く花をイメージ。春は「桜」、夏は「紫陽花」など、季節によって“道明寺”の色が変わるそうです。

喫茶店セット

「パビリオン」3個入りの「喫茶店セット」

「喫茶店セット」には、「吉乃屋 松原」による、大阪の喫茶店の定番メニューをイメージした「ミックスジュースかん」や、アイスコーヒーをイメージした「冷コー(レイコー)かん」といった、楽しい「パビリオン」入り。

おかんのセット

「パビリオン」3個入りの「おかんのセット」

タイトルだけでも思わず笑ってしまう「おかんのセット」に入った「豹かん(ひょうかん)」は、「大阪緑涼高等学校」(大阪府藤井寺市)の学生が考案したもの。アルバイト先に、いつもヒョウ柄の服を着て黒糖のアメちゃんをくれる先輩がいたことからアイデアを得たそうで、きなこ羊羹に大納言かのこ豆を散らしてヒョウ柄を表し、その上の黒糖羊羹にザラメ糖を合わせることでジャリッとした食感を楽しめるよう、「吉乃屋 松原」で製造されました。他の2種類も、錦玉羹の中に赤い練り切りを閉じ込めた「あめちゃんかん」と、ピスタチオを使ってお好み焼きのような見た目を再現した「ふうふうかん」といった具合で、見た目も名前も遊び心に富んでいます。

学生が考案したようかん

パッケージには食感のキーワード、商品説明書の裏には店名とQRコード入り

キューブのパッケージに、商品名とプロデュース担当店や学校名の他、「ジャリッ」「モッチリ」「カリッ」「コリン」「ムチッ、トロリ」「なめらか」など、食感のキーワードが入っているのも、興味を引かれます。

中に入っている商品説明書の裏側には、店舗や学校のWEBページに繋がるQRコードが印刷されていて、今風でスマートだなと思いました。

パッケージを広げたところ

パッケージの内面も大阪の魅力が満載

箱の中面にも、通天閣、仁徳天皇陵古墳、大阪城などの名所に、ふぐや茶聖・利休をイメージした茶碗と茶筅、蟹の看板、府の花である梅やサクラソウ、府の木であるイチョウなど、大阪を象徴する様々なモチーフが描かれ、色々と発見がありそうです。透明パッケージ入り個包装の羊羹に添えられた詳しい商品説明書も、思わず読み込んでしまいます。

柔軟に変化・進化する「パビリオン」

「パビリオン」9個入りセット

「パビリオン」9個入りセット ※その時により内容の変更あり

初回催事販売の好評を受けて、2023年7月〜8月に阪急うめだ本店と大丸梅田店で行われた催事では、手土産にもぴったりの「9個入りセット」が新登場となりました。

ふろしき付の画像

「パビリオン」9個入りセット(ふろしき付)

さらに、同じく新登場した、赤と青のカラーリングのオリジナルふろしき付の9個入りセットも注目され、計20日間で3万5千個以上の「パビリオン」が売れたそうです。

その後も、催事を重ねるごとに話題を呼び、2024年6月までに8回行われた催事販売で累計7万個以上を売り上げる人気シリーズとなっています。

さらに、イベント限定仕様のパッケージも登場するようになりました。2023年12月末~2024年1月初めの阪急うめだ本店での催事販売では、"迎春パッケージ"の「9個入りセット」「6個入りセット」「3個入りセット」「オリジナル風呂敷」を販売。「6個入りセット」はそれまでの販売で要望が多く、新発売となったそうです。

龍がデザインされたパッケージ

年末年始に登場した「パビリオン」迎春パッケージ

既存のパッケージに、辰年に合わせた龍柄を描いた掛け紙をプラス。トレーシングペーパー仕様なので、1つ1つ凝ったキューブのデザインも生かされ、透けて見えるのもいいですね。

龍が並ぶ見え方

箱を並べると龍が連続柄となる

並べると連続柄になるようにデザインされていて、モダンでありつつ、伝統的な吉祥文様を思わせます。

この催事販売時には、7店舗が参加しました。年末年始は菓子店も多忙な時期ですし、日程によっては都合がつかないといったこともあるでしょう。お菓子業界、特に小規模な個人店では、人手不足が課題となっている昨今。単独での催事出店となると、製造、販売スタッフともに負担が大きいですが、複数店舗が参加しているプロジェクトであるため、フレキシブルな対応も可能です。

バレンタインパッケージ

2024年1月下旬の大丸梅田店への催事出店の際は、バレンタインバージョンの新作も期間限定で登場し、ピンクブラウンをベースにした限定仕様のパッケージもお目見えしました。

このように、基本の商品コンセプトやパッケージを元に、季節や歳時記に合わせて変化させ、ブランドの世界観を保ちつつ目新しさを演出するというのは、人件費や様々なコストも抑えられて効率のよいやり方だと言えるでしょう。

2024年4月に大丸梅田店に催事出店した際は、参加店舗が10店に増加。さらに、大阪府吹田市の「関西大学」の学生コミュニティ「関大万博部」に所属する大学生達も初参加し、彼らが考えた新作3種類を含む、20種類を超える色とりどりの羊羹が期間限定で登場しました。

話し合う学生

「パビリオン」創作に参加した関西大学「関大万博部」の皆さん

当初、大学生達のアイデアは25個にもおよび、その中から、プロジェクトチームで選考した5種類を試作。関係者内で試食して1種類に絞ろうとしたそうですが、大学生達の想いが熱く決めきれなかったため、何とか3種類を選んで販売。お客様からの投票で1位を決めるという企画を試みたのです。

学生の細かい商品スケッチ

大学生による「パビリオン」のアイデアシート

学生の案が実際に商品になった

「関大万博部」考案の「パビリオン」から人気投票1位に選ばれた「夢洲かん(ゆめしまかん)」

その結果、1位に選ばれた「夢洲かん」は、万博の会場となる夢洲(ゆめしま)をモチーフにした羊羹。環境都市工学部 3年生の西山美里さんのアイデアです。陸と海、そして会場のリング(大屋根)をキューブの中に表現。陸の部分は抹茶羊羹、海はうっすら水色に染めた錦玉羹で、リングは"刷り込み"と呼ばれる技術を使い、舞洲(まいしま)と大橋で繋がる夢洲の会場を表現しています。

7-8月に阪急うめだ本店、大丸梅田店での催事販売があった際に、新たな定番品として発売されました。

さらなる新商品も発売

第2弾商品「コメディアン」

2024年7月に新発売された「大阪ええYOKAN」の第2弾商品「コメディアン」

2024年7月~8月、阪急うめだ本店と大丸梅田店への催事出店時には、7月31日より、第2弾商品となる「コメディアン」が新発売となりました。新シリーズは、お笑い芸人をモチーフとして、どこでも「笑い」が生まれる場所に変えてしまう芸人のようなお菓子を目指したもの。「アン=餡」が羊羹の象徴であるという意味も込め、「コメディ+アン=コメディアン」と名付けられました。

「あん」の人懐っこい甘さを芯に持ちながら、漫才のように予測がつかないフレーバーや展開のあるユニークな味わい。キャラ立ち重視の目を引くルックス、カラフルな配色やキラキラとした輝きで、スポットライトを浴びる芸人をイメージしているそうです。食べやすい棒付きで、真ん中の「顔」をつまむと、そのまま羊羹を持ち上げて食べることができます。

たとえば、「いつもカシスしか頼まない茶畑」は、王道である抹茶のふくよかな香りの羊羹に、あえて甘酸っぱいカシス羊羹の組み合わせ。軽そうに見えて根はしっかりしているキャラをイメージしています。

「全部パッションで片づける雷田」は、トロピカルなパッションフルーツとライチのようかんの瑞々しい組み合わせ。何はともあれ最後はパッションで押し通す、そんなキャラだそうです。

催事に携わったメンバー

「大阪ええYOKAN」を共創する各店の職人達も催事会場に足を運んだ

同時に、冷やして召し上がっていただきたい「パビリオン」をセットにした「夏のパビリオン 9個セット」も発売。富田林の人気洋菓子店「菓子工房 yamao」による新商品で、フランボワーズ味とソーダ味の花柄ようかんと白餡のココナッツミルクようかんを合わせた「浪花の華やかん」や、「関大万博部」学生のアイデアから生まれた「夢洲かん」なども含まれる内容でした。

そんな「大阪ええYOKAN」の魅力や職人のこだわり、苦労話などを直接伝えたいとの思いから、参加店舗の職人達も来店し、お客様とも交流を図りました。

このプロジェクトは、「2025大阪・関西万博」が直接的なきっかけとなって始まりましたが、それがゴールではありません。さらに先を見据え、万博後も、大阪を代表する新たな土産菓子となるべく、進化を続けていくことでしょう。

Instagramの「大阪ええYOKAN」でも情報発信されています。今後の活動も見逃せませんね。

https://www.instagram.com/osaka.good.yokan

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