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時は金なり RTD & ”grab and go”

時は金なり“という名言は米国の政治家ベンジャミン・フランクリンの“Time is money”という名言を直訳したものですが、食の世界でも注目のキーワードになっています。

米国や日本で成長している市場分野として最近注目されているのがRTD、RTSです。RTDは“Ready to drink”、RTSは“Ready to Serve”の略称で、RTDは直訳すれば“直ぐに飲める”、RTSは“すぐに用意のできる” ということになります。
RTDは蓋を開けてすぐに飲める 缶ワインや缶チューハイなどの飲料、RTSは氷の入ったグラスに注いで飲むカクテル飲料が該当します。

「サントリーRTDレポート2022」によれば2020年のRTD市場は2億9683万ケース(対前年 108%)と、過去最大の市場規模に成長しました。

酒類業界は新型コロナの影響で居酒屋やバーなどの料飲業態の需要が大きく落ち込むと共に、祭りや大型イベントの中止、観光の低迷が追い討ちをかけました。
この中で成長したのが「家飲み市場」です。そしてこの市場で成長したのがウィスキーとRTD商品です。

権威のある調査機関である英IWSRによれば、RTD市場は2025年まで10%以上の成長が見込まれています。特に、日本ではレモンRTD市場が3割を超える成長で、市場を牽引しています。RTDは全ての年代で、需要が増加していますが、特に若い世代で受け入れられているのが特徴です。

Campari Negroniは世界でも人気の高いジン、ベルモット、カンパリを同量ずつ配合したカクテルですがカナダ市場に375mlのRTSとして登場しました。食前酒として氷を入れたグラスに注いで利用します。日本ではサントリースピリッツが炭酸水などで割る「こだわり酒場のレモンサワーの素」を発売した2018年頃から急速に成長しています。「自宅にいながら本格的なカクテルやお酒を楽しめる!」として、お酒により興味を持ち始めた層やもっと気軽に楽しみたい層などを取り込み、幅広いユーザーが増えています。日本ではRTSもRTD市場の中に含められて語られることも多いようです。

RTDパッケージの新顔「パウチ」

RTDの代表的なパッケージは缶容器ですが、新顔として伸びてきているのがパウチです。米国初の新感覚 "アルコール in ゼリー" ドリンクとして日本に登場したのがエムエスエンタープライズのゼロショット(0shot)です。
そのまま飲んだり、シャーベット状にしたりして若者の需要に対応しています。サントリーのゴロっと果肉を食べるフルーツティーGOROCHAも”氷を入れたグラスにそそぐだけ“をうたっているという点ではパウチ入りのRTS飲料に入ります。

エムエスエンタープライズプレスリリースより@ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000093283.html

毎月1回、100mlの新潟の日本酒3セットが届く日本酒のサブスク「SAKEPOST」にもパウチ包装が使われています。薄型で、家のポストにも収まるサイズにセットできるパウチのサイズ感が通販商品としてピッタリです。サブスクにSNS的な要素も加味して、作り手である蔵元と飲み手の距離を縮める仕掛けも入っています。

勢い増すRTDカテゴリー

好調なRTD市場で、今注目されている商品分野をいくつかピックアップします。

機能性表示食品

飲料業界全体で急成長しているいわゆる機能性表示食品分野のRTDが出現しています、Olipop Classic grape functional sodaは低カロリーで、微生物の働きと植物繊維で健康をサポートします。日本でもアサヒビールが、食事の脂肪や糖分が気になる方に適した「機能性表示食品」のビールテイスト清涼飲料とRTDテイスト清涼飲料「スタイルバランス」を6月23日から発売しています。“食事の脂肪や糖分の吸収を抑える”RTDテイスト清涼飲料で、「ビールテイスト」、「レモンサワーテイスト」、「グレープフルーツサワーテイスト」の3種で、「アルコール0.00%」「カロリーゼロ」「糖類ゼロ」で、毎日飲んでも飲み飽きない、食事にあわせられるすっきりとした飲料です。

ハードセルツァー

ここ数年米国で大ブームとなっているのが、サトウキビを醸造して発酵したお酒をベースにして天然の果汁やスパイスで味付けしたハードセルツァー飲料です。低カロリー、グルテンフリーでスッキリとした味わいがヘルシー志向の現代に受けています。また、スタイリッシュなパッケージデザインで、SNSでもパッケージが話題になっています。特に米国西海岸で好評で、カリフォルニアでは前年に比べて500%を超える成長をみせています。従来のアルコール飲料が男性中心なのに対し、ハードセルツアツァーは男女を問わず人気を博しています。モルソンクワーズ社のVIZZYは様々なフルーツにビタミンCを添加したハードセルツアーです。

ハードリカーRTD

Aria gin & tonicはブルラン蒸留所がプロデュースするアウトドアに最適なRTDとして英国風のジンに柑橘系のフレーバーを組み合わせています。テキーラカザレスはマルガリータ、スパイシーマルガリータ、パロマの伝統的なメキシコのカクテルを発売しています。
Boadroom spiritsは 夏に向けてピーチとラズベリーフレーバーのウォッカアイスティーを発売しています。

ノンアル、微アルRTD

アルコール系に加えてノンアル、微アル系のRTDも成長しています。アルコール系のRTDに比べて、まだ市場規模の小さいノンアルRTDですが、お酒を飲めない、飲まない若者のライフスタイルに成長の兆しが見えます。

そんな中で、話題になっているのが、ニトロコーヒーやニトロティーです。あまり聞き覚えのない商品ですが、窒素を入れることで、なめらかな飲み心地を実現しています。Rise Brewing 社は、ニトロアールグレイティーオーツミルクラテ「London Fog」が好調です。アールグレイティーに窒素を注入したラテはなめらかな味で、コーヒー、紅茶の愛好家をつかんでいます。ニトロコーヒーはスターバックスでナイトロコールドブリューコーヒーとして商品化されているので、日本でもニトロ商品が浸透していく日も近いかもしれません。

適正な情報の提供

若者の需要の多いRTD飲料は適正なアルコール表示やUD表示が進んでいます。合同酒精株式会社は、アルコールメーカーの社会的責任である適正飲酒の推進を目的に、同社が製造・販売するRTD商品について、含まれる純アルコール量(g)の商品パッケージへの表示を2025年末までに完了する予定です。あわせて商品パッケージの表示内容に使用するフォントを、あらゆる人が読みやすく読み間違えにくい、ユニバーサルデザイン(UD)フォントへ変更します。

Grab and go

Mashgin社食品の分野で、話題なのが「Grab and go」という考え方です。
直訳すれば、「とって、行く」販売形態で、注文を受けてからフード・ドリンクを準備する従来の営業形態に比べ、より素早く商品を提供できるのが一番の利点です。
従来の営業形態では10分以上かかっていたものを、ピーク時でも1、2分で買い物が終わります。ヤンキースタジアムやエンゼルススタジアムなど人がたくさん集まる場所で採用されています。Mashgin社はレジをさらに効率化するために、従来のPOSレジと異なる3D技術を核にしたレジシステムを導入し、Grab and goショップをレベルアップしています。(詳細はMashgin社youtubeより3d check outを参照)

Grab and goの考え方は一つの業態に限定されることなくスーパー、コンビニ、レストラン、コーヒーショップなどに採用されています。Grab and goフードサービスは、若い世代、特にミレニアル世代の間で非常に人気があり、消費者動向調査によると、平均的な消費者の19%が持ち帰り用の食品を選択しているのに対し、ミレニアル世代の30%近くがgrab and go食品を購入しています。市場におけるGrab and goゴーフードサービスは、2006年から2014年の間に年間10.4%増加しています。

コロナ禍の中で、生活者は購買の時間短縮を重視しています。そして、古いしきたりや流儀に左右されず、気軽に本物の味を実現できる、RTDやGrab and goを求めているのです。
Grab and goの課題は、需要予測の的確性で、これが狂うと在庫切れや、不良在庫の増加、人員配置のミスや顧客対応のミスが発生します。科学的な管理がGrab and Goの成功の全です。

パンデミックの影響で、消費者は安全性に神経質になり、従来のトングの使用や大盛りの商品からの取り分けなどに抵抗感を持ち、個別にパッケージ化されたGrab and go商品が評価されています。リアル店舗の欠点はレジ待ちの時間の短縮です。リアル店舗はレジの数しか同時決裁ができません。このような消費者の不満に対した解決策がAmazon Goのコンセプトです。

Amazon Goが実現したレジ無し決済も”Grab-and-Go”と呼ばれています。

コンビニエンスストアのディストリビューターであるCore-Mark社は、grab and goサービス支援のためのシステムを提供しています。生鮮食品を提供するための美しい陳列ケースや温度管理システム、清潔で消毒、清掃などの安全システムの提供で日常のオペレーションを支援します。日本でもいくつかのショップがGrab and Goを店名に使用しており、ITテクノロジーを活用した新業態がコロナ禍から脱出することで広く導入されていくものと思われます。

 

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