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ニューヨークで見かけたクリエイティブ広告

ニューヨークでは、街中を歩いていると、美しい建築やアート、壁画、お店のショーウィンドウなど日々様々な新しい発見があります。そんな刺激的なニューヨークでは、広告もアートのように美しいものや独創的なもの、人々の注目を集めるような面白い工夫がされているものなどが色々あります。タイムズスクエア、五番街、SoHo、ウィリアムズバークなどニューヨークを代表するエリアで、最近見かけた面白い広告を紹介します。

ブランドの世界同時PR

ニューヨークで今話題の広告といったら、ルイ・ヴィトンによる、世界的に有名なアーティスト、草間彌生さんとのコラボ商品のプロモーション広告です。ニューヨークの有名なショッピング街、五番街に、水玉のアートを描く草間彌生さんの姿が登場しています。

そんな大々的な広告を仕掛けているお店のショーウィンドウには、人々の話題となるような面白い仕掛けがされています。草間彌生さんそっくりのロボットが登場し、ショーウィンドウ内で、水玉模様を描いています。まるで本物の人のような動きをする面白い光景の前には、次々と人々が集まってきています。

今回のコラボでは、草間彌生さんの代表的なシンボルとも言える水玉模様、ポルカドットのバッグや洋服などドット柄の限定商品が登場し、店舗、ポップアップ、ビルボードでのプロモーションもポルカドットが主役となっています。

街角のビルボードの美しいコマーシャルポスター自体は、モデルさんが商品と一緒に登場するなど、従来のスタイルですが、そこにインパクトを加えているのが、カラフルな水玉模様です。美しい写真の完璧なポスターの上から、あえて筆で水玉模様を描いて載せています。水玉模様は立体的でとても存在感があり、暗い夜の街中でもとても目立つ存在となっていました。

世界的ブランド、ルイ・ヴィトンによる、草間彌生さんとのコラボのプロモーションは、ニューヨークだけでなく、パリ、東京など世界各地の大都市で同時に行われており、世界を舞台にしたインパクトのある面白いプロモーションとなっています。

デジタルサイネージ

現在広告は、世界中でどんどんデジタルへと移行していますが、ニューヨークで、そんなデジタルサイネージの中心となっているのが、狭いエリアにたくさんの電光掲示板が密集しているタイムズスクエアです。

一つのスペースを一つの広告で占有するには、コストが高くなり過ぎている今の時代、一つの場所を多くのデジタル広告を交代で表示させることによって、より多くの広告主が手軽に利用できるようになっています。

広告需要が激変したパンデミックを経て、タイムズスクエアはすっかり電光掲示板のビルボードが増えました。

ワクチンの広告が大きく出ていますが、パンデミック中の広告が少なくなっていた時期には、医療関係者など前線で働くエッセンシャルワーカーの人々への感謝や応援メッセージが電光掲示板に流れていたこともありました。臨機応変で迅速な対応が可能となったデジタル広告は、革命的な存在です。

タイムズスクエアに立つ細長いビル。ちょうど中心的な位置に存在していることもあり、ビルの表の一面をデジタル広告スペースとして全面提供されているのですが、そんなビルのデジタル広告で非常に面白いと思った広告がこちらです。

お友達と踊って楽しむ様子など、人々の日常が生き生きと伝えられている、人々を楽しい気持ちにさせてくれる広告でした。まるでタイムズスクエアにマンションが登場したような感じで、マンションの住人たちの生活を覗いているような感覚になる面白い広告となっていました。

デジタル広告は、手軽なこともあり、ありきたりになりがちですが、ロケーションや広告スペースの形状に合わせて、工夫次第では心に残る面白いものを展開することもできます。

デジタル広告は、ビルの外だけでなく中でもたくさん見かけます。

企業イメージを伝える広告や、みんなの心の内に秘めている願望に訴えかけるようなキーワードを、クロスワードパズル形式で演出した面白い広告です。クロスワード好きも多いアメリカ人。思わずハイライトされたワードを目で追いかけてしまい、知らず知らずのうちにキーワードが心に残り、記憶にも刻まれそうです。

クロスワードパズルで伝えたいキーワードを発信するというのは、面白い手法のデジタルサイネージ広告です。

ニューヨークの地下鉄と言えば、歴史ある存在でかつては車両内や構内にポスターの広告が多く存在しましたが、最近ではすっかりデジタル広告スペースに置き換えられてきています。特に動画広告が増えており、3つの液晶ディスプレイを利用した、ミュージカルなどのダイナミックな動きの広告が流れています。

ウォールアート広告

利便性を追求するデジタルサイネージやポスター広告の対極に位置するのが、サイトスペシフィックなウォールアートによる一点もののアートな広告です。

例えばマンハッタンのお隣、ブルックリンのウィリアムズバークは、ウォールアートで有名なお洒落なエリアです。そんなウィリアムズバークの広告の中心となっているのが、ウォールアートスタイルです。

ウィリアムズバークでは、広告はポスターで貼られるものではなく、アートのようにその場所で制作されるものになっています。つまり、まっさらな壁に絵を描き、広告を作っていきます。

ブルックリンを歩いていると、常に広告のウォールアートを制作している現場に遭遇します。アーティストの街ならではの芸術的な広告がいっぱいある、とても面白いエリアです。

あまりアートな印象がないあのAmazonも、ブルックリンではイメージチェンジです。Amazon Musicの広告がこんな楽しいアート広告になっています。

上記のようなブルックリンっぽさを描いた広告もありますが、写真のようなクオリティの美しいウォールアートもあります。

まるで写真のポスターのような美しいウォールアート広告です。写真のポスターの広告だと、意識しないで通り過ぎてしまいそうですが、これが壁に描かれた絵だと気づくと、人々の注目を集める存在になります。ブルックリンの街中を歩いていると、広告のウォールアートが、まさにその場所に合わせた、サイト・スペシフィック・アートのようになっていて、普通の広告では演出できない特別感があり、写真に収めている人の姿もよく見かけます。

こちらは、「あなたはひとりじゃない」キャンペーンの広告です。

ブルックリンのウォールアート広告は、商品や企業のブランドイメージが中心となっていますが、中には、人々に社会的なメッセージを伝えるものも見られます。

長いステイホーム期間を強いられ、メンタル的な支えを必要とする人が増えてしまったときがありましたが、そんな人々を救う活動のひとつとして広告を街中に作り出していったものです。

街角のビルボード広告

SoHo、トライベッカ、チェルシーなどニューヨークのお洒落なエリアには、お洒落エリアならではの街の景観を壊さない洗練された広告が色々見られます。所々の目立つ街角にビルボードがあり、思わず目が行ってしまう広告が多くあります。こちらは、SoHo のビルボードですが、ビルボードのすぐ隣には、自由の女神をモチーフとした目を引く美しい壁画があります。色鮮やかな壁画の効果もあり、思わず目が行ってしまう広告スペースですが、そこに畳み掛けるように、いくつもの形状が違うビルボードがあり、ブランドイメージ広告にぴったりの場所となっています。一流ファッションブランドの広告はいつの時代も、時の変化を感じさせない、ぶれない洗練されたスタイルの広告を展開しています。

高級ジュエリーブランド、Van Cleef & Arpelsのビルボード広告は、ブランドのイメージ通りの夢のある世界感の広告です。おとぎの国のような世界が描かれた上品な色合いのイラスト広告となっています。

遊び心ある広告

ニューヨークでは、他ではあまり見たことがないような遊び心のある広告も見かけることがあります。

最近では、工事中の敷地に張り巡らされている壁も広告スペースとなっていますが、広告費が安いそのようなスペースでは、思い切った遊び心のある一点ものの広告を見かけることもあります。

テレビ広告などで、検索バーが登場しキーワードで検索を促すという映像は見たことがある人も多いと思います。その感覚で作られている、街中の広告がありました。

検索バーが登場しているこちらの広告。立体的な3次元広告で、音も発する面白い仕掛けがされています。おもちゃの音が聞こえてきたら、目の前を通った人は思わず注目してしまいます。恐竜の鳴き声や電車の走る音などが、一定間隔で聞こえてくる広告です。人々の興味を上手に引く、面白い仕掛けの広告です。

遊び心のある、独創的な面白い広告だと感じたもう一つがこちら。

とても長い壁に描かれている文字を追いかけてみると、スイスのアルプスの歌のフレーズが。

巨大なウィリアムズバークの倉庫街の一角にある工事現場の長い壁に描かれていた広告です。

歌のフレーズだけでは何の広告か分かりませんでしたが、その先には、個性的な建築の家の写真が登場。今や世界中で知られる存在となっている、Airbnb の広告でした。

ニューヨークでは、世界の広告業界の流行同様、ビルボードや駅のデジタル広告が多く見られるようになり、広告スペースのデジタル化が進んできています。ですがその一方、ニューヨークではデジタル化トレンドの逆を行く、1点物の手のかかるウォールアート広告や、店舗、ポップアップによる、それぞれの場所や地域の雰囲気にマッチした個性的なプロモーションの存在感も増しています。

大商業都市ニューヨークには、アートやエンターテイメントの要素を散りばめ、その場所の個性を大切にした、ありきたりとならない工夫が凝らされた広告も多く、人々を楽しませながら、注目を集めることに成功しています。

 

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