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香港「ハーバーシティ」の最強ノベルティグッズ開発(後編)——担当者の決断スピードと実行力から生まれた傘

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香港「ハーバーシティ」の最強ノベルティグッズ開発(前編)――お正月は最大の宣伝チャンス

香港最大のショッピングモールにして、ノベルティグッズ作りに定評があるハーバーシティ。大切な年中行事である旧正月のお年玉袋が、その代表的なアイテムであり、香港中でデザイン合戦が始まるきっかけになったことを、前編でお伝えしました。

Photo:ここ数年のハーバーシティからの傘たち。世界的アーティストとのコラボレーションばかり。

もう1つ、ハーバーシティらしさがたっぷり詰め込まれているのが、毎年作られているオリジナル傘。今回の後編は、そのバラエティあふれるデザインと、有名アーティスト集団と担当者の出会いから生まれた一本について、お話します。

「お年玉袋も傘も、外に持ち出して使うものなので、ノベルティグッズとして理想的。お年玉袋は、渡すことで見てもらえるし、傘なら、雨の日に香港中でハーバーシティの傘が出てきて、人の目にも入ります。これを差し上げていない人の目にも止まることから、広告効果は抜群なんです」

Photo:2018年の傘は、スペイン人アーティスト、Jaime Hayonとのコラボ。全館コラボで、ハーバーフロントの広場でも大きな展示があり、アーティスト本人も登場。@harbourcity

Photo:持ち手の先端までオブジェがついている。@harbourcity

何本あっても助かる存在で、洋服やバッグと比べて、普段の趣味とかなり違っていても、傘なら思い切って大胆な色遣いやデザインを抵抗なく持てる傾向もあります。

「受け取ってから、初めて傘を開いたときのサプライズが、またとてもいいんです」とアンドリューさん。ハーバーシティがノベルティとして傘を作り始めたのは、2003年。その頃からの変遷を見てみましょう。

Photo:2003年。素敵ではあるけれども、日本にもありそうなデザイン。@harbourcity

Photo:@harbourcity

Photo:2005年(左)と2009年には、マドンナの絵本「The English Roses」のイラストを手がけた有名イラストレータ-、Jeffrey Fulvimariを起用。@harbourcity

Photo:@harbourcity

Photo:@harbourcity

Photo:2007年は、前編で言及した草間彌生との全館コラボの一環として作られた傘。@harbourcity

Photo:2011年 中国の有名コンテンポラリーアーティスト、岳敏君との全館コラボに合わせて、まさに完全なコレクターアイテム。@harbourcity

Photo:2016年、日本のベアブリックをテーマに、館内の最高級ファッションブランドがそれぞれデザインしたベアブリックを並べた、総力イベントともリンク。@harbourcity

Photo:@harbourcity

Photo:傘の骨の先がすべて熊になっているなど、非常に凝っている。@harbourcity

Photo:@harbourcity

Photo:オープニングセレモニーでは、この傘を持ったダンサーも登場。@harbourcity

デザインはフェミニンからユニセックスへ

初期の頃は色合いもデザインもフェミニン。「買い物客の大半を占めるのは女性なので、当時は強く意識したデザインでしたが、2010年頃からユニセックスデザインに転換しました」とアンドリューさん。

2019年の今年は、ここ数年続いているディズニーとのコラボの一環で、映画『トイストーリー4』がイベントやキャンペーンのテーマになっているため、傘もトイストーリー絡みのデザインをすることに。

「ここで悩んだのが、ディズニーのキャラクターものの傘はいくらでもあるし、あまり子どもっぽいデザインになってしまうと、使ってもらえる人が限られてしまう。香港のハーバーシティならではというテイストも入れるために、香港人有名DJの林海峰と歌手の葛民輝という人気仲良しコンビを起用し、彼らとディズニー、ハーバーシティのトリプルコラボとして進めました」

トイストーリーのテーマである「友情」を取り入れつつ、林が緑、葛が青の傘を担当。緑はバズライトイヤー、青はウッディのカラースキームに。葛本人のアイコンと、トイストーリー4の新キャラクターを一緒に使用するなど、ひと味違うデフォルメを加えたデザインになっています。

Photo:筆者に届いたのは、葛民輝とのコラボの青い傘。

Photo:Caption: 林海象コラボの緑は、バズライトイヤーとエイリアンがモチーフに。@harbourcity

突然の「侵略」に担当者はどう動いたか?

アンドリューさんとノベルティ傘に関わる、アクティブで柔軟なハーバーシティらしいエピソードがあります。

フランスのストリートアーティスト「INVADER(インベーダー)」をご存じですか?2018年の傘は、世界中に現れてはモザイクアートを残していく彼らとのコラボレーションでした。しかしこのコラボが生まれたきっかけは、市場調査の結果を、時間をかけて練り込んだようなマーケティングプランとは、まったく無縁のもの。

その年の9月に、深夜残業をしていたアンドリューさんの元に、「今日、イベント用のデコレーションの予定なんて入っていたっけ?作業している人たちがいるんだけど」と警備員から連絡が。そんなはずはない、と現場を見に行ったアンドリューさん。なんとそこにいたのが、かの有名なインベーダーのチームだったのです。

Photo:まるで最初からデザインされたようにはまっているインベーダーアイコン。@harbourcity

びっくりしながらも、彼らを大歓迎したアンドリューさん。全面的に協力して、館内中の17カ所に、インベーダーのモザイクアートが施されました。前編の1枚目の写真にも映っています。

Photo:パックマンたちもこんなところに。広い館内でインベーダーのアートを探して歩くのも楽しい。@harbourcity

Photo:世界各地の客船が立ち寄るターミナルにもなっている、ハーバーシティのコンセプトとぴったりはまった錨のアートは、傘に採用された。

さすが有名アーティストだけあって、ビクトリアハーバーに面していて海との縁が深いハーバーシティに合わせ、人魚や錨などの柄を選んでいるなど、しっかりコンテクストまで考え抜かれてありました。

Photo:絶景で有名なオーシャンターミナル駐車場には、フォトスポットを表すアートが。インベーダーが香港の旗を掲げていたりもする。

もしかしたら、無許可と気付いた警備員が作業を中断させて、強制退去させていたかもしれません。たまたま深夜に居合わせたことで、アンドリューさんにとっては、世界的有名アーティストの作品が、館内中に生まれる千載一遇のチャンスをものにしました。

Photo:館内のあちこちを侵略!@harbourcity

さすがだと思うのが、そこでたたみかけるスピード感。

「この年、すでにノベルティ傘のデザインはすべて決まっていて、これから製造に入るところでした。これをすべてキャンセルして、急遽インベーダーが描いた錨の柄を使った傘を作ることに決めました」

フランスのエージェントを介してインベーダーと連絡をとり、コラボして完成させた傘は、錨柄が入ったモノトーンの地に、黄色の錨が浮かび上がるシックなデザイン! ユニークだけれども、誰にでも持ちやすい完成度の高さでした。

Photo:錨マークを生かした傘には、「インベーダーさんのアートは、僕たちハーバーシティがしっかり面倒みます」という文言も入っている。

Photo:インベーダーとのコラボを実現させたアンドリュー・ヤンさん。

インベーダーの襲来は9月。傘が仕上がったのは11月!

「実は、素材、サイズや形状などが決まっている傘だったから、印刷部分だけを変えれば良いため、この期間でも何とか間に合ったんです。これがエコバッグなどだったら無理でした」

Photo:おそろいの傘バッグや錨マークのタグも、しっかりコーディネイトされている。

この効率の良さと決断の早さ、実行力。香港有数の大企業であっても、現場の担当者アンドリューさんへの信頼と権限委譲がしっかりしているからこその即断で、実現できたプロジェクトでしょう。香港のこんなスピード感があるからこそのノベルティ開発から、ぜひ刺激を感じとってください。

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