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アメリカの不織布や紙ベースのエコバッグ事情

ニューヨークをはじめアメリカの多くの地域では、近年、プラスチック削減のために、スーパーマーケットをはじめ店舗で配布されていた使い捨てのビニール袋が姿を消し、再利用可能なエコバッグが利用されるようになっています。当初、エコバッグと言えば、プラスチック製の不織布の商品が主流になっていましたが、最近では、プラスチックのエコバッグは新たなプラスチック商品であるという事実に対して見直されるようになってきており、コットン製や、紙ベースなど、幅広い素材のエコバッグが登場しています。

またプラスチック製の不織布のエコバッグに関しては、新たなプラスチックではなく、ペットボトルなど既存の廃棄物を再利用したリサイクルプラスチックが使用されることが多くなってきています。ニューヨークのスーパーマーケットやミュージアムショップなどで販売されている様々な不織布や紙ベースのエコバッグについて紹介します。

スーパーの不織布バッグ

レジ袋の代替としてエコバッグが一番最初に登場したのは、やはりスーパーマーケットです。

アメリカの人気スーパー「Whole Foods」では、イメージカラーを全面的に出したシンプルなデザインのエコバッグが定番となっています。

価格は、リサイクルプラスチックの使用やインフレの影響があるのか少しずつ上昇していますが、スーパーマーケットのエコバッグは数ドル程度と購入しやすいものとなっています。

Whole Foods のバッグは、100%リサイクルプラスチックボトルが使用されたポリエステル製で、少なくとも125回は再利用可能とされています。

Whole Foodsのこちらの定番エコバッグには、珍しい前ポケットが付いています。メモなどちょっとしたものをさっと出し入れできる便利な存在です。

Whole Foodsでは、これまでは、全店共通のエコバッグのデザインでしたが、最近では、地域限定デザインのエコバッグも登場するようになってきています。

こちらはニューヨーク版で、つい最近発売されたものですが、ニューヨークの街のシンボル的な有名な建築、クライスラービルディングが描かれています。Trader Joe's など他のスーパーの自社ブランドバッグではよく、バッグの各側面のデザインを変えて楽しめるようにしていますが、Whole Foodsはバッグの側面は向かい合わせに全く同じデザインであることが多いです。このバッグも、前から見ても後ろから見ても同じ絵柄です。

「100%リサイクルプラスチックを利用して、このバッグは作られました」という、アピールポイントが、バッグの側面に大きな文字で示されています。

ニューヨークで街を歩いていると、とても多くの人たちが日常的に利用していてよく見かけるエコバッグがあります。丸柄の赤いエコバッグで、Target というお店のものです。

Targetは、食料品に加え、生活用品、雑貨、電化製品など幅広い品揃えの商品を販売している全米展開の大手小売会社で、エコバッグの柄には、現代アートのようなトレードマークをとても目立つ形で使用しています。

他のスーパーマーケットでは、コットンのバッグや不織布バッグなど複数の選択肢がある所が多いのですが、Targetではポリプロピレン製不織布一本で、どのスーパーマーケットよりも安いエコバッグを提供しています。

左側の少し上質に見える真っ赤なくっきりカラーのデザインのバッグの方が99セント。

右側の横広でグレー色のバッグは、なんと5セントという安さです。ポリプロピレン製は安価で丈夫で、ポリエチレンなど他のプラスチックと比べた際、製造過程で二酸化炭素の排出量や廃棄物が少ないという利点があります。

Targetの不織布のエコバッグは、とても軽量ですが見た目以上に丈夫です。どれくらい耐久性があるのかについて、バッグに丁寧に説明書きがされています。

ポリプロピレン製の生地の厚さは80GSM(1平米あたり80グラム)で、少なくとも125回は22lb(約10kg)の重さのものを175ft(約53m)の距離運ぶことができます。

また有害物質は一切含まれておらず、洗濯機の使用も可能となっています。洗濯機の場合は冷たい水で、もしくは、ぬるま湯で食器用洗剤を使用して洗うよう取り扱い方法についても書かれています。禁止事項は漂白と乾燥機の使用です。

どこよりも安い5セントの不織布バッグですが、驚くほど丁寧に商品に関する情報が詳細に書かれています。

商品の説明に加え、再利用してね、というメッセージもあります。

スーパーの紙ベースのエコバッグ

紙素材を使った丈夫な再利用可能なエコバッグは、不織布製のエコバッグと比較すると、それ程多くは普及しておらず、Trader Joe'sをはじめ一部のスーパーマーケットのみで販売されています。

Trader Joe's という西海岸発祥のアメリカの人気スーパーマーケットは、デザインのいいエコバッグを色々取り揃えていることでもよく知られています。コットン製のエコバッグをはじめ色々な素材の商品を取り扱っており、その一部として、紙ベースのエコバッグもあります。

トレーダージョーズは、デザイン的に面白い商品が色々とあり、この紙のエコバッグもそのひとつです。右側のエコバッグは、Trader Joe'sのもともとの使い捨て紙袋と見間違えるほどそっくりなデザインのバッグです。洗える紙製のバッグで、何度でも使って洗って再利用ができるような丈夫なバッグです。スーパーのショッピングバッグのデザインをそのまま利用し、再利用を可能にした、丈夫な紙製のエコバッグは、ちょっと遊び心のあるTrader Joe'sファンなら思わず買ってしまう商品でもあります。

サステナブルであることを念頭に作られたカリフォルニア州を拠点とする Out of Woods社の Supernatural Paper® が使用されています。

左側の大きなバッグは、紙や不織布などの軽量エコバッグの中ではかなり大きめなサイズのバッグです。そのため、重量に耐えられるように、特に耐久性に備えて作られています。例えば、縫い目の裏側にもう一枚生地を当てて縫うようにするなどの工夫がされています。

肩掛けの紐はバッグの底までしっかり縫い付けられ、紐の部分で重さを支える工夫をしています。

紙素材のこのエコバッグは、洗える紙でできているので洗うことができます。手洗いまたは洗濯機の手洗いモードで、冷水とマイルドな洗剤を使って洗濯するのが望ましいとバッグに記されています。

洗える紙の素材のエコバッグ、初めて洗う時は躊躇するかもしれませんが、水弾きのいい丈夫な素材でできているので水洗いしても問題ありません。干す時は平らな状態で干すと型崩れも起こりません。

ミュージアムの不織布バッグ

紙ベースのエコバッグとは対照的に、不織布のエコバッグはとても幅広く普及しています。不織布の大部分を占めるのが、安価で丈夫な合成繊維であるプラスチック製のバッグですが、今では環境問題の観点から、リサイクルプラスチックを使用したものが多くなっています。最近では、スーパーマーケットの他、ミュージアムショップなどでも、デザイン性の高い不織布のエゴバッグが色々と登場しています。エコバッグは、ミュージアム訪問時の手軽なお土産用の商品であると同時に、人々が日常的に持ち歩いて使用するバッグにもなり、絶好のPRの媒体とも言える存在となっています。

不織布エコバッグが普及しているミュージアムは、市のミュージアムや、歴史や自然科学、宇宙航空などのミュージアムで、家族連れが多く訪れるファミリーフレンドリーなミュージアムほど、不織布バッグのような手頃な価格の商品が充実しています。

一方、アートを中心とした美術館では、廉価な不織布バッグは扱っていないことが多く、そういったミュージアムでは、コットン製の上質なデザインのトートバッグが主流となっています。デザイン性が高く種類が多く、しっかりとした生地の丈夫なバッグとなり価格帯が上がります。

自然史ミュージアムでは、ミュージアムの見どころである、恐竜や動物、蝶々、お花などがセンス良く描かれたデザインのバッグが色々売っています。

バッグの底には、前はペットボトルだったことが絵付きで説明されています。

そして、どうしてこのエコバッグを選ぶのか?ということで、その理由が具体的に分かりやすく紹介されています。

  1. 世界中で推定年間40億枚ものプラスチックバッグがごみになっています。
  2. アメリカでリサイクルされているプラスチックバッグは、たったの1%です。
  3. プラスチックバッグ14枚分は、車で1マイル走れるくらいの石油に相当します。
  4. アメリカで1年間に使用する分のプラスチックバッグを作るには、1,200万バレルものオイルが必要になります。

だから、環境を守るために、自分ができることをやっていこう!

 

そんな教育的メッセージが書かれたエコバッグとなっています。

これらのエコバッグは、手軽なお値段でそれぞれのミュージアムに即したセンスのいいデザインの商品が多いので、いいお土産にもなり、学生をはじめ多くの人たちが購入し持ち歩いている姿が見られます。

100%リサイクルボトルのプラスチックを再利用して作られたエコバッグです。そして、洗濯機洗いが可能な商品です。

色々なミュージアムショップで、不織布バッグが販売され人気になってきている中、ニューヨークの歴史のミュージアムでも、新しい不織布バッグが登場していました。

今までは、ビニール製や、キャンパス地などの重量のあるトートバッグを中心に販売していましたが、エコフレンドリーなバッグとしてはじめてこちらの商品が作られました。とても軽量のエコバッグなのですが、20kgの重量まで耐えられる50cmもの幅がある、肩にかけて使いやすいゆったりサイズのバッグです。

そんな歴史ミュージアムのエコバッグのデザインは、絵柄ではなく、文字がいっぱいです。まるで、歴史の教科書でも読んでいるような気分になる、いかにも歴史ミュージアムらしい面白いデザインです。 ニューヨークで最初にできたミュージアムは何でしょう?という質問が書かれていますが、もちろん、こちらの歴史のミュージアム、New York Historical Society のことです。

公共機関である図書館でもオリジナルブランドのエコバッグを販売しています。

ニューヨークの公共図書館では、中央図書館の建物の前にいるライオンの像をモチーフに、ライオンを図書館のオリジナルキャラクターとしています。歴史ある美しい建物にあり、旅行者もたくさんやってくることから、図書館のオリジナルグッズを色々販売していますが、その中にエコバッグもあります。

図書館のエコバッグは、とても軽量でしっかりした不織布のエコバッグです。エコを意識した商品ではありますが、実は100%リサイクルエコバッグではありません。黒い方のエコバッグはどちらもペットボトルなどを主な原料とした80%リサイクルプラスチックから作られています。そして、赤い方のエコバッグは、リサイクルプラスチックを利用したものではなく、Target同様、ポリプロピレン製で安く販売されています。黒のリサイクルプラスチックのエコバッグの方が赤いポリプロピレン製エコバッグよりも価格的には2.5倍ほど高いです。

アメリカでは、海洋汚染など環境問題への取り組みとして、プラスチック削減のためのエコバッグの利用が浸透して来ています。お店から使い捨てのレジ袋が姿を消し、エコバッグ持参で買い物に訪れる人が増えました。そんな使い捨てのプラスチックバッグから、再利用を念頭としたエコバッグへの転換が進むにつれて、プラスチック製のエコバッグは、新たなプラスチック製品ではないか?という意見や、生産に多量の水と肥料、農薬が使用されるコットンを使ったエコバッグも含め、再利用するために作られたエコバッグにもかかわらず一度切りまたは数回しか使わない人も存在し、以前のレジ袋と比べて、実際は環境に悪影響を与えているのではないか?という意見もあります。

そんな多様な意見を踏まえ、スーパーマーケットやミュージアムショップなどでは、様々なエコバッグが登場しています。現在の主流となっているのは、リサイクルプラスチックを使用した不織布のエコバッグ、ポリプロピレン製の不織布のエコバッグ、よりデザイン性が高く高級感のあるコットン製のエコバッグです。また、紙製など、より環境に優しい新たな素材を使用したエコバッグも登場して来ています。

中でも、トレンドの変化と言えるのが、新規のプラスチックより割高になるリサイクルプラスチックを使用したエコバッグの増加です。原材料となるリサイクルプラスチックのニーズが増すことにより、ペットボトルなどのリサイクルがより盛んになっていくことは、環境にとっても良い変化と言えます。

どんな素材にしても、エコバッグの使用により、環境に対してプラスとなるための最も大切なことは、使い捨てにされることなく、何度も繰り返し使用してもらうことです。特に安価なプラスチック製のエコバッグは、何度も使ってもらうための具体的なメッセージを発信していくことも大切になっています。同時に、多くの人が日常持ち歩くことが多くなっているエコバッグは、単なる一商品ではなく、それぞれのブランドの環境問題への取り組みも含めたPR的な役割も果たしています。

 

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