ビジネスパーソンが読むメディア。マーケティング、セールスプロモーション、パッケージの企画・開発に役立つアイデアと最新の情報を、世界中から配信。

エシカル消費を当たり前に。イギリスのZ世代が夢中になるチャリティーショップTraidの戦略

イギリスのZ世代がけん引する「中古衣料品ブーム」

中古品(Secondhand セカンドハンド)、年代物アイテム(Vintage ヴィンテージ)は各SNSの検索ボリュームが非常に多いワードに急浮上しています。

その反面、低価格でトレンディーな衣料品が売りのファストファッション市場は減速傾向。

飽きられ着られなくなった服が廃棄され増え続けるゴミ問題や、この業界の低賃金で過酷な労働環境からはもはや目を背けられません。

「地球を汚す産業」と悪名高いファストファッションに背を向けはじめた個性豊かなロンドンの若者が行く先、そのひとつにチャリティーショップがあります。

チャリティーショップで中古品を買って再利用し、手放すときはチャリティーショップで寄付。モノ・コトが循環するチャリティーショップの利用は「地球にやさしい行動」としてイギリスの若者の暮らしに浸透しています。

今回は、数あるロンドンのチャリティーショップの中から、ひと味ちがうスパイスの効いた「Traid」を取り上げます。

サスティナブルな強いメッセージとファッション性で根強い若者のファンが急増中!

ロンドン在住の筆者も大好きでよく利用しているため、実際に足を運び支持者のひとりとしてTraidの魅力をたっぷり紹介していきますね。

 

TraidはZ世代に人気のチャリティーショップ

Traidは「Textile Recycling for Aid and International Development」の略で、「援助と国際開発のための繊維リサイクル」というような意味が込められています。

商品は主に人々が着なくなり寄付された衣料品。

大量に集められた品々はスタッフが状態を見ながら手作業で仕分けし、新たにリフレッシュした状態で店頭に並びます。

現在はロンドン市内に12店舗を構え、東ロンドンのダルストンやパンクな街カムデン、アフロカリビアンなブリックストンを筆頭に若者でにぎわう場所に溶け込んでいます。

【Traid店舗リスト】

  • Walthamstow
  • Lewisham
  • Brixton
  • Camden
  • Clapham
  • Dalston
  • Hammersmith
  • Kilburn
  • Peckham
  • Shepherd's Bush
  • Westbourne Grove
  • Wood Green

ド派手なマネキンのコーディネートにも注目!

ロンドン市内の数あるチャリティーショップの中でひときわ目を引くTraid。

仕掛けのひとつがショーウインドーです。ファッションショーや舞台コスチュームを思わせる奇抜な洋服をまとったマネキンがインパクト大。

好奇心をかき立てられ、ついついお店の中をのぞいてみたくなりました。

はじめてTraidを通りかかった時は、その個性的な店構え故に足を踏み入れるまでチャリティーショップと気づかず。

新しいヴィンテージショップでもオープンしたのかな?と思ったほどです。

Traidには「ここなら何かおもしろいモノが見つかるかも!」そんなワクワク感があります。

手軽な無料回収システム

衣料品を処分することへの罪悪感や、店に持ち込むという面倒な手間を払しょくしサクッと寄付ができる。

それがTraidの回収システムです。

オンラインで住所を入力し希望の日にちを予約をすると、無料で指定の住所まで回収に来てくれるのです。

回収の予約は電話でも受け付けています。

訪問回収だけでなく、ロンドン市内に回収ボックスがたくさん設置されているのでそちらも好きな時に利用できます。

ただし、いらないモノならなんでも良いかというとそうではなく、ある程度清潔で状態が良い衣類、両足そろった靴、アクセサリー、リネンのみ。枕やかけ布団は含まれず、ごみ袋1個以上の量なら回収されます。

回収に出す判断基準は、自分にはもう必要ないけれど、誰かに着てもらいたい!使ってほしい!と思えるコンディション。次に使う人への心遣いと仕分けするスタッフの労力を第一に考えた上での寄付が鉄則です。

モノが再び人の手に渡り再利用される。それにより廃棄物処理で起こるCO2排出をストップ。

Traidは環境への配慮をもとに「モノが循環するサービス」を提供するほか、利益を国際開発プロジェクトなどに寄付しています。

捨ててゴミにするのではなく、寄付する。寄付するものは、大切に使われてきた状態のいいものだけ。

この考えがあればモノを丁寧に扱う習慣が生まれ、処分するものがあっても気持ちよく手放せます。

環境に配慮したい若者にとどまらず、ロンドンで積極的に利用されているのがこの回収システムです。

若者をターゲットにしたイベントを頻繁に開催

Traidの楽しい施策の中で注目したいのが、チャリティーにエンターテインメントの要素を盛り込んだイベントです。

イベント開催日は特別に営業を延長し、DJがパフォーマンスするなかで夜のショッピング!

そのほかにはインドのペイント技術「ヘナ」のワークショップや、衣料品が人々の手に渡るまでの流れを学ぶ展示を設けたり。

さらに、Traidによる進行中のプロジェクトをエキシビションで紹介したりと買い物を楽しむだけでなく、同時に若者がチャリティーや寄付、環境、支援について知る場をプロデュースしています。

Traid潜入レポ

ここからは、私も頻繁に利用するTraidの雰囲気をお見せします!

運よくこの日はセール中。チャリティーショップで販売される衣料品は割安なのに、さらに値引きとなりお得感満載!

Traidのいいところはなんといってもヴィンテージ品の多さ。

しかもほかの商品と混ざることなくカテゴライズされているため、見やすいのが嬉しいです。

ダメージがないかチェックは欠かせませんが、格安でステキなヴィンテージアイテムが見つかります。

セール中は全ヴィンテージ商品が半額でした。

ブランド服もコンパクトにまとめられているため、掘り出し物を必死に探す手間が省かれます。

個人的に気になったLL.Beanのジャケット。£40から半額の£20で購入のチャンス!

ところどころにTraidのポリシーが掲げられ、インテリアの一部でありながらさりげなく熱烈なメッセージを伝えています。

内装はできる限りリサイクル可能な素材を使ったエコなインテリア。

照明は再生可能かつ低エネルギーで、言われてみると店内はほんの少し薄暗さがあり、自然光がやさしく照らすような明るさと感じました。

棚や試着室には廃材や環境にやさしいチップボードがあしらわれています。

Z世代を巻き込んだオンライン戦略

Traidの発信のなかに、意識を高め合うオンラインプロジェクト#Secondhandfirst(セカンドハンドファースト=中古品第一)があります。

独自のハッシュタグを作成し、共感した投稿者がSNSでこのタグを使用、投稿を見たほかのユーザーが次から次へと同じタグを使用する。

発信力のある若者に協力を求め拡散力を強めるというものです。

ファッションは個性を表現するもの。オンライン上でコーディネートを披露しハッシュタグを加えることで、「セカンドハンドを支持している」という明確なメッセージと個性を発信したい若者の欲求が満たされます。

こうしてユーザーと一心同体となってムーブメントを生む、オンラインならではの手法をうまく活用してきました。

Traidの商品は独自のオンラインショップのほかに、イギリスで人気のDepopやeBayといったショッピングサイトでも購入できます。

Depopは中古品特化のフリマアプリですが、一見インスタグラムのように華やかでポップなインパクトがあり、ユーザーの80%が25歳以下。

エシカルを意識してファッションを楽しみたいZ世代がこぞって利用しています。世界最大規模のショッピングサイトeBayでは新品に限らず中古品売買も活発。

Traidの選りすぐりのアイテムを購入できます。

Traidからロンドン市民への呼びかけ

Traidの調査によるとロンドン市民が所有する衣服の約23%が未使用なのだそう。

新しい服を買ったけれど、結局気に入らず着ないままクローゼットに眠らせてしまっている、そんな人も多いはずです。

ファストファッションが浸透したことで、かつてないほど衣服を頻繁に購入するようになった結果と言えるでしょう。

そこで、行き場に困った衣類を積極的にリサイクルに回すようTraidが呼びかけています。23%キャンペーンでの呼びかけによりロンドン市民の衣類がTraidに渡り、大量の水やCO2排出量の節約に成功してきました。

日々のすさまじい情報量のなかで、与えられたものをなんとなく購入するのではなく、その行動がどのように社会に影響するのか?

Traidはこのキャンペーンを通して私たち個人に購買行動の在り方を問いかけています。

Z世代に学びながらエシカル消費を楽しむ

Traidの若い買い物客に注目してみると、とにかく古着をまとう人であふれています。

時代遅れな感じや小汚さがなく、サラリと自分流で着こなし個性的でとってもお洒落。

流行り廃りはもうたくさん、服が捨てられるのは耐えられない。

環境に配慮したファッションから発せられる強いメッセージが、さらに個人のキャラクターを魅力的に際立たせます。

  • 誰かに使ってもらいたいからTraidで寄付しよう
  • Traidに行くといいモノが見つかるかもしれない
  • Traidで買い物をすると社会貢献できるかもしれない

今日もエシカルを心がけるたくさんの若者がTraidに足を運んでいます。

Z世代の若者たちに刺激をもらいながら、私自身も Traidを利用することで「廃棄物ゼロ」のコミュニティーの一員であり続けたいと思います。

 

▼関連性のある記事

パリで息を吹き返す蚤の市、陳列も包装も古き良き時代へ逆戻り

チャリティーと切り離せない英国のサーキュラー・エコノミー

このライターの記事

Top