ビジネスパーソンが読むメディア。マーケティング、セールスプロモーション、パッケージの企画・開発に役立つアイデアと最新の情報を、世界中から配信。

パリで息を吹き返す蚤の市、陳列も包装も古き良き時代へ逆戻り

2022年から続く急激なインフレにより、フランスでは「seconde main」(中古品)にスポットライトが当たるようになりました。

というのも、毎月の食費が家庭に大きな打撃を与えているためです。フランスにおける食品のインフレ率は直近1年間で14%近くまで上昇しました。特定の食品を買い控えたり、嗜好品を減らさなければならないという消費者は多く、こうした状況も今後しばらくは続くということです。

価格上昇率の高い物としては、乳製品、魚、食用油、洗剤類、アルコール類などがあります。このように、毎日使う製品が一部では「高級品」に変わってしまったため、娯楽用のアイテム・家具・洋服などはできるだけ安価なものが求められているという訳です。

またパリでは、70年代・80年代のヴィンテージ製品が再び流行しています。身に着けるものや家具は“ノスタルジー”が若者たちのテーマ。「ゼロウェイスト」にも貢献できることから、パリの中古市場は22年〜23年にかけて急成長を見せていると報じられました。

確かにパリの蚤の市、フリーマーケット、中古オークションは最近かなりの賑わいを見せています。では実際にどんなものが販売されているのか、陳列方法を見ながらご紹介しましょう。

パリ、クリニャンクールの蚤の市

食器、アクセサリー、雑貨が一堂に会する蚤の市。

パリには有名な蚤の市が3カ所あります。クリニャンクールの蚤の市はパリ北部にあって、世界最大規模の蚤の市としても知られています。
1日では回りきれないほど規模が大きいため、掘り出し物に出会える確立もとても高いと言えるでしょう。

引き出しの取っ手。この中からガサゴソと探していきます。

所狭しと並べられたガラス製品。

またドアのない開放的な商店が集まっているため、お客さんも入りやすく自由な雰囲気が特徴的です。陳列も「整然」というより「積み上げられた」といった様子で、什器にはプラスチックがほとんど使用されていませんでした。

中古家具のお店。

クリニャンクールの蚤の市には中古家具店、中古自転車店もたくさんあります。ただ一つ一つの店舗スペースが狭いので、陳列は上に上に…と空間を有効活用するショップが目立ちました。

そして中古家具は今、フランスで最も注目されているプロダクトの一つだそうです。TVボード、ベッドサイドテーブル、椅子、ランプなどがそうで、素材は木製やラタン(籐)が人気なのだとか。中古家具とはいえクリニャンクールはプロが商っているので、状態の良いものばかりが集められています。

こうしてクリニャンクールでは、20世紀初頭にタイムスリップしたような気分を味わえます。ヴィンテージへの回帰もあって、商店の雰囲気は時代をどんどん逆戻りしているなという印象を受けました。包装も特別なことをしません。小さなアクセサリーであればリサイクル紙を使った封筒か、裸のまま渡されるということも。お皿は新聞紙を巻いてもらえますが、パリの蚤の市に行く際はエコバッグ持参が必須です。

参加者も来場者も増えるフリーマーケット

パリ1区のフリーマーケットの様子。

インフレにより、パリではフリーマーケット(vide-grenier)が蚤の市以上に賑わっています。気候の良い春と秋は毎週のようにどこかで開催されているのですが、参加者の数は2022年から増加傾向にあるということです。申請すれば誰でも参加できるフリーマーケットは、ちょっとした副収入や気分転換にも繋がります。また中古品だけでなく、ハンドメイド作品を販売する人がパリでは急増しているそうです。

大切に使いたくなる革のブックカバー。

パリ5区、ソルボンヌ大学近くのフリーマーケット。

5月に訪れたところ、パリ中心部の5区でも盛大に開催されていました。蚤の市との違いは、出展者がプロであるかそうでないかです。そのためフリーマーケット(アマチュア)は価格帯が安く、値段交渉もしやすいのが特徴です。

とはいえ、パリのフリーマーケットは掘り出し物が非常に多いという印象で、露店の雰囲気も蚤の市とそう変わりません。

レコードも販売されています。

レトロなアイテムがブーム。

ノスタルジックな20世紀の製品が並びます。

お手製の油絵、刺繍作品も。

自作の絵画、刺繍作品も並んでいて自由度が高いフリーマーケット。こちらでも購入後の包装はほとんどありませんので、エコバッグや大きめの買い物袋は持参するのがマストです。

フランスのスーパー、デパートで販売されているショップバッグ(大)が便利です。

食器のほか、服、本、家具、ベビーカー、家電などが置かれるフリーマーケットですが、参加者は自治体に手数料を支払う必要があります。(値段も各自が決定)

そのため包装紙は古新聞など最低限のものが用意されているだけで、エコの観点からも使用が省かれている印象を受けます。

これはフランス全体にも言えることなのですが、プラスチック製のビニール、過剰包装の二つは見かける機会がほとんどなくなりました。魚屋などで買った商品をビニール袋に入れられるとはあっても、多くの人が捨てずに再利用していたり、次回の来店で「同じビニール袋に入れて」とお客さんから差し出す光景がよく見られます。

自身の得意分野を活かした出展者もフリーマーケットには多いです。例えば1920年代のヴィンテージ・ボタンを“指輪”にリメイクしたり、ほつれてしまった洋服に刺繍を施して“アップサイクル・ファッション”として販売したり。古いとはいえクリエイティブなセンスが光っていて、最近では生まれ変わった中古品の姿を見る機会が本当に増えました。

リユース、リサイクル、アップサイクルの動きは、何年も前からフランスで始まっていました。しかし最近のヴィンテージ人気が功を奏したのか、対象アイテムもよりクリエイティブに、より多種多様に変化しています。ただ新規購入でも中古マーケットでも言えるのは、包装のほぼ全てがプラスチックフリーであるということ。

売るモノだけが古いのではなく、陳列も包装も古き良き時代に戻っている、というのがフランス・パリにおける特徴でした。

 

 

▼関連性のある記事

チャリティーと切り離せない英国のサーキュラー・エコノミー

利益は100%寄付~動物保護施設が運営するリサイクルショップ~

このライターの記事

Top