サンドイッチはアメリカを代表する定番の食べ物で、パンの種類から具材まで様々な組み合わせがあります。日本でサンドイッチと言うと食パンのサンドが思い浮かびますが、アメリカでは、細長いパンに具材がたっぷり詰まった、サブマリン型のサンドイッチが主流となっています。
「Subway」をはじめ、アメリカまたはニューヨークで展開している、アメリカンスタイルのサンドイッチの代表的なレストランチェーンとその特徴を紹介します。
アメリカで定番となっている具がいっぱいでボリューム満点のサブマリン型サンドイッチは、潜水艦の形をしていることから名付けられ、通称サブ(Sub)と呼ばれています。アメリカ北東部のイタリア系アメリカ人コミュニティが発祥で、イタリアンデリなど昔ながらのローカル店で販売されて来ましたが、現在では、そんなイタリアンデリをフランチャイズ化したチェーン店がアメリカ全土に広がり、どこでも気軽に食べられるようになっています。
Subway
アメリカを代表するサンドイッチのレストランチェーンと言えば、マクドナルドやスターバックスよりも多い約2万店にのぼる、全米一の店舗数を誇る「Subway」です。世界でも、マクドナルドに次ぐ店舗数があります。「Subway」は、1965年にコネチカット州で誕生したブランドで、長く創業者による経営で成長を続けてきましたが、2015年をピークに店舗数は減少に転じています。2023年からは、「Subway」と同業のサンドイッチ大手、「Arby's」や「Jimmy John's」など様々なブランドを所有する、「Roark Capital」というプライベートエクイティの傘下となっています。
「Subway」はFootlongと呼ばれる細長い巨大なサンドイッチと、好きなパンと具材を選ぶことができるカスタマイゼーションで知られています。長い歴史の中、これまでは大幅なメニュー変更はあまりありませんでしたが、ここ数年大きな変更が加えられています。
近年、レストランチェーンでは、アプリやオンラインで注文するお客さんが増えています。そこでアプリやオンラインで簡単に注文したいという人のために、具材を一つ一つ選択するカスタマイゼーションではなく、メニューの名前や番号だけで簡単に注文することができる「Subway Series」というメニューが登場しました。アプリでは、注文金額に応じてポイントが貯まり、貯まるとオーダーで利用できます。
また、スイーツメニューなどで他社とコラボをし、Footlong の大きなサンドイッチの特徴に合わせて、クッキーや、「Cinnabon」のチュロス、「Auntie Anne's」のプレッツェルなど、Sidekicksと呼ばれるスイーツや付け合わせを遊び心がある細長い形で提供するメニューも登場しています。
「Subway」のメニューの中心となっているのは、ハムや野菜を中心にしたコールドサンドイッチで、これまで通り、店舗では店員さんと話しながら具材を指定しカスタマイゼーションして自分好みのサンドイッチを注文している人も多いです。パンは、5種類の中から選び、サイズは、Footlongかその半分サイズかを選択します。
「Subway」では、基本的にはその場で調理は行わず、他よりリーズナブルな値段設定となっています。これまでハムやチーズは、カットされているものを使っていましたが、昨年からハムのスライサーが各店舗に導入され、フレッシュなハムが提供されるようになっています。ミートボールやグリルドチキンなどのホットサンドイッチは、これまで通り調理済みのものを温めて提供しています。
Jersey Mike's
「Jersey Mike's」は、現在もCEOを続けているオーナーが10代の時にアルバイトをしていたニュージャージー州の海沿いジャージーショアにあったサンドイッチ屋さんを、1975年に購入し、その後、大きく成長させているブランドです。
現在急拡大中で、全米中に3,000店舗近くのお店を展開していて、今年からは初の国外進出となるカナダでも展開をはじめています。カスタマイズが可能でコールドサンドイッチが中心ですが、注文を受けてからハムやチーズをカットしてくれます。パンの種類とサイズを選択しますが、パンのサイズは、「Subway」より若干大きくなっています。
またフィラデルフィア発祥の名物サンドイッチ、薄切りの細切れ牛肉をタマネギやマッシュルームなどその他の具材と炒め、チーズを絡めて挟んだチーズステーキも人気です。注文が入ってからお肉を焼き、パンも具材も熱々の出来立てを提供してくれます。通常メニューに加え、期間限定の特別メニューもあり、パストラミなどが登場します。アプリでは、ポイントを貯めたり、自分好みのカスタマイズを記憶し次の注文時にすぐオーダーできる便利な機能もついています。
急成長中のサンドイッチチェーン店で、「Subway」を意識しながらも、少しプレミアム感とアットホームな雰囲気を持たせたレストランチェーンとなっています。
Potbelly
「Potbelly」は、アンティーク屋さんが転身し、1977年に創業したシカゴのサンドイッチ屋さんが起源で、1996年に創業者が引き継ぎ、その後拡大を続けており、現在では、イリノイ州を中心に中西部、ワシントンDC周辺、テキサスなど全米に400店舗以上展開しています。
非上場が多いサンドイッチのチェーン店としては珍しく、2013年からNASDAQに上場しています。アプリでは、クーポンの提供や、ポイントを貯めて商品と交換できるなどリピートしたくなる工夫がされています。
「Potbelly」は、Potbellyストーブという、キャストアイロン(鋳鉄)のストーブから名付けられたお店で、熱をゆっくりと伝えて素材の旨味を引き出す、温かみのあるサンドイッチを提供するお店として人気があります。
現在キャストアイロンのPotbellyストーブを実際に使って調理はされていませんが、お店の象徴としてストーブが店内に飾られています。調理には、Potbellyストーブに変わる調理器具が使われており、注文が入ると肉やチーズなどの具材をパンにのせ、加熱する調理器具にのせられます。
調理器具はベルトコンベアーのようになっており、乗せられたパンは、じっくりと時間をかけて流れていき、器具から出てくると、次のスタッフが受け取り、野菜などの残りの具材を詰めて調味料を加え、サンドイッチを完成させます。じわりと加熱するひと手間により、パンが香ばしくなり、仕上がりの味のレベルが上がります。
また、「Potbelly」では、スープやシェイク、スムージーなど他のサンドイッチチェーンでは、扱っていないメニューが色々ある他、サラダやスープ、マカロニチーズなどとサンドイッチをセットで注文することができるセットメニューもあります。店舗は、温かみがあるアンティーク風な雰囲気で、サンドイッチだけでなく、バランスよく食事が楽しめる工夫がされているのも人気の秘訣です。
Lenwich
「Lenwich」は、ニューヨークのみで展開している、マンハッタン内に14店舗あるローカルなサンドイッチのチェーン店です。お店は、オフィス街近くの立地が多く、典型的なニューヨークのデリ風の作りのお店で、お昼時には、オフィスワーカーたちがたくさんやって来て賑わっています。
サンドイッチだけでなく、サラダ、ラップ、ベーグル、オムレツ、オートミールなど朝食までカバーする様々なメニューがあります。サンドイッチもニューヨークのデリスタイルで、パン、チーズ、具材など数多くの種類の中からカスタマイズして好きなサンドイッチを注文することもできますが、カスタマイズなしでメニューの名前と番号で注文することもできます。
定番のハムとチーズのコールドサンドイッチの他、ビーフ、チキン、フィッシュ、野菜など様々な選択肢があります。ニューヨークのユダヤ系デリでの定番メニュー、パストラミなどもあります。パストラミサンドイッチは、有名な「Katz's Delicatessen」などユダヤ系のデリではお肉のみが大量に入った、ライ麦の食パンサンドになりますが、こちらのお店では、オリジナルメニューで、細長いパンに、お肉とコールスローが入る絶妙な組み合わせとなっていて、バランスよく食べやすい一品になっています。
「Lenwich」 は、韓国からアメリカにやって来た移民の創業者により1989年に誕生したレストランチェーンで、アメリカでは、ニューヨークのみですが、韓国にも進出しています。
Pret a Manger
「Pret a Manger」は、イギリスで1983年に創業したサンドイッチブランドで、2018年からは「Panera Bread」や「Krispy Kreme」なども所有するドイツのコングロマリット、「JAB Holding Company」の傘下に入っています。現在では、イギリスを中心に、アメリカ、フランス、香港など世界各地に700店舗近く展開していて、ニューヨークにも20店舗以上あり、存在感のあるお店となっています。
今まで紹介したサンドイッチ店と大きく異なるのは、注文型のサンドイッチではなく、作り置きのサンドイッチであること、パンはバゲットや食パン、クロワッサンがあり、具材には、例えば、スモークサーモンやモッツァレラチーズ、ペスト、バジルなどを使用したヨーロッパ風のサンドイッチであることです。
朝食もカバーしていて、スープ、サラダ、ラップ、キッシュ、クッキー、マフィンなどサンドイッチ以外にも色々な選択肢が用意されています。店内には商品棚があり、お客さんは棚から欲しい商品を取り、カウンターに持って行きお会計をします。
冷たいサンドイッチは冷蔵の棚に、温かいサンドイッチは保温の棚に並んでいます。購入方法は、コンビニのように手軽ですが、サンドイッチ店らしく、店内には快適なテーブル席があるので、購入した商品を店内でゆっくりと食べることもできます。
通常のサンドイッチ店では、サンドイッチをオーダーする際、細かい注文を聞かれ、出来上がるまで待ち時間がありますが、このお店では、待ち時間なくすぐ欲しい商品が手に入るため、忙しい人々が多い大都市のオフィス街にお店が多いです。ニューヨークでは、オフィスで働く人々と旅行者が多いエリアにお店が集中しています。
毎日フレッシュで、高いクオリティのサンドイッチを提供することをモットーとしているこだわりのサンドイッチ店だけあり、パッケージも工夫の凝らされたものになっています。
サンドイッチの中央を巻いている白い厚紙は、サンドイッチの商品説明の表紙となっているだけでなく、持ちやすさも追及されたものになっています。通常、商品を開けると、紙ははがれてゴミになりますが、この商品は、商品を開けても袋と紙がしっかりとくっついたままです。サンドイッチを食べる時に、袋を開いた後、再び白い厚紙の部分を合わせて、その部分を持ちながら食べることができるようになっています。
小さな工夫ですが、食べる時の持ちやすさ、食べやすさは、他のお店では見られないものです。手も汚れず、サンドイッチの型崩れもなく、とてもスマートに食べられます。簡単テイクアウトのお店ですが、小さな工夫の積み重ねでお客さんの満足度を高めている人気店だと思います。
アメリカでは、ハンバーガーやホットドッグなど様々なファーストフードがありますが、よりヘルシーな選択肢として人気があるのが野菜を多くとることができるサンドイッチです。サンドイッチの大手レストランチェーンは、店舗数が多く、大都市から田舎まで幅広いエリアをカバーしていて、全米どこに行っても手軽に食べることができます。
ただし、最近では、ニューヨークをはじめ大都市やその周辺では競争が激しく、従来のファーストフードに加え、サラダボウルや、薄いトルティーヤやピタなどを用いたラップサンドなどヘルシーな選択肢の専門店も増え、同業のプレミアム感を出したローカルのサンドイッチのファーストカジュアル店も色々登場しています。そんな流れに対応し、大手レストランチェーン店でもサンドイッチの種類を増やしたり、朝食に対応したり、サラダボウルやラップサンドを扱うなどメニューの多様化が進められて来ています。
また、デジタル化に対応し、オンラインやアプリで注文しやすくしたり、メンバー制やポイント制などの囲い込み戦略も充実してきています。
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