野良猫天国であるモロッコのマラケシュから、ドイツのベルリンに引っ越して気がついたことは、野良や外飼いの猫が全くいないということです。ベルリンの街を歩いていて見かけるのは、犬。それも人間の子供よりもよく躾けられているのではないかと思うくらい、お行儀の良い犬ばかり。ベルリンでは犬の権利が大きく認められていて、公共交通機関、カフェ、レストランなど、ほぼどこにでも同伴することができます。
猫は人気がないのかと思いきや、ドイツで最も好まれているペットは猫らしく、約1400万匹もの猫が飼われています。しかし、ほとんどが内猫のため、外では見かけません。
さて、動物愛護先進国ドイツでは、ペットショップで動物を購入することは一般的ではありません。例えば、猫が欲しいと思えば、まず検討されるのはティアハイムです。
ティアハイムとは?
ティアハイムとは、寄付を資本として、私的に運営されている動物保護施設のこと。ドイツ語で「動物の家」という意味です。各都市にありますが、ベルリン郊外にヨーロッパで一番大きなティアハイムがあると聞いて、見学してきました。
ベルリン中心部にある我が家から電車を乗り継ぎ、1時間。ベルリンというより別の街に来たような気がするほど、外国人など一人も見かけない田舎町で下車し、さらにそこから徒歩20分。
敷地面積は16ヘクタール。サッカーグラウンドが22面入る広大な敷地には、猫棟、犬棟、小動物小屋、鶏小屋などの他、豚、ヤギ、羊、ガチョウ、鶏、爬虫類、猿などが保護されていて、年間の受け入れ頭数は1万頭にのぼります。ここに保護されている動物のほとんどは、飼い主の都合(引っ越し、アレルギー、長期旅行、性格の不一致など)により持ち込まれた場合がほとんどで、費用の大部分は寄付で賄われています。
猫棟に行ってみた
敷地が広すぎて、全てをまわる時間がなかったので、主に猫棟を見てみました。公開可能な猫たちはガラス張りの部屋で飼われていて、廊下を歩く来場者が観察できるようになっています。
また、それぞれの個室には室内パートと屋外パートがついていて、中にはおもちゃ、隠れ家、キャットタワーなどが置かれ、猫たちが遊んだり、隠れたりできます。社交的な猫には相部屋が、孤独を好む猫には個室が割り振られており、人前に出る準備ができていない猫や子猫は非公開です。
見学可能なところにいる猫たちは非常に毛並みが良く、充実している感じで、外から呼びかけると人懐っこく寄ってくる子も多く、不幸な雰囲気が全くないのが印象的でした。
それぞれの個室の前には猫の紹介文が貼られており、名前、生年月日、性別のほか、猫の来歴、性質、どんな飼い主が向いている、理想的なのかが欠点も含めて書かれています。
難しそうな猫だけれど、わがままな子を求める人には最高かもしれません。
迎え入れるには
廊下を歩き、紹介文を読み、気になる猫がいた場合、スタッフにお願いして猫の個室に入れてもらい、しばらく遊ぶことができます。引き取りたい猫が決まったら、スタッフとの面接を経て書類審査を受け、それまでにかかった予防接種代などの費用(猫の場合は60~100ユーロ)を支払い、連れて帰ります。さらに約4週間後には電話または家庭訪問があり、そこで正式な譲渡が決定されるのです。
ちなみに、検討項目は次の通り。
*最初の猫ですか?それとも猫を飼った経験がありますか?
*家族全員が猫を迎えることに賛成していますか?
*子供が欲しがったとしても大人が責任を持たなくてはなりません。
*給餌、トイレの掃除、世話などできますか?
*猫は家庭内を自由に走り回れますか?
*フルタイムで仕事をしている場合、多頭飼いをお勧めします。
*猫は20年近く生きるかもしれません。20年間世話ができますか?
*日常の費用、医療費などの特別な出費はまかなえますか?
*休暇旅行に行く場合の猫の世話は誰がしますか?
*家族全員、猫アレルギーがないかどうか、確認してください。
*先住の動物はいますか?彼らは予防接種を受けていますか?
*賃貸住宅の場合、家主の同意はありますか?
*バルコニーに、猫のためのネットは設置されていますか?
*シェルターから動物を引き取ったことはありますか?
*シェルターに動物を引き取ってもらったことはありますか?
動物の「パトロン」になる方法も
興味深い取り組みとして、動物の「パトロン」になるというシステムがあります。事情で引き取ることはできないけれど、特定の子の面倒を見たいという場合は、1ヶ月30ユーロから「パトロン」になることができるのです。
もちろん、定期的に会いに行き、遊ぶこともできる上に、その動物の名付け親になることができます。特定の動物との繋がりを持てることは、寄付をする人にとって、より充実感や喜びを感じられる素晴らしい試みだと思います。
ティアハイムで最も印象的だったのは、猫たちが悠々と幸せそうに過ごしている様子でした。清潔で明るく、豊かな雰囲気の中、猫たちはとても優雅に美しく見えました。「不幸な、かわいそうな猫」ではなく「魅力的な、幸せな猫」たち。9割以上の猫たちがここを卒業していく、というのも納得できる雰囲気でした。
https://tierschutz-berlin.de/
Tierschutzverein für Berlin
Hausvaterweg 39, 13057 Berlin
▼パケトラおすすめの関連記事
愛犬を守りたい——「ペット大国」アメリカ発、天然素材の防虫ブランド「ワンダーサイド」
顧客の体験までデザインすることで成長を続ける「BORIS & HORTON」
このライターの記事
-
2022.05.20
良い加減だから長続き。ベルリンのゴミ事情
-
2020.04.21
【特集】世界の今。新型コロナウイルスが変えた私たちの生活(15)——「ドイツ・ベルリン」の今
-
2020.03.18
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の影響——ドイツの備蓄リストは?若者による買い物代行も
-
2020.02.25
ドイツの動物保護施設「ティアハイム」とは?9割以上の保護猫が卒業できる仕組みづくり
-
2020.01.23
クリスマスが終わったら、ツリーはどうなる?伝統と環境対策は両立できるのか
-
2019.12.24
ついにオリンピックイヤーを迎える日本。おもてなしの精神は、モロッコの「リヤド」から学べる