Adobe社が主催しているDieline Awardsは2007年の設立以来、世界最大のパッケージデザインコンテストといわれています。このイベントでは、ブランドオーナー、インフルエンサー、消費者、マーケティング担当者、代理店、社内クリエイティブ、グラフィックデザイナー、写真家、学生、愛好家などが一堂に会し、1年間の最高のパッケージングを選出します。
2022年の5月に発表されたDielineAwards2022は、1,700のエントリーの中から世界27ヵ国の171の作品がAwardに選ばれました。今回はその中から代表的な作品を紹介します。
Best of show Plastic Free Innovation of the Year
今年のBest of showに選ばれたのは パーソナルケアブランドBITE社の社内デザインチームでした。サブスクリプション方式で販売される植物ベースでプラスチックを含まないデオドラントリフィール(詰め替え)パッケージは、堆肥化可能で、消費者はアルミの最終容器に入れ換えて利用します。
鏡面仕上げで宇宙船のようなアルミの容器は、センターにBITEのロゴマーク、その下に象徴的に「Becauseit'stheEarth」という文章が刻印されています。BITEのデオドラントは性別に関しても中立的で、2つのリフィルと本体を含むBITEデオドラントスターターパックと、3種類の香りの追加のリフィルは、BiteToothpasteBits.comから入手できます。また、このパッケージは今回で4年目となるPlastic Free Innovation of the Yearにも輝きました。
This year's rebranding
2022年のリブランド賞は、クリエイティブエージェンシーのHere Design社が獲得しました。2019年に発売されたラム酒「Two Drifters」は、以前はクラシックなクラフト蒸留所を思わせる商品でしたが、オーナーはラム酒の持つ“情熱と楽しさ”に応えられていないと感じていました。
ブランド名の「Two Drifters」はオードリーヘップバーンの「ティファニーで朝食を」の「ムーンリバー」の曲から名付けられています。２人の漂流者をシンボライズしているのがラベルに描かれた2つのヨットの帆です。Here Design社は、「Two Drifters」がカーボンネガティブで、市場導入以来大気から16.724トンのカーボンを除去したことをボトルに表示しアピールしました。
デザインコンセプトのインスピレーションは「Two Drifters」に固有の3つの要素から生まれました。3つの要素はラム酒の楽しさと活気、ブランドの持続可能性の証明、そして創業地の英国デボンへの思いです。パッケージは、100％堆肥化可能なシール、95％サトウキビ繊維に印刷されたラベル、天然コルクを使用したFSC(森林認証)木製キャップ、以前の構造より230g軽いガラスを使用した美しい英国製ボトルなど、多くの持続可能な機能強化を誇るパッケージングが実現しました。
Best Use of Label
スペインのベルモット「Turmeon」は中世に誕生した白ワインをベースに香草やスパイスを加えたフレーバーワインです。デザイナーはハート型の象徴的なデザインを採用することにしました。その一方で、過度にデザインを単純化することを避け、中世に誕生したという「Turmeon」の歴史に裏付けられたデザインを加味した演出をしました。
ラベルに使われている粘着紙は、この美しいラベルの色と装飾を強化し、湿気や氷からラベルを保護できる素材を使いプレミアムイメージを実現しました。
DESIGNALYTICS DESIGN EFFECTIVENESS AWARD
数あるパッケージコンテストの中でもDieline Awardsのユニークな賞がDESIGNALYTICS DESIGN EFFECTIVENESS AWARDです。多くのコンテストの評価が審査員の主観的な評価が中心であるのに対し、この賞では客観的な売り上げ実績と定量的な市場調査によって賞を決定します。2022の受賞者は、冷凍菓子ブランド「GoodPop」を再設計したボルダーを拠点とするエージェンシーInteract社でした。
Designalyticsは毎年何千ものパッケージデザインを評価して、デザインを変化させることによって、売り上げにどの程度影響するかを予測するシステムです。「GoodPop」はデザイン再設計後の1年間の売上高は、前年度比40％増となりました。残念ながら、このシステムは米国市場にのみ適用可能ですが、日本でも同じようなシステムが遠からず運用されるものと考えます。
Best brand identity
どんな製品でも瞬時に識別されるブランドアイデンティティシステムを作成することは、ビールやワインのカテゴリで作業する場合、デザイナーにとって簡単ではありません。色々なデザイン要素を組み合わせて最も効果的なデザインを組み立てますが、その過程で、過去の有名デザインに似たデザインが出現することも多々あります。
今年の受賞者であるCasual business社は、さまざまなボトル、缶、ボックスにわたって、明るい色と素晴らしいイラストで新しいワインブランドのブランドアイデンティティシステムを形成しました。
ワインを堅苦しい存在から、華やかさや儀式なしで純粋に楽しむ飲料として位置づけたのです。商品名「Bowl grabber」にはカスタム書体を使い、エネルギッシュな色と楽しいイラストを組み合わせ、息苦しいプレミアムワインのデザインに反抗するエキサイティングなブランドを作成しました。発売以来、「Bowl grabber」はすでに英国市場で最も急速に成長しているワインの1つになっています。商品アイテムもロゼと赤を加え、パッケージも缶やBIB(バッグインボックス)に幅を拡げています。
The best sustainability
The best sustainabilityはカスタマイズ可能で詰め替え可能な化粧品パッケージングプラットフォームを開発し、廃棄物を最小限に抑えたデザインエージェンシーのConcreteおよび美容ブランドMOBの社内パッケージングチームに贈られました。各製品は50％のリサイクルPETを使用しており、将来的には100％を目標にしています。さらに二次包装は、竹から作られたコンパクトなクラムシェルと再利用された段ボール箱で構成されています。
The best health, beauty and personal care
健康と美容の分野では、Pear Fisher社が子供向けのバス用品として取り組んだ入浴剤Love oceanが高い評価を得ました。ボトルは100％リサイクルされたHDPE(高密度ポリエチレン)で作られ、消費者は再利用可能な製品ポーチで詰め替え品を購入できます。再利用可能な製品ポーチはクリーニングと再利用のためにLove Oceanに送り返すことができます。廃棄された場合もボトルは100％リサイクル可能なプラスチックでできており、英国全土でリサイクルできます。さらにLove Oceanはプラスチックバンクと提携して、Love Oceanのボトルが販売されるたびに1kgに相当する海洋プラスチックの除去に資金を提供しています。
Pear Fisher社は海洋保護の重要性を強調することを目的とした、遊び心のある新しいパッケージデザインシステムを企画しました。2人の母親であるGabiJenningsによって設立されたLove Oceanは、すべての家族のバスタイムのルーチンになるように設計されました。テールはハートを彷彿とさせ、海への愛情につながっています。また、海のしぶきにインスパイアされたオフホワイトとオーシャンブルーのカラーパレットを背景にしています。ホエールテールのシンボルは、持続可能な生活を送ることについて、親と子の対話を促進します。
Best of Beverage
飲料部門で選ばれたのは以前パケトラの記事でも取り上げた、シャンパンメーカーRuinartの“セカンドスキン”です。
100％リサイクル可能なエコデザインのケーシングのパッケージは革新的で、ボトルの形を連想させる洗練されたフォルムは、業界に刺激をあたえました。セカンドスキンはシャンパンボトルを物理的な圧力や太陽光線からボトルを守ると同時に短時間のワインクーラーの利用も可能で、ギフトボックスとしても重宝します。
Studio of the Year
Dieline Awards 2022で最も多くの受賞に輝いたエージェンシーに贈られるStudio of the Yearには、Auge Designが輝きました。Auge Designは2018にBest of Showを受賞したお馴染みの会社です。Dieline Awards 2022では4つの受賞に輝いています。
Auge Designのデザインは戦略からスタートします。ポップコーンは昔からある庶民的なお菓子ですが、Auge Designは斬新なパッケージでポップコーンのステータスを一段上げました。
この革新的なポップコーン用の紙管は、ストライプとポップカーネルからなる大胆なパターンで飾られ個性的なまとまったブランディング・システムに仕上がっています。
Auge Designは新しいロゴ、マーク、タイポグラフィーのエコシステムを定義した後、新しいピクトグラムともうひとつの視覚資産であるストライプの両方を採用したパターンを開発しました。これらのビジュアルアセットを用いて、ポップコーンの小売用バッグが作成されました。また特別なギフトパッケージのために、まったく新しいパッケージサポートをデザインしています。
この紙管の特徴は、フィッティングシステムと各モジュールのデザインベースのおかげで必要な数の紙管を作成できることです。
Auge Designは、80を超える製品と4つの異なる範囲にまたがるブランド全体のデザインを見直し、ブランドロゴを前面と側面中央に配置しブランドを強調しました。パッケージは色彩によって分類でき、全体のデザインシステムとしてもまとまっているようです。
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