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食べられるパッケージはお好きですか?

海藻が世界を救う、ゴミを出さないパッケージ

マンガのようなアイデア「食べられるパッケージ」は実現するのでしょうか。ロンドンのスタートアップ企業Notpla社が開発したのが「Ooho」です。
「Ooho」はそのまま食べることができ、100%生分解性で捨てても4~6週間で自然に分解されます。

Oohoはフランス北部で養殖されている海藻から作られています。乾燥させた海藻を粉状にして、同社独自の方法で粘着性の液体に変化させ、これを乾燥させるとプラスチックに似た物質に変化します。中にソースなどの調味料や飲み物を入れることができます。

マラソン大会などでは、従来の紙コップに代わり、ゴミの出ない「Ooho」による水の補給が好評のようです。また嚥下障害(えんげしょうがい)をお持ちの方が水分補給をする場合、飲み込むスピードが遅いためむせることがないなどの利点があります。

Norplantハインツ業務用ケチャップ小袋@https://designwanted.com/notpla-seaweed/

NakedPak

イスラエルを拠点としたデザイナーNakama Nicotraの開発したNakedPak は藻類から生成された寒天で作られた可溶性バイオプラスチックで、透明無味のシートあるいは立体成形があります。

開発者のNicotraは廃棄物ゼロの食べられる食品パッケージとして、ラザニア、スープ、スパゲッティ、カレー、アイスクリーム用容器などを試作しました。
各料理には準備に必要なすべてのスパイスとフレーバーが含まれており、一人前の食品設計になっているので、全て食べれば最終的に廃棄されるものは何ありません。

NakedPak は食品包装というより、食品の一部という位置付けかもしれません。
一般的にパッケージは内容物の保護を担っていますが、「食べられるパッケージ」は違います。そもそもパッケージをそのまま食べるため、不衛生なのではないかという心配もありますが、NakedPakは調理過程で熱湯の中に入れることで、そのような心配を回避しています(ただしアイスクリームは水洗いで対応します)。

貧困からの脱出も!EvowareのEdible Packaging

環境問題というと欧州の取り組みが先行しているようですが、アジアでもユニークな動きが出てきています。Evowareはインドネシアのスタートアップ企業で、プラスチック廃棄物を抑制するために食べられるパッケージを開発しました。

プラスチック廃棄物によるインド洋の深刻な海洋汚染を憂慮し、このアイデアを生み出したそうです。そして原材料に選んだのはNotpla社と同様「海藻」でした。このパッケージはお湯に触れると溶けてなくなります。

同社のEdible Packagingはプラスチック廃棄物増加の主な原因である食品包装用プラスチックの代用として砂糖やコーヒーの袋、インスタント食品の調味料袋、ハンバーガーの包装、ストロー、シャンプーなどに活用されています。

Evowareは無味無臭でお湯に溶けるので、食品の味を邪魔することはありません。
色や形、ロゴをプリントしたり、味をつけたりすることも可能なので、コップなどにあえてフルーツ味をつけ、硬めのグミのような食感にし、飲んだ後のコップも食べられるようにすることも可能です。
また、Evowareはイスラム教の戒律によって食べることが許されたハラルフードなので、インドネシア人口の過半数を占めるイスラム教徒にとっても好都合です。

 インドネシアの海藻農家は、子供たちがきちんと教育を受けられないほど貧困化していましたが、このパッケージが開発されたことで、新たな産業ができ、収入や雇用が生み出されたことが国際的にも高く評価されています。Evowareではこの他にも竹でできたストローや食器、お米とタピオカから製造したストロー、再生可能な天然素材(キャッサバ芋の木またはコーンスターチ)と植物油誘導体から製造されたショッピングバッグなども扱っています。

Loliware

Loliware社は2015年、アメリカ・ニューヨークで2人のイノベーターによって共同創設されました。その頃、使い捨てのプラスチックストレーが使用禁止されたことから、海藻ベースのストローが市場に台頭しました。生分解可能で食用にもなることから、カップなどの食器、フィルム、パルプなどの製造にも取り組んでいます。

Loliware社は海藻をペレットにし、それをストローに変える 独自製造方法を採用しています。2018年に紙ストローを導入したイギリスのマクドナルドでは、「プラスチックのストローに戻せ」という署名が3万件以上も集まりました。「紙ストローでジュースを飲むとふやけて気持ちが悪い」「シェイクを飲んだらストローが溶けてしまった」といった、紙ストローへの不満が原因のようです。

Wiki foods

Wiki foods社は果物のようなパッケージを開発しました。

この会社は ニューハンプシャー州のオーガニック乳製品の供給者である Stonyfieldと組んで、典型的なプラスチック製のヨーグルト容器に取って代わるヨーグルト入りの「ボール」を作りました。これらのボールは、ブドウの皮またはリンゴに似た果物の皮から作られ、ヨーグルトまたはアイスクリームのどちらかを包んでいます。
果物や野菜で作られた薄い皮は水洗いができます。しかし、消費者の心配を回避するために、当初はサトウキビのセルロースから作られた生分解性のパッケージに入れられて販売されました。

MEAL BAG, 2020

ドイツ・ベルリン芸術大学の修士論文の一環として、プロダクトデザイナーのAmelie Grafは、コーンフラワーとセルロースから、食べられるミールバッグを開発しました。スパゲッティ、豆類、スパイス、乾燥野菜をミールバッグに詰めて調理することができます。

ミールバッグは気密性があり、ある程度の湿度に耐えます。お湯では溶けますが、コーンフラワーはソースの増粘剤としても利用でき、使用後は堆肥化されて数日以内に分解されます。

edible meal bag@https://ameliegraf.de/

NovamontのMater-Bi

イタリアのベンチャーである、Novamont社はデンプン、セルロース、植物油、およびその組み合わせから製造した包装資材をMater-Biのブランドで販売しています。ハーバード大学教授の David Edwards 博士によって作成された WikiCell パッケージは、薄い膜のように機能し、ヨーグルトやムースなどの柔らかい食品を包むことができます。

果物や野菜から作られ、果物や野菜と同じように洗えるように設計されています。Mater-Biは生分解性と堆肥化可能で再生可能な原材料の含有量が多いのが特徴です。Novamont社のバイオポリマーの用途は、包装、使い捨て食器、農業、化粧品など複数の産業に広がっています。2012年のロンドンオリンピックでは使われる全ての生分解性食器を生産しました。

食品ラップにもバイオプラスチック

わが国の2020年の食品ラップ販売額は2月から前年プラスに転じ、3、4月は2ケタ増となりました。新型コロナウイルス感染拡大により、生活必需品であるラップのまとめ買いが起こり、生産が需要に追い付かず、一時品薄になる状況となりました。
在宅時間が増えた2020年は、家庭での調理や衛生意識の高まりにより一般家庭のポリ袋・ラップ類の購入額が前年比8.3%も増加しており、食品ラップにも対応が求められています。

SCOBY

ポーランドで開発された100%プラスチックフリーの食べられる食品ラップScobyは、ポーランドのエコ専門家たちが「MakeGrowLab」というチームを結成し開発した、余剰野菜から開発されたラップです。使用後は100%有機肥料となり再利用することもできるほか、食べることも可能。賞味期限はなんと2年だそうです。

もとはデザイン学生だったRoza Januszさんが大学の卒業制作として提案したのが始まり。当初は紅茶キノコ(紅茶や緑茶、酵母とバクテリアからできる発酵飲料)に砂糖と他の有機物質を加えるなど、比較的簡単な化学反応で作るものでしたが、現在では地元農業で余った野菜を使って作られています。

 環境に優しいSCOBYですが、ラップとしての機能性も十分。従来のプラスチック製ラップと比較すると、SCOBYは柔軟性、耐性や耐水性に優れ、酸素をしっかりと遮断できるため食べ物を新鮮な状態のままに保つことができるそうです。
バイオの改革とも呼べるこの製品はさまざまな海外メディアでも紹介され、世界中から注目を集めています。

Bee Eco Wrap

プラスチックを使わない地球に優しいオーガニック・フードラップ。

天然の抗菌性と保存性を備え、食品の鮮度と美味しさをより長持ちさせます。化学物質を一切使わず持続可能な方法で採集したミツロウとコールドプレス製法のホホバオイル、そして木の樹脂を独自のブレンドで製造しています。

 

ここまで、主として海外の例を取り上げてきましたが.ここで日本の事例も整理したいと思います。

Aco wrap

繰り返し洗って使え最後は土に還る食品用エコラップ。日本の暮らしに馴染むように和食器に綺麗に合う形・サイズで展開しています。
原材料はフェアトレードのオーガニックコットンに岐阜県のみつろう、USDA認証オーガニックホホバオイル、天然樹脂(植物由来)をコーティングしています。色も全て自然由来であるため、食品との相性にも優れています。
「プラスチックごみゼロ」を宣言した京都の亀岡市にて、1枚1枚丁寧に製造されています。原材料には環境に負担の少ないものを選び、パッケージも紙製、プラスチックフリーで製造しています。

edish

総合商社の丸紅は 2020 年より食品廃材を原料とし、何度でも再生可能な循環型食器「edish」の実証実験を行っています。これまでほとんど利用されていなかった食品廃棄物を独自の技術で食器に加工して、食器として使用した後に生ごみと共に堆肥化し土に戻すことで、野菜や花を栽培し、再び調理や飲食の場に戻すダブルアップサイクルを通じた循環型社会の実現を目指しています。

クレール

クレールは寒天メーカー伊那食品工業が作った、食べられるエコフィルムです。溶けても無味無臭のため、料理の風味に影響がありません。熱水に溶けますがヒートシールができます。使用後に、コンポストなど土中や自然環境の中に置くことで分解します。水分の移行を防ぎ水分の多い食材もまとめることができます。

 

食べられるパッケージの今後

世界中でプラスチック代替の動きが進められています。食べられるパッケージはその一つの解答ですが、そこにはまだパッケージを食べるという心理的な障壁が存在します。この心理的な障壁をいかに取り去ることができるのかがこれからの課題です。そのためにはNakedPackのように、中身の「食品と一体化した食べられる包装」が導入プロセスになるかもしれません。

 

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